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日本の富裕層は2024年に516万人に、最もポピュラーな「不動産」を使った相続税対策とは? 

11/13(水) 12:00配信

MONEYzine

■日本は富裕層の数で世界3位

 株式会社ウェルスパートナー代表取締役の世古口です。プライベートバンカーとして顧客の資産運用や相続のサポートをしてきた経験を活かして、多くの方に知ってほしい相続についての基礎知識を解説したいと思います。

第3回の記事

 こちらの表は、クレディ・スイスのシンクタンクが2019年10月に発表した「Global wealth report 2019」のデータで、100万ドルの資産を持つ成人の数をまとめたランキングです(単位:千人)。2019年の1位は米国の1,861万4,000人、2位は中国の444万7,000人、3位は日本で302万5,000人となっています。日本の富裕層の数は、2024年に516万1,000人となり、2019年と比較すると71%増加する見込みです。

 までは一般的な資産規模の方々を対象に、相続争いやそれを回避するための対策を紹介してきました。今回から、富裕層の相続対策についてお話ししたいと思います。

■富裕層に必要な相続対策

 一般的な資産規模の場合、相続対策の主眼は「相続争いを避けるためにどうするか」という点でした。富裕層においても相続争いは大きな問題ですが、富裕層だからこそ必要なもうひとつの論点は「相続税」です。

 で紹介した相続争いと相続税のマトリックスをもう一度、確認しておきましょう。

 このマトリックスの右上、相続財産が基礎控除の3,000万円+(法定相続人×600万円)以上ある人は相続税の課税対象になります。たとえば、法定相続人が妻と子供2人なら4,200万円以上の相続財産があれば、相続税の課税対象になるということです。

 この家族構成の場合は、相続財産が1億円あれば、基礎控除の4,200万円を除いた5,800万円が課税対象になります。つまり財産が大きければ大きいほど相続税の対象になる資産が大きくなり、相続税も多額になるのです。富裕層ほど相続税の対策を考えなければならない理由がここにあります。

■日本の相続税率は高い

 それでは日本の相続税はどれくらいの水準なのか見ていきましょう。

 日本の相続税の最高税率は55%と非常に高く、最高税率に達する相続財産は6億円なので、ビジネスで成功した人や会社経営者であれば、該当する人は多いと思われます。国税庁が公表している相続税の速算表を見てみましょう。

 この表を見るとわかるように、相続税は所得税と同じく「累進課税」となっています。累進課税とは、財産や所得が多ければ多いほど税率が高くなるという課税制度です。つまり保有資産が多ければ多いほど税率が高くなります。

 たとえば、相続財産が3億円で配偶者がいない2次相続の場合の基礎控除等を考慮した相続税は9,100万円程度となり、相続財産に対する相続税の割合は30%程度になります。相続財産が10億円で配偶者がいない2次相続の場合の基礎控除等を考慮した相続税は4億5,000万円となり相続財産の45%となります。この30%と45%の差が累進課税です。

 保有財産がさらに大きくなれば限りなく55%に近づいていくということになり、富裕層であればあるほど相続税の負担は重くなります。

 この相続税を考えると、どんなお金持ちでも3代続けば財産がなくなるというのはあながち間違っていないと思います。そしてこの重い相続税率は上昇していく傾向にあります。相続税率は平成25年までは50%でしたが、平成25年から55%に上昇しています。相続税率の最高税率の推移をイラストで見てみましょう。

 過去に、最高税率75%の時代もありましたが、平成15年に50%に下がり、平成25年に55%と再び上昇しました。なぜ上昇したのでしょうか。私は日本という国の財政が関係していると考えています。国の借金は過去にないほど拡大しており、返済するためには税収を増やすしかありません。日本の個人金融資産1,800兆円のうち1,000兆円は60歳以上が保有していると言われており、相続税を上げることは効率的に税収を拡大する方法だと考えられます。

 以上の理由から私は相続税率は今後も上昇していくと考えています。

■なぜ不動産は相続税対策になるのか

 では、富裕層は何の対策もせず、相続税で財産を失っているのでしょうか。そんなことはありません。もちろん対策をしています。富裕層の相続税対策で最もポピュラーなのは不動産の所有です。

 なぜ不動産は相続税対策になるのでしょうか。相続が発生した場合、相続税を計算するために、各相続財産の相続税評価を算出します。この相続税評価は現金や株や債券などの有価証券は時価を採用しますが、不動産は取得価格や時価ではなく、固定資産税評価や路線価などの価格をもとに相続税評価を算出します。

 一般的に、時価よりもこの固定資産税評価や路線価の価格は低くなることがあります。これが不動産を所有することの相続税上のメリットです。たとえば、現金10億円の相続税評価は10億円ですが、自宅として不動産を所有していた場合は6億円になる可能性があるということです。

 また、この不動産を自分で使うのではなく、他人に賃貸することでさらに相続税評価は下がります。他人に貸し、使用が制限されることで保有する不動産が借地や借家という扱いとなり、自ら使用するより評価が低くなるという理屈です。つまり相続税評価は現金だと10億円、自宅だと6億円、賃貸不動産だと4.5億円となるイメージです。

 上の図では、相続税評価は4.5億円となっていますが、都内の好立地のマンションでは70%相続評価が下がり、買った不動産の価格が10億円でも相続税評価が3億円となる物件も多々あります。

 では、不動産を活用した場合の相続税のインパクトはどれくらいでしょうか。たとえば相続財産が10億円ですべて現預金、配偶者がいない2次相続の場合の基礎控除等を考慮した相続税は4億5,000万円です。この現預金をすべて相続税評価が時価の30%となる不動産にしたとすると、税評価は3億円となり相続税は9,100万円程度となります。

 つまり現預金が不動産になることで3億5,000万程度、相続税の課税負担が軽減されることになります。この不動産の活用が今のところ最も効果的な相続税対策と言えるでしょう。

■不動産投資では、借入を活用して手元資金を確保

 こうした不動産へ投資する場合、キャッシュで投資することもできますが、現預金を10億円保有していて、10億円の不動産に投資すると手元の資金がなくなってしまいます。手元資金がないと不動産の修繕費が必要になったときや急に資金が必要になったときに対応できず、流動性の観点から健全ではない状態と言えます。

 こうした事態を避けるには、銀行からの借入を活用します。銀行は借りる人の信用力と物件の収益性を担保に投資資金を貸し出します。10億円の投資物件であれば5億円の借入を起こし、5億円を頭金に投資します。このように借入を活用すれば、現預金5億円を残した状態で10億円の物件に投資することが可能です。

 現預金10億円で10億円の物件に投資しても、借入を活用して投資しても、相続税負担は理屈上、変わりません。ただ、いざというときの手元資金を残すことや資産が不動産だけに偏ってしまうこと、投資効率を考えると私は借入を活用した形で不動産に投資する方が有効だと考えています。

■まとめ

 富裕層の相続では、相続税対策がいかに大事かということを理解していただけたでしょうか。今回は、日本の相続税の概要と最もポピュラーな不動産を活用した相続税対策を説明しました。

 次回は不動産だけでなく、法人(資産管理会社)を活用した相続税対策について具体的な事例を交えて紹介したいと思います。

最終更新:11/13(水) 12:00
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