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潜水艦の舵は「十」から「X」へ、どう進化? 45度傾けるのが効果的だけど難しい理由

11/15(金) 6:07配信

乗りものニュース

そうりゅう型潜水艦のX舵が優れているワケ

 2019年11月6日(水)、川崎重工業神戸工場において、そうりゅう型潜水艦の12番艦「とうりゅう」が進水しました。同艦は、そうりゅう型の最終艦として2021年3月に就役予定です。

【写真】退役した潜水艦「あきしお」の操舵手席

 特徴のひとつは、艦尾の「X」舵で、これはそうりゅう型潜水艦に共通した特徴のひとつでもあります。実はこれが画期的なもので、前型であるおやしお型潜水艦までは十字の形をしていました。

 X舵と十字舵、単純に取り付け角度が異なるだけにも見えますが、もちろん両者には大きな違いがあり、わざわざそうしているのにも大きなメリットがあるからです。「X」と「十」で何が違うのでしょうか。

 そもそも潜水艦の舵は、海中という3次元空間を動き回れるように作られたものです。水上の艦艇とは異なり、潜水艦の舵には前後左右だけでなく上下への動きも求められるのです。従来の「十字舵」の場合、上下に設けられた縦舵が左右の動き、左右の横舵が上下の動きを担い、舵に求められる機能としては、これで必要十分なものです。

 これを「X舵」にする理由のひとつは、ダメージコントロールの観点からです。十字舵の場合、2枚ひと組で上下と左右の動きを担っているため、1枚が壊れると単純に可動部分が2分の1に減少することになります。

 これがX舵の場合、4枚で上下左右の動きを制御しているので、仮に1枚が損傷してもほかの3枚で舵の動きを補え、可動部の減少は4分の1で済むことになります。実際、十字舵は、海底に鎮座する場合は下の舵、接舷する場合は左または右の舵が接触するリスクが高いのです。これがX舵ならば、舵の接触率そのものが低くなるため、損傷リスクも低減します。

潜水艦、X舵の方が十字舵よりも機動性も向上

 また十字舵では舵を動かすのに油圧シリンダーを上下用1本、左右用1本の計2本用いていました。これは上と下、左と右の舵で同じ動きをするからです。それに対し、X舵は4枚の舵が全て異なる動きをするため、油圧シリンダーも4本あります。

 4本あると構造が複雑になる欠点はありますが、仮に1本が駄目になっても、動かなくなるのは4分の1です。ところが十字舵で油圧シリンダーが1本駄目になった場合、上下もしくは左右のどちらかが動かなくなってしまいます。ダメージコントロールという観点から、どちらが優れているかは明らかです。

 X舵にするもうひとつの理由は、X舵の方が十字舵よりも、舵1枚当たりの面積を大きくすることができるからです。

 上述したように、舵は接舷時や海底へ鎮座した際にぶつけて破損する可能性があります。よって従来の十字舵の場合、船体からはみ出させることはできず、船体の縦横最大寸法までに収める必要がありますが、X舵の場合、同じく船体の縦横最大寸法に収めても、√2倍の大きさにすることができるというわけです。

 同じ艦体サイズであった場合、舵が大きくなると、それだけ機動性も高くなります。十字舵のおやしお型と比べると、X舵のそうりゅう型は水中旋回性で約30%向上し、浮上する際の角度も15%大きくなっています。要はおやしお型よりも小回りが利き、浮上する際は素早く行えるということです。

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最終更新:11/15(金) 21:50
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