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イノベーションの担当部署を“出島”にしてはいけない!「モノづくり×イノベーション×はたらく論」対談企画第1弾――東芝 最高デジタル責任者・島田太郎氏×『リクナビNEXT』編集長・藤井 薫

2019/11/14(木) 17:01配信

リクナビNEXTジャーナル

イノベーションは「特定専門部署」の取り組みにとどめるべきではない

藤井:イノベーションの手段の一つとして、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が注目を集め、多くの企業がDXを推進する部署を設けるなどして取り組んでいます。ところが、大手企業のDX推進担当者が、提案をしても経営陣あるいは現場が動かないことに悩み、転職を考えるケースが見られるのです。
島田さんはDX推進の責任者として東芝に入社されて以来、役員や事業部長などへの説明会をはじめ、100回以上ものプレゼンをされてきたそうですね。企業はどうすればDXを確実に推進できると思われますか。
島田:大手企業がイノベーションを起こそうというときには、よく「専門部署を作る」という発想になりがちですが、注意が必要なのは「出島」のようになってしまうこと。長崎の出島は江戸幕府による外国人流入防止策として築かれたものですが、それと同様に「異なるもの」を本丸から引き離した状態に陥りがちです。
私は、「デジタルは全員でやるもの」と考えています。専門部署の10人でやるより、東芝の全社員13万人でやったほうがいいに決まっています。そこで『みんなのDX』と称して、デジタル化の定義を共有するところから始めました。
会長とは、「東芝の企業価値を倍増させる」というビジョンを語り合っています。それは今の延長線上の考え方ではできません。それを従業員全員に腹落ちさせなければならない。
藤井:全員で腹を割らなければ、全員で腹をくくれない。専門家だけが集まってやるのではなく、いろいろな部署・ポジションの人が参加する。しかも「自らの存在目的」をトップダウンでなく、互いが当事者として語り合う。まさに『みんなのDX』こそダイバーシティ&インクルージョンですね。
島田:「こういうことは若い人にやらせればいい」というのも間違いです。シリコンバレーなどに行けば60代のスタートアップ起業家だっています。中高年層にイノベーションができないと思い込むのも、日本の悪いクセ。どんなところからでもイノベーションは生まれる。「innovation around the corner:角を曲がればイノベーションがある」です。
藤井:「全員参加」ということですが、どのように関わればいいのか、戸惑う人もいるのではないでしょうか。一個人はどんなことから始めていけばいいと思われますか。
島田:私の場合は、まず「概念」を伝え、「こういう概念をあなたの事業に当てはめるとどうなりますか」と投げかけています。これまでにいろいろなパターンの成功事例がありますから、「業種が違うからうちではできない」ではなく、どのパターンなら自分の仕事に当てはまるか、どのエッセンスなら取り入れられそうか、考えてほしい。もちろん事業形態によっては難しいこともありますが、「考えてみる」ことが重要です。
藤井:島田さんが東芝で取り組みを始められて1年が経ちますね。社内にはどんな変化が表れているのでしょうか。
島田:「DXをやりたい」という手がどんどん挙がってきています。
また、9月に『みんなのDX』で第2回目のピッチコンテスト(アイデアや技術を発表する場)を開催し、2月に行った第1回と合わせて100件を超えるアイデアが寄せられました。その品質も上がっていると感じます。
何より私がうれしかったのは、「うちの事業部ではできないのですが……」というアイデアも挙がってきたことです。自分の事業のことだけでなく、広い視野で考えられているということですからね。それらは一旦本部で預かり、該当する事業部門を検討することになりますが、そうした発想で考えられているのは、とてもいい兆しだと思っています。
東芝はもともと、自主的に研究開発に取り組んでいる人がたくさんいる風土。だから、きっかけを与えたことで、潜んでいたものがわっと表に出てきている感じですね。
私としては、生まれてきたアイデアを収益へ結びつけること、アイデアをベースに部門を横串でつないでいくこと、そしてイノベーターたちが活動しやすいように組織の仕組み上の問題を解決していくことにも力を入れていきます。
藤井:中途入社で入られた島田さんと東芝にいらっしゃった皆様との化学反応で、東芝は大きく変わろうとされているのですね。これは中途入社者の皆様にも、大きな勇気を与えてくれます。
島田:今後の5ヵ年計画で、「世界有数のサイバー・フィジカル・システム(CPS)テクノロジー企業を目指す」と宣言しています。サイバーとフィジカル(実世界)が融合した技術で社会課題を解決する――東芝が目指す姿です。近年、GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)が世界をリードしてきましたが、人々のリアルな生活があるかぎり、サイバーだけでは限界があります。実際、サイバー企業がハードを開発する動きも出てきていますね。ハードに関しては東芝が強い。我々はフィジカルから得られるデータを活用し、そこから生まれる新たな価値を提供しきたい。ハードを製造販売してきた従来とはまったく異なるイノベーションが起こせるのではないかと思っています。
藤井:モノと概念を繋げる×異質と異質を繋げる×みんなで創る。島田さんが仕掛ける東芝の未来、日本のものづくりの未来、はたらく未来が楽しみになりました。貴重なお話を有難うございました。
WRITING 青木典子 PHOTO 平山 諭

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最終更新:2019/11/14(木) 17:01
リクナビNEXTジャーナル

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