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高樹のぶ子「銀河の雫」 恋愛を糧に自立する女たち 【あの名作その時代シリーズ】

11/13(水) 18:00配信 有料

西日本新聞

「頂上を極めれば下るしかないの。あなたと私の間だって、そうでしょ?」と鏡子は夫に語る。色鮮やかな愛の花は時とともに枯れてゆくしかないのか (写真は加工しています)

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は08年1月13日付のものです。

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 福岡県西部の糸島半島、夜の海岸に立った。闇に目が慣れてくると、繰り返し寄せる白い波頭が見えてきた。

 高樹のぶ子の長編小説「銀河の雫(しずく)」には、波についてこんな文章がある。

 〈あれはみな、恋の追いかけっこです。よく耳を澄ませば、誰かが誰かを求めて、ひたすら追いかけてくるのが分かります。追いかけて掴(つか)まえようと必死です。しかし掴まえたときは何もかも毀(こわ)れてとび散ってしまう〉

 糸島半島に住み、人の気持ちを読み当てる不思議な能力を持った老女のせりふだ。確かに波は追いかけっこしているように見えなくもない。

 この作品の主人公は、医師の緑川公憲、妻でバイオリニストの鏡子、妻を事故で亡くしたテレビ局局長の島一草、娘の万里子の四人。一草は昔からの知り合いの鏡子に思いを寄せている。公憲が通うアスレチッククラブの水泳インストラクター、万里子と公憲も次第にひかれ合っていく。そんな四つの「波」が織りなす甘く苦しい恋の物語である。

 「銀河の雫」は、西日本新聞や北海道新聞などでつくる新聞三社連合が高樹に執筆を依頼。一九九二年一月から九三年二月まで両紙などに掲載され、同年九月には単行本となった。

 新聞連載中の九二年春、高樹は舞台となる福岡や北海道へ取材に出かけた。 本文:2,532文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:11/13(水) 18:00
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