陸上を始めて2年の若者が、世界選手権で決勝に進出した。種目は、世界の猛者たちがひしめく義足の短距離種目だ。自身の力を出し尽くした達成感、それでも先をゆく海外選手に対する脱帽。初めての世界選手権。それも決勝の舞台を、井谷俊介(SMBC日興証券)は思う存分、楽しんだ。
「世界選手権での目標は、最低でも入賞。あわよくばメダルです」
今年の7月下旬に開催されたジャパンパラ陸上の競技後、井谷は報道陣に対してこう語っていた。
それから約4ヶ月後。
アラブ首長国連邦のドバイで開催されたパラ陸上の世界選手権。世界大会初出場となった井谷は、個人種目で出場した100m(T64)、200m(同)で、いずれも決勝の舞台に立った。
アジア記録保持者、昨年のアジアパラ競技大会の覇者として、宣言通り“ファイナリスト”となったものの、結果は8位(100m)、7位(200m)。各種目「4位以内」に与えられる東京パラリンピック出場の「内定」を得ることは叶わなかった。それでも、レースを終えた彼の表情は晴れやかだった。
「今の自分のベストを出せたんじゃないかな、と。海外勢には及びませんでしたが、これが今の実力かなと思います。(有力選手で)欠場した選手もいましたが、短距離2種目でファイナルまでたどり着けたことは実力と言って良いと思います。この舞台で走れたことがすごく楽しかった。人生で一番楽しいんじゃないか、という経験ができました」
100m、200mともに、決勝で肩を並べたのは、世界の義足スプリンターの猛者たちだ。
200mでは、優勝したロナルド・ハートッグ(オランダ)や、ミハイル・セイティス(ギリシア)らが、コーナーを抜けた後から加速し、後続を置き去りにした。100mでは、両足義足のヨハネス・フロアース(ドイツ)が後半に爆発的なスピードを見せ、予選から世界記録(10秒54)をマーク。観客の度肝を抜いた。いずれも、井谷の1秒前後、前方をゆく。
そんなスプリンターたちと競う中で、井谷はレースの度に成長していた。それは200mの決勝後、冷静にレースを振り返る姿からうかがい知ることができた。
「今までは、無理やり加速しようとして、身体が力んでしまっていました。だから、脱力しながらも100%で走って、さらにワンランク上のギアに切り替えていくことを前日から意識していました。イメージ通りの走りができたように思います。ただ、海外勢の加速感は身を持って感じたので、その点がまだ自分の弱いところかな、と」
「海外選手を意識しすぎると、余計に力んでしまう。極力意識しないようにして、自分のレーンだけに集中していました」
最終更新:2019/11/16(土) 5:38
カンパラプレス






























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