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イノベーションの担当部署を“出島”にしてはいけない!「モノづくり×イノベーション×はたらく論」対談企画第1弾――東芝 最高デジタル責任者・島田太郎氏×『リクナビNEXT』編集長・藤井 薫

2019/11/14(木) 17:01配信

リクナビNEXTジャーナル

イノベーションを起こす上での、日本の風土の強み・弱みとは?

藤井薫編集長(以下、藤井):島田さんは20年近く外資系企業に在籍され、ドイツ企業であるシーメンスでは「インダストリー4.0(※)」にも取り組んでこられました。「イノベーションを生む」という観点において、外資系企業と比較した日本企業――特に大手企業の課題や特徴をどう捉えていらっしゃいますか。
※インダストリー4.0/和訳は「第4次産業革命」。ドイツ政府が主導する産官学共同の国家プロジェクト。製造業のオートメーション化、データ化・コンピュータ化を目指す概念
島田太郎氏(以下、島田):まず、日本ならではの強みと感じる部分でいうと、「他国で失われたものが日本には残っている」ということです。日本には「もったいないオバケ」が棲みついていますからね。アメリカやドイツの企業であれば合理主義のもとに廃棄されるような事業や技術が蓄積されている。
藤井:観阿弥・世阿弥の時代から650年の命脈を保ってきた「能」などが象徴的ですよね。日本は世界でも老舗企業の数が多く、創業1000年以上経つ企業の半数以上が日本にあると聞きます。
島田:古いものを棄てずに蓄積していくのは、資本効率でいえば悪とされますが、必ずしも悪いことではないと、私は最近感じています。イノベーションとは、ゼロから生み出すことに限らず、既存のものを組み合わせることで生まれることも多いですから。
藤井:イノベーションの概念を提唱したシュンペーターも、「新結合」がその本質を言っていますね。
島田:特に、「モノ」をネットでつなげる「IoT」の世界においては、日本で蓄積された技術が活かされます。アナログとデジタルを融合させるIoTの構造は非常に複雑であり、サイバーに強いグローバル企業でも手に負えない部分が多い。海外企業は自国・自社で開発するより、他国が作ったものを導入するほうが効率的と判断する可能性も高い。その点で、何でも自分たちで作ろうとする日本、しかもなかなかあきらめない日本は、強みを発揮するでしょう。だからIoTは日本なくしては実現しないと、個人的には思っています。
藤井:では、イノベーションを起こす上で、日本が弱み・課題と感じる部分はどこでしょうか。
島田:「基本概念を生み出し、それを標準化する」という点においては、日本は後れを取っていますよね。「概念」の重要性を、日本人はもっと認識したほうがいい。
世界的ベストセラーとなった『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏は、人間が進化を遂げてきた3つの重要な柱として「処理能力」「共通概念」「データ」を挙げています。古くは、処理能力=人口を増やし、神・貨幣・文字といった「共通概念」を持ち、共通概念が印刷・翻訳などでデータ化されて広がっていきました。そうした人類の進化の過程を踏まえ、ハラリ氏は「デジタル化」が人間の宿命だと語っています。
デジタルの世紀にあって、日本は処理能力=ロボットやAIなどの領域は得意、データの収集・解析・活用もまずまずのレベルです。しかし「概念」については、世界に共有するようなものを生み出せていません。
藤井:日本独自の進化を遂げながら、世界標準とはならなかったガラパゴス・ケータイも、象徴的ですね。以前MITメディアラボの石井裕教授には、蛇口というメタファーを使ってお話いただきました。モノ=蛇口は、入出力機能に過ぎない。注目すべきは、流水としての情報の循環系=エコシステム。蛇口からクラウドへ情報をアップすると、世界と、そして未来の人類と共有できると。
島田:「通信」の世界では、他国が共通概念を生み出し、標準化・プラットフォーム化を実現しました。そして、通信で起きた標準化を「製造業」に持ち込もうとしているのが、ドイツによるインダストリー4.0であるわけです。それに対し、もともと「製造業」に強みを持つ日本がどんな概念を打ち出していくか。より長期的な視点を持って考えなければならないと思います。
藤井:新たな流水の共通概念を生み出し、空想を現実化する。SF (Science Fiction)をFS(Feasibility Study)する。そんな「未来の製造業」を期待したいと思います。

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最終更新:2019/11/14(木) 17:01
リクナビNEXTジャーナル

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