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ハイテク戦車でも乗員の技量が問われるのはなぜ? 陸自戦車射撃競技会に見るその理由

11/13(水) 18:03配信

乗りものニュース

北海道の大地を揺らした戦車射撃競技会

 砲の照準がコンピューター制御された戦車を用いて射撃競技会を実施するのには、どのような意味や目的があるのでしょうか。

【写真】50tを吊る「戦車のためのクルマ」 ほか「北部方面隊戦車射撃競技会」の様子

 2019年10月28日(月)から11月3日(日)にかけ、北海道札幌市や恵庭市などにまたがる日本最大級の演習場である「北海道大演習場」において、「陸上自衛隊北部方面隊戦車射撃競技会」が開催されました。

 この競技会は、北海道の防衛を担当する北部方面隊の戦車部隊が一堂に会し、射撃の腕を競い合うものです。4両1チームという小隊編成で、各部隊から合計約190両もの戦車が参加する、広大な演習場と戦車部隊を擁した北海道ならではのスケールといえ、まさに圧巻のひと言です。

 射撃競技会の全体的な流れは次の通りです。まず4両の戦車が会場に進入し、それから一度バックして、小隊内の2両が小さな丘の稜線へと上り、残りの2両はその下で待機します。次に稜線の2両が丘から砲塔だけを出し、約3km離れた標的に対して2発、射撃します。それから稜線を降りて下の2両と合流、4両が標的に対して並行に一列に並んでコースを進みつつ、砲塔を進行方向から90度右に向けて射撃します。さらにそこから車体を90度右に方向転換して横一列になり前進し、約3km以内の場所へランダムに出現する複数の静止・移動標的を捜索、小隊長の指揮の下で射撃していきます。

ハイテク戦車でも百発百中とはいかないワケ

 射撃競技会に参加したのは陸上自衛隊の90式戦車と10式戦車で、そのうち90式の部門が報道公開されました。

 1990(平成2)年に制式化された90式戦車は、北海道以外では静岡県御殿場市の駒門駐屯地に所在する機甲教導連隊と、茨城県の陸上自衛隊武器学校にしか配備されておらず、本州では見ることもまれな戦車ですが、陸上自衛隊の現役戦車全体では最も配備数の多い戦車でもあります。

 90式戦車は、自動装てん装置の採用により装てん手が不要となったため、乗員数が従来の4名から3名へと省人化されたほか、高度な射撃管制装置とコンピューターなどを搭載したことにより、移動しながらでも目標に正確に砲弾を叩き込める性能を有しています。その性能を活かして、例年8月に富士山のふもとで開催される「富士総合火力演習(総火演)」では毎回、見事な射撃を披露しています。しかし、今回取材した射撃競技会では、標的にわずかな差で命中しない、あるいは大きく標的を外してしまうという光景を筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は時折、目にしました。なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。

 まず、今回の射撃競技会は戦車と標的との距離が非常に離れており、当然、「距離」は射撃にとって大きな障害となります。距離があれば、戦車が射撃する位置と着弾地点とのあいだで、風向きや気温が当然、変わります。もちろん、90式戦車には風向きなどを計測する風向センサーが装備されていますが、これはあくまで搭載車両周辺の計測を行うもので、遠く離れた目標周辺の風向きなどは計測できません。そのため、遠距離の標的に対して射撃すること自体が非常に難しい作業なのです。

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最終更新:11/14(木) 17:44
乗りものニュース

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