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「ネットでバズって書籍化」したライターが、いまいち未来を楽観視できない理由

2019/11/16(土) 12:07配信

BuzzFeed Japan

本当に「思い込み」だったのか?

――そもそもこの事件のルポを書くことになったのはどういう経緯だったのでしょう。

直接のきっかけは、ある雑誌の編集部からの「事件が起きた金峰(みたけ)地区に夜這いの風習があったか調べてきてほしい」という依頼でした。容疑者・保見が事件の発端に戦中まで続いた「夜這い」があると話したという報道があり、その真偽を聞き込む取材です。

加えて、事件当時の物騒な報道も気になっていました。「容疑者は、過去に被害者に刃物で刺されたことがあった」とか「草刈り機を燃やされた」とか……。

一審判決では「近隣住民が自分のうわさや挑発行為、嫌がらせをしているという思い込みを持つようになった」とされていましたが、これが本当に「思い込み」だったのか少し疑問があったんです。

各種報道やネット上で見た情報が、現地に行って話を聞くと印象が違うことってあるんですよね。事件から3年以上経っていたからこそ聞けたことも多かったかもしれません。

――住民から世間話のように話される内容が「え、それ大丈夫なんですか?」ということも多くて背筋がぞわっとしました。「あの人、酒癖悪いからつい刺しちゃったんだよね」とか「浴室に放火されたことがある」とか、これまでも結構な事件が……。

そうですよね。私もだんだん驚かなくなってきましたが、お茶を飲みながら気楽な感じで話してくれます。ご近所さん同士でも、うわさが一番の話題だったのだろうと想像がつきました。

<金峰地区で取材をしながら私はいつも、彼らが私にしてくれる「うわさ話」の細かさ、情報量の多さに驚きを感じていた。それは同時に、もし自分が金峰地区に住めば、この勢いで自分のうわさ話が集落に広まるであろうことも、容易に想像させるものだった。(書籍『つけびの村』より)>

――でもそれって、狭いコミュニティではどこでもありえることですよね。「田舎の限界集落」だから特殊なわけではなく、ネット上でも身の回りでも。

会社のうわさ、業界のうわさ、SNS上のうわさ……「うわさが最大の娯楽」である場面って絶対あるじゃないですか。

誰しも自分の生活と地続きにあるように想像してもらえたこと、「他人事とは思えない」と感じてくれたことが、これだけ読んでもらえた理由のように思います。

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最終更新:2019/11/16(土) 12:12
BuzzFeed Japan

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