【生前・遺品整理の作法を紹介します】#4
屋宜明彦さんの「家じまい」をテーマにしたセミナーには多くの高齢者が参加する。その多くが口にするのが、「自分のことは自分でやる」「子や孫に迷惑をかけたくない」なのだという。
そして、実際に誰にも相談することなく一人で話を進める人も少なくない。80代の男性から依頼を受けたときのこと。
「見積もりまで済んだ時点で、息子さんから、『自分は何も聞いていないからいったん話を止めてくれ!』とお怒りの電話がありました。これは親御さんの『息子には迷惑をかけたくない』という一心から生まれたことで、息子さんの『もっと相談をしてほしい』という思いとの食い違いではないでしょうか」
金銭面の事情もあるのかもしれないが、一方で親に早く片付けをしてほしいという子供側は「こんなものは要らない」「早く捨てろ」と命令口調で言ってしまう。
これでは逆効果で、かえってかたくなになってしまい、意地でも「捨てないぞ」となることも。
「こうなってしまえば、もはや家じまいどころではなく、親子関係がこじれてしまう。ただし、ちょっとしたことからその流れが変わることがあります」
それが年末年始で家族が集うタイミング。普段離れて暮らす家族が集まるこの時期に、片付けのことを話し合うのだ。
「この時も言い方に注意をしましょう。親子だけについつい言いたい放題になって、キツく当たってしまいがち。そこをグッとこらえて相手の自尊心を傷つけない態度で臨みましょう。例えば、『階段に荷物があると、コケないか心配だから片付けようか』『これ、最近使ってないよね。どうする? 少し減らそうか』など。減らすなら手伝うよと思いやりの一言を付け加えることも。年に1、2度しか帰ってこないのに、いきなり『片付けろ!』では親御さんもうっとうしくなるだけ。『今は寒いから暖かくなってから片付けようか、それまでに使うか使わないかを考えておいて』と時間を置くのも一手です」 屋宜さん自身も母親をなだめながら、軽トラック1台分ほどの片付けに成功したのだという。
「その時に思わぬものが見つかりました。私が子供のころの通信簿です。これをきっかけに『僕ってどんな子だった』『よくしゃべる子だったよ』と会話が弾む。同じように、母子手帳やへその緒が見つかることもあるでしょう。片付けを機に、緩みかけた家族のきずなが結びなおされるかもしれません」
屋宜さんによると2DKの部屋でも平均して45リットルのゴミ袋120個分くらいのモノがあるのだという。これは2トントラックで2台半ほどに相当する。間もなく年末年始がやってくる。
=つづく
(屋宜明彦/家じまいアドバイザー 構成=中森勇人)
最終更新:11/12(火) 9:26
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