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アップルはオーディオメーカーになっちまえ「HomePod」レビュー

11/16(土) 12:00配信

アスキー

「なんだ、いまさらHomePodかよ~」それは私も同じだった。この製品が発表されたのは、今から2年前の2017年。編集部から試してみる? ということで、豪華2台セットのHomePodが我が家にやってきたのだが、これが実に素晴らしい。

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 なんだ、いまさらHomePodかよ~。
 
 と、今あなたは思ったかも知れないが、それは私も同じだった。この製品が発表されたのは、今から2年前の2017年。以降、まったく国内での評判を聞かなかったので、きっとポシャったのだろう。アップルってたまにそういうこと、あるよね。
 
 なんて思っていたら、アップル「HomePod」、2019年8月日本国内で発売。それをいまごろ使ってみたというお話です。編集部から試してみる? ということで、豪華2台セットのHomePodが我が家にやってきたのだが、これが実に素晴らしい。
 
 スマートスピーカーとしての論評、セッティングの詳細はあちこちに上がっているので、まともな話はそっちで確認していただくとして、家に置いて約1ヵ月。ステレオペアにセットアップして、ただぼんやり使ってみた当座の結論は、これはスマートスピーカーじゃなくても良かったんじゃないの? ということ。最近はイヤホンもすごいし、アップルはいっそオーディオメーカーにでもなっちまえ。と、ここから先は、そんな乱暴な内容です。
 
iPod Hi-Fiの後継機種がHomePod
 スマートスピーカーでなければ何なのかと言えば、AirPlay 2に対応した「iPod Hi-Fi」の後継機種ではないか、と私は思っている。つまりSiriもApple Musicも要らんのだ。
 
 おっと、先を急ぎすぎた。その前に、いまどきの若い方はiPod Hi-Fiなんてご存知ないだろうから説明しておくと、2006年にアップルが発売したパワードスピーカーで、iPodの下に付いているコネクタをスピーカー天面に生えた剣山のような端子にグサッ、と刺して使う。現在のBluetoothスピーカーの先祖のようなもので、当時は同様のスピーカーを様々なオーディオブランドが販売していたのだ。
 
 そんな中でもiPod Hi-Fiは景気よく鳴る製品だったが、置く場所によって低域の特性がガラッと変わってしまうのが問題だった。底が平べったい上に広く、設置場所と面で接するため共振を誘いやすい。おかげで低域の要らぬ帯域が強調され、中音域を霞ませてしまうのだ。
 
 「アップルのテーブルって大理石かなんかで出来てるんじゃないの?」というのが当時の感想で、そのせいかどうかは知らないが、発売から2年もしないうちにフェードアウトしてしまった。アップルってたまにそういうこと、あるのだ。
 
 そのiPod Hi-Fiの弱点を、10年かけて潰してきたのがHomePodなのだと私は思っている。小型円筒形ワイヤレススピーカーとしては、BOSEも真っ青の完成度ではないだろうか。人の好みは色々あるだろうが、私はこのスピーカーの音がとても気に入っている。
 
買うなら2台、ステレオペアでぜひ
 HomePodの見所は、設置場所の特性を内蔵マイクで拾い、低域を自動でチューニングする機能にある。だから家具の天板が大理石でなくても大丈夫。高域側についても、Siriのためのマイクロフォンアレイを流用して設置場所の特性を解析し、円形に並んだ7つのツイーターで指向性を制御する、というような説明がされている。お前はPAスピーカーか。
 
 つまりアップルのエンジニアが理想とする音のバランスが、場所に依らず再現できる。言い換えると、バランスが悪いのをユーザーのせいにできない。これは家庭用スピーカーのパラダイムチェンジだ。確かにどこに置いても低域の印象は大きく変わらないし、スピーカーを持ち上げてくるっと回すと、音の出方にもグラデーションがかかっている。
 
 
中央に内蔵された6つのマイクロフォンが、「空間認識機能」で部屋の形状を認識し、壁や天井の反響なども考慮に入れた立体音響を実現する
 
 そんな仕掛けを言わずとも驚くのは、出るわ出るわのディープな低音だ。可聴限界の下限近いところまで、かなりの音圧感を伴ったまま伸びているというのに、音量を上げても歪むOlasonic気配がない。よほどパワーに余裕があるか、ダイナミックレンジの調整をしているかのどちらかだろう。うっかり夜中に音量が上がってしまうと殺人事件に発展しかねないので、集合住宅では取扱に注意を要する。
 
 一方、中音域は、何かこう、いまいちズバッと飛んでこないところが、iPod Hi-Fiの頃と変わらない。普段使っているの「IA-BT7」と比べると、Radikoの音声はくぐもった印象で聞き取りにくい。でもスピーカーの振動板と正対しないスピーカーは、大体そんなものだ。
 
 そして2台ペアで使った場合は、円筒形スピーカーらしい自然な音場感の魅力が勝る。1台では乏しい中音域の解像感も、その音場感が補ってくれる。たかがワイヤレススピーカーに3万円か、という世評もあるが、どうせ買うならステレオペアで買っていただきたい。合計7万円程度でこんな仕掛けのスピーカーを作れるのはアップルくらいだろうし。
 
 とはいえ、やっぱ7万円か……。正直言って、そこは考えどころかなと思う。コストパフォーマンスに疑問はないが、それだけの私費を投じるからには全面的に賛意を持って迎えたい。では、どこに賛意を持てないのか。
 
iOS機器がなくても使えるのがミソ
 HomePodの商品企画のミソは、Siriで操作するApple Musicのためのネットワークプレイヤーで、単体で機能すること。つまり、あくまでもスマートスピーカーなのだ。初期設定にはiPhoneやiPadがなくてはならないが、これは組み立て家具に使うドライバのようなもので、済んでしまえば用がない。
 
 ところが私はSiriもApple Musicも、ほとんど使わなかった。AirPlayスピーカーとしてiPhoneやiPadから接続すれば、なんだって聞ける。映像と音声をシンクしてくれるので、動画の音ズレも感じない。試した中でダメだったのは、GarageBandだけだった。
 
 要するに、Siriの音声コマンドがApple Music以外のサービスやアプリに効かないだけ。だからApple Musicのユーザー以外には意味のない製品だとする論評には異議がある。HomePodはワイヤレススピーカーとして、断然優秀なのだから。そしてiPodの周辺機器だったiPod Hi-Fiと同様、HomePodも相変わらずiPhoneやiPadのための周辺機器なのだと思う。
 
 だから存在意義に疑問を持ってしまうのが、Siriなのだ。
 
iPadから選曲した方が早いのでは
 もちろん音声コマンドが役立つ場面はある。調理中やオムツを替えている最中、運転中や手術中、そのほか何かの最中にあって両手が使えない人には、まさしく手助けになる。
 
 それにHomePodのSiriについては、感心したところもある。Siriを呼び出すと音量が下がると同時に、音量が下がってBGMと化した音楽全体に、ディレイやリバーブのような空間系のエフェクトがかかる。これで音楽を奥に引っ込ませ、Siriの合成音声を浮かび上がらせているのだ。この演出はニクい。
 
 ただ残念ながら、HomePodはAmazon EchoやGoogle Homeに比べて音声コマンドを拾う能力が低い。特にステレオペアで使う場合は、マイクが遠くなるので、余計に認識精度は落ちる。遠く離れたマイクではなく、手元のiPhoneに向かって喋れたらそれでいいはずだが、そういう仕組みにもなっていない。
 
 だから、まどろっこしいので、iPhoneやiPadのアプリで選曲してしまう。Siriを呼ばないなら、音楽ソースはApple Musicじゃなくてもいい。そして、この音源の著作権処理は果たしてどうなっているのかなあ、と心配になるほど色々聴けるYouTube Musicを、つい使ってしまうのだ。
 
 Apple Musicのソースが1bit/5.6MHzだったりするのなら話は別だが、音声コマンドで操作するネット直結再生端末であること、それが他の何を差し置いても重要である理由が、私には思い付かなかった。
 
スパイ疑惑払拭モードも欲しい
 Siriの必要を感じないもう一つの理由は、自分のお金を使って部屋にスパイを置こうとは誰も思わないことだ。過去のいくつかのニュースから、世間にはスマートスピーカーの盗聴を疑っている人がいる。これはアップルの製品に限った話ではないが、実際、マイクロフォンアレイを載せたスマートスピーカーは、物性として音響探知機に近い。
 
 たとえばAlexa向けにワシントン大学が「BreathJunior」という子守アプリを開発したそうだ。これはノイズの反射から赤ん坊の動きを検出し、呼吸状態を監視するというもの。HomePodも設置場所の特性からツイーターの出力を制御しているのなら、音の反射率や反射時間から、部屋の大きさ、形、どこに何が置かれてるのか程度はモデリングできるはずだろう。
 
 もちろんアップルがスパイを目的として、マイクを載せているはずはない。ならば、かかる疑念に対する潔白を証明するため、ネットに接続しなくても動作するモードがあってもいいのではないか。
 
 先代のiPod Hi-Fiにあって、今のHomePodにないもの。それはバッテリー駆動と外部入力端子だ。非ネット依存のバッテリー駆動モデルがあれば、車に積めるし、出先の宿泊施設でも使える。せっかくBluetoothチップを積んでいるのだから、ついでにオーディオストリームも受信するようにすれば、BOSEの「PORTABLE HOME SPEAKER」より1万円も安い高性能スピーカーの代表作として、こういう媒体でも専門家が広くアピールできる。
 
 しかし現実的には、アップルが自身のエコシステムから離れた製品を出すようにも思えない。それはもったいないので、いっそオーディオメーカーにでもなればいいのにと、そういう結論に至った次第です。ならないと思いますが。
 
 
文● 四本淑三 編集●飯島恵里子/ASCII

最終更新:11/16(土) 12:00
アスキー

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