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「父よ、お願いだから運転を諦めて」認知症の父と向き合った孤軍奮闘記【前編】

2019/11/17(日) 12:00配信

婦人公論.jp

帰宅した父は、またすぐに車で出かけてしまった。病院に行きさえすれば、医師が何とかしてくれると信じていたのに──。失望が大きく、茫然とした。

◆「あなたは免許がないのにそこまで言う権利はない」

次の診察には私も同行し、医師に直接、父の説得を頼んだが、「ご本人の意志を尊重しないと」と言うばかり。私が繰り返し訴えると、医師はモンスター家族を見るような目つきになった。

その後、介護保険の認定調査の際、ケアマネジャーや役所の担当者に説得を頼むと、ここでも「権限がないので」の一点ばり。妹夫婦や親戚に再度、説得の協力を求めるも、「あなたは免許がないのにそこまで言う権利はないよ」「生きがいを奪ったらかえって病気が進行するのでは」と表面的なことばかり。必死になればなるほど私は孤立していった。

「人を轢いて命を奪ったら、取り返しがつかないんだよ」という悲鳴のような私の説得も、父には届かない。何も方法はないのか。困り果てネットで検索すると、警察の運転免許センターが相談にのってくれるという情報に辿り着いた。

すぐに電話して担当者に現状を話したところと、「こちらに来ていただければ説得します」と言う。力が抜けそうだった。そもそも嫌がる父を力ずくで免許センターに連れて行くことなどできようか。

「家に来てもらうことはできませんか?」「できません。免許更新の前に認知機能検査があるので、そこでひっかかるチャンスがありますね」。この時点で父の免許は、更新まで丸々2年。絶望を感じた。

前回の更新後、たった3ヵ月であのお通夜事件が起きたのだ。認知症は、進む時には一気に進む。75歳以上でも、更新したら3年もそのままとは長すぎる。

〈後編につづく〉

田中亜紀子

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最終更新:2019/11/18(月) 14:15
婦人公論.jp

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