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平成より「静か」な大嘗祭、深まらぬ憲法議論 30年前はハンストも

2019/11/12(火) 10:00配信

京都新聞

「政教分離」相次いだ違憲訴訟

 当時は仏教界の一部も「神道儀礼が国家行事として行われる」と懸念を表明し、真宗大谷派(本山・東本願寺)は公開学習会を開いた。平成の代替わりで大嘗祭反対声明をキリスト教系4大学の学長連名で公表したフェリス女学院大(横浜市)の学長宅では、銃弾が撃ち込まれる事件も発生。右翼団体が戦前と代替わり儀礼が変更された点を批判して政府関係者宅に街宣車で押しかけた。
 今回の代替わりにあたって「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」は、大嘗祭について皇室の「公的行為」ではないものの、新嘗祭など宮中祭祀でもない「公的性格・公的色彩を有するもの」とする資料を配布した。2019年度の宮内庁予算に計上された代替わりの費用は25億円。うち皇居・東御苑に建設する大嘗宮は前回の代替わり時から敷地面積を2割強縮小するが、人件費高騰や資材不足、熟練職人の減少も重なり、前回の約14億円から数億円ほど増える見込みだ。
 平成の代替わりの際に起こされた違憲訴訟は、いずれも原告敗訴だった。敗訴は「納税者の資格で訴える根拠はない」という「門前払い」。憲法論議に法廷は踏み込まなかった。1995年の大阪高裁判決は、原告の訴えを退けつつも、「大嘗祭が神道儀式としての性格を有することは明確。政教分離規定違反との疑いは否定できない」とした。

秋篠宮さま「宗教色の強いものを国費で賄うことが適当か」

 退位や新元号、平成の振り返りは関心を集めても、大嘗祭と宗教性の議論が高まらなかった平成最後の1年。揺さぶったのは皇族の突然の発言だった。
 秋篠宮さまは昨年11月30日の記者会見で、大嘗祭について「皇室の行事で、宗教色が強い。それを国費で賄うことが適当か。宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と指摘。「宗教行事と憲法との関係はどうなのか。私は今でも、内廷会計で行うべきだと思う」と続けられ、「残念ながら、話を聞く耳を持たなかった」と宮内庁長官を批判された。
 即位の礼や大嘗祭は、神話に由来する神器が用いられ、憲法の国民主権や政教分離原則に反するなどとして、市民団体「即位・大嘗祭違憲訴訟の会」が昨年12月、国に1人当たり1万円の損害賠償と、公金支出差し止めを求め東京地裁に提訴した。2月の第1回口頭弁論で、原告の一人は「内廷費も税金。内廷費なら政教分離の原則に抵触しないとはならない」と述べた。
 原告は11月現在、2次提訴を含め、京都など全国のキリスト教や仏教関係者ら約310人。公金差し止めの訴えは訴訟分離され、東京地裁は2月に却下。原告側弁護団は「集団訴訟なのに口頭弁論も開かず門前払いされた。今回の東京地裁のやりかたは、まれだ。30年前の代替わり違憲訴訟でも、数年の審議を経たのに」と憤る。国賠訴訟の方は第3回口頭弁論まで進んでいる。国側は30年前と同様、憲法論議を避けて「原告には訴える資格がない」として争っている。

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最終更新:2019/11/12(火) 12:35
京都新聞

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