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夏樹静子「蒸発」 ミステリーで描く女性の今 【あの名作その時代シリーズ】

11/11(月) 18:00配信 有料

西日本新聞

女は最後の愛を守るため夫と子どもを捨て、慣れ親しんだ場所を離れた

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は07年12月23日付のものです。

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 一九七〇年早春、東京・渋谷のコインロッカーから嬰児(えいじ)の死体が発見された。同様の事件が相次ぎ、遺棄された子どもはコインロッカーべービーと呼ばれるようになる。渋谷の事件のすぐ後に、女性誌「an・an」が創刊された。続いて「non-no」もスタート。ベトナム戦争に反対するデモに、女性団体が交じり始め、秋に渋谷で第一回ウーマンリブ大会が開催された。ピンクのヘルメットをかぶった中ピ連(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)のメンバーがフェミニズムの“あだ花”のように、ブラウン管を彩ったのが七二年である。

 こうした時代の空気を満身に帯びて、七二年、夏樹静子の初期代表作「蒸発」が出版された。複雑な謎解きの面白さに、現代女性のライフスタイルや心性の変化という社会性を加えた新たなミステリーの誕生だった。

 六月二十日、東京を飛び立ち札幌に向かったボーイング727から、一人の女性乗客が消えた。「密室」という推理小説の定番的手法をひねり、航行中の飛行機から乗客が消えるというマジックのような設定で始まった物語は、一転して消えた女=朝岡美那子の不倫相手、在京の新聞記者、冬木にフォーカスが移る。冬木はベトナム戦争を現地で取材していた五月十九日に銃撃に遭遇。一時行方不明となったが保護され、帰国後に美那子の失踪(しっそう)を知った。 本文:2,723文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:11/11(月) 18:00
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