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『アバウト・ア・ボーイ』卓越した“子供の描き方”に影響を与えた『大人は判ってくれない』のエッセンスとは!?

11/14(木) 7:04配信

CINEMORE

『アメリカン・パイ』の米国人監督が描く英国コメディ

 ロンドンを舞台に、12歳の少年と38歳の中年男の、年の差を超えた固い友情を描いたヒューマン・コメディ映画『アバウト・ア・ボーイ』(02)。原作者、キャスト、それにスタッフにも英国勢がひしめき合う中、スタッフ・ロールで目にした監督名に思わずビックリ・・・公開当時、そんな経験をした人も多いのではないだろうか。

 なにしろ、本作の製作、監督、脚本を担うクリス&ポール・ワイツはニューヨーク生まれのアメリカ人。彼らは本国で大ヒットした、決してお上品とは言えないコメディ『アメリカン・パイ』(99)を世に送り出した兄弟コンビでもあるのだ。

 そんな兄弟監督が英国に立つ。この決断はきっと彼らにとっても大きな挑戦だったはずだ。実際、前作とはテイストの異なる脚本の仕上がりに関係者全員が驚いたという。それからキャスティングをめぐっては、当初、ウィル(ヒュー・グラントが演じた)の役をブラッド・ピットにオファーして断られたという経緯もあったようだが、結果的にグラントの演技があまりに完璧すぎたたこともあり、今となってはピットが演じる姿なんて想像もできない。

原作ではニルヴァーナが大きく取り上げられていた?

 とにもかくにも、本作『アバウト・ア・ボーイ』で目を引くのは、ワイツ兄弟による極めてクレバーな脚色ぶりである。そもそも本作で重要な位置を占める楽曲”Killing Me Softly”は原作には一回たりとも出てこないし、クライマックスの学内コンサートもワイツ兄弟が考案したオリジナルのアイディアだ。

 それに、タイトルの『アバウト・ア・ボーイ』とは、ニルヴァーナの楽曲”About a Girl”をもじったもの。原作ではこのニルヴァーナの存在が大きなフックとなっており、94年に起こった、カート・コバーンの自殺という衝撃的な事件がファンたちに与えた影響なども、色濃く投影された内容となっている。つまり本来なら93年、94年という時代性やカルチャーが強く香り立つ物語だったのである。

 もちろん、ニルヴァーナの要素を全て割愛したことを残念に思う読者もいるだろうが、それに比べると、いざ完成した映画は時代を超越した普遍的な物語となりえたのではないか。今見ても本作が、ファッション、カルチャー、演技、台詞のいずれにおいても全く色あせず、むしろ現代以上にフレッシュな感覚で観る者を魅了してやまないのは、こうした決断と、それにニルヴァーナではなく本作の音楽にバッドリー・ドローン・ボーイ(サントラ盤も大ヒットを記録)を起用したことなどが理由として挙げられるのだろう。

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最終更新:11/14(木) 7:04
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