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[記者手帳]「身だしなみ労働も業務」…シャネル労組判決、誤解と真実

11/11(月) 7:56配信

ハンギョレ新聞

訴訟の争点は「30分前出勤」事実関係の立証も メディアの誤報に「化粧が労働?」ネットユーザー悪質な書き込み  「無償労働」補償されない職員ら2次被害

 7日、シャネル労組の組合員たちが会社に対して起こした賃金請求訴訟で敗訴した事件が「身だしなみ労働」(会社が定めた製品を使用しガイドに従って外見を飾ること)認定をめぐる的外れな非難に拡大し、サービス業に従事する女性労働者たちに新たな傷を負わせています。

 シャネル化粧品販売員335人は2017年9月、書類上定められた勤務開始時間より30分早く出勤して会社に「無償労働」を提供してきたとし、2014年7月から3年2カ月間、1日30分ずつの追加勤務に対する手当ての支給を求め、会社を提訴しました。しかし裁判所は「職員たちがほとんどすべての勤務日に30分ずつ早期出勤したということを認めるのは困難」と、原告の請求を棄却しました。

 どうしてこのような判決が出たのでしょうか。訴訟の争点は「身だしなみ労働」を認めるか否かではなく、社員たちが実際に30分早く出勤していたのか、会社の主張どおり営業準備を1時間以内に終えられるかなどの事実関係の立証でした。裁判所と会社のいずれも「身だしなみ労働」が社員の業務であることを前提に裁判を進めたわけです。問題はシャネルが職員用の出退勤記録システムを備えていなかったことです。職員らは、デパート開店前の身だしなみ労働をはじめ、売場の清掃、在庫整理を終えなければなりませんでしたが、現実的にこれらすべてを1時間以内に終えることは不可能でした。このため正式勤務時間より30~40分早く出勤して仕事を始めるのが慣例となっていました。労組はこのような「タダ働き」を証明するため交通ICカードの記録を証拠として提出しましたが、複数のカードを使っていたり、バスや地下鉄、タクシーなどの複数の交通手段を利用していた場合、早期出勤のパターンを立証することは困難でした。売場内のCCTV(監視カメラ)映像からは職員らが午前9時に出勤する姿が確認されましたが、提訴後に撮影されたという理由で、証拠として認められませんでした。

 しかし、裁判所の判決趣旨を誤って解釈した一部のメディアが、「裁判所が『身だしなみ労働』は労働時間に当たらないと判断した」という誤った報道をしたことで、シャネル労組はネットユーザーから攻撃を受けています。「出勤のために化粧することまで手当として認めてほしいというのか」「化粧品の売り場で働く職員たちは使命感がない」という悪質な書き込みがその例です。

 シャネルの従業員たちは悔しさを訴えています。シャネル労組のキム・ソヨン委員長は「10年以上にわたり暗黙の『無償労働』を強要してきた会社に対して正当な対価を要求したのに、『シャネルの職員たちは恵まれていて化粧することまで労働と認めろと言っている』というようなコメントが付けられ、ショックが大きい」と訴えました。

 専門家らは、今回の非難の背景には女性労働者の業務を過小評価する社会的な雰囲気があると指摘しています。労務士のユ・ソンギュさん(労務法人チャムト)は「韓国社会は女性労働者にのみ化粧や身だしなみなどの労働を求める」とし、「シャネル労組に対する悪質なコメントは『何で化粧が労働なんだ』という男性中心の思え方が下敷きになっている」と指摘しました。
ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:11/11(月) 7:56
ハンギョレ新聞

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