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機内騒音の低減(1)軍用機でもノイズキャンセリング

11/12(火) 12:11配信

マイナビニュース

いきなり私事で恐縮だが、先日、ノイズキャンセリング・ヘッドホンを買った。といっても、「どこにいても音楽を楽しめるように」というのは後付けの理由。本来の目的は別のところにある。

【写真】航空自衛隊のC-2輸送機。旅客機と違って機内側の化粧パネルがないので、内側に張られた断熱材がむき出しになっている

エンジンの轟音で眠れない

筆者はもともと、自宅以外のところに行くと寝付きが悪くなる傾向があるが、飛行機の中は、とりわけ寝づらい部類に属する場所。その一因として、エンジンの騒音がある。

旅客機の場合、(一部の例外を除いて)騒音発生源となるエンジンは主翼についているものだから、主翼より後方の席のほうがうるさくて、前方の席のほうが静か。と言いたいところだが、単に比較の問題であって、前方座席にいてもエンジンの音は聞こえる(この話は後日に改めて書くつもり)。

さらに、海外に行くと時差ボケなどの要因も加わり、結果的に「機内ではなかなか熟睡できなくて、自宅に戻った後でドッとツケが回ってくる」ということになりやすい。そこで、せめて騒音の低減を図れないかということで、ノイズキャンセリング・ヘッドホンを買ってみたわけだ。

実際、同じように「機内で快適に過ごせるように」といって、ノイズキャンセリング・ヘッドホンを購入する方は結構いらっしゃる模様。それが証拠に、家電量販店の売場に行くと、「こんなに騒音低減効果があります」といって、飛行機の機内における騒音を再現している展示を見かけることがある。

どうやってノイズを消すのか?

さて。ノイズキャンセリング・ヘッドホンがどうやって騒音を低減しているのか。基本的な考え方は「外から入ってくる音とは逆位相の音を発生させて、両者がぶつかり合うことで音が消える」というものである。

といっても、すべての周波数帯に効果があるわけではないようだ。主として重低音に効くようだが、実際に買って試してみたら、ノートPCのキーボードの音を消してくれたのは面白かった。

前置きがえらく長くなってしまったが、「機内の騒音を解消したい」というニーズは、実は何も旅客機に乗る人だけのものではない。騒音対策などないに等しい軍用輸送機に乗って移動する軍人も、爆撃機に乗って任務を果たしに行く搭乗員も、みんな同じである。

ことに搭乗員の場合、飛行中でも互いにいろいろ会話しなければならない場面が多い。それが周囲の騒音によって邪魔されたら、任務の遂行を妨げることだってあり得る。ヘッドセットとマイクを組み合わせたインターコム(機内通話装置)というものがあるにはあるが、ノイズキャンセリング機能が働いてくれれば、そのほうが会話がしやすくなるので、なおよい。

そこで、ノイズキャンセリング機能を備えた軍用機というものが出てきている。つまり正副操縦士、爆撃手(爆撃機の場合)、ロードマスター(輸送機の場合)といった搭乗員同士が、円滑に会話できるようにという目的で導入しているわけだ。例えば、C-130輸送機やB-52爆撃機がそれで、どちらもインターコムにノイズキャンセリング機能を組み込んでいる。

実際に導入しているかどうかは確認できていないが、哨戒機でも多数の搭乗員が互いに会話しながら任務を遂行している。その様子は、海上自衛隊が公開した、例の「射撃管制レーダー照射事件」の時の動画を見れば確認できるだろう。

ここまで書いたところで、「はて、高出力のエンジンを搭載した戦闘機なら、騒音はもっとすごい。戦闘機のコックピットはどうなんだろう」と気になったのだが、生憎と飛んでいる戦闘機に乗ったことはないし、乗る機会もなさそうなので、こればかりは書くに書けないのであった。

ただ、ノイズキャンセリング・ヘッドホンが主として重低音に効くのであれば、F-35のように「腹に響く重低音の轟音」を響かせる戦闘機を外から見る場面で効果はあるかもしれない。誰か試してみます?

断熱材は騒音吸収にもなりそう

また、高高度を飛行する機体では、外部の気温が氷点下50度未満にまで下がる上に気圧が低いから、機内を与圧するとともに暖房を使わなければならない。

そして、機体構造は金属材、つまり熱の伝導性が良い場合が大半を占めるのだから、壁に断熱材を入れないと暖房の効果がなくなってしまう。

だから旅客機の場合、機体構造材の内側に断熱材を張り巡らせて、その内側に内装材を取り付ける構造となる


。すると結果として、その断熱材が騒音をいくらかは吸収してくれそうだ。

旅客機の場合、内装パネルを貼り付けてあるから、その向こう側の断熱材は見えない。しかし、自衛隊や米軍の航空基地が一般公開されると、大型輸送機を持ってきて機内を見せてくれることがよくある。

すると、軍用輸送機に内装材なんて気の利いたものは付いていないから、機体構造材の内側に貼り付けられた断熱材が丸見えになる。これがもっとも、身近に見られるケースではないだろうか。

といったところでネットの海をさまよっていたら、旭化成建材の「ネオマフォーム」という製品に行き着いた。もともと住宅用の断熱材だが、飛行機や新幹線でも使われているという。軽く、燃えにくく、燃えても有毒ガスを出さず、高い耐久性があること。というところで、住宅でも飛行機でも要求に類似性がありそうだ。素材は違うかもしれないけれど。


著者プロフィール


井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。

マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

井上孝司

最終更新:11/12(火) 12:11
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