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【連載小説 第11回】新堂冬樹『動物警察24時』ミニチュアシュナウザーの虐待疑惑!?

11/17(日) 16:00配信

本がすき。

いかなる理由があろうとも「動物虐待」など許さない!
そんな人の心がひとつの組織となった。
動物を身を張って守る、それがTAPーー東京アニマルポリスなのだ。

西宮翔は、苦悩の表情でソルティをみつめていた。
「先輩、ちょっといいですか?」
涼太が席を立ち、璃々を促した。
テーブルから十メートルほど移動したところで、涼太は立ち止まった。
「なによ?」
「今日の先輩、変ですよ」
「どこが変なのよ?」
「いつもならすぐにペットを保護するのに、どうして西宮翔に戻すんですか? まさか、ファンとかじゃないですよね?」
涼太が、疑わしそうな眼を向けてきた。
「馬鹿ね。そんなこと、あるわけないじゃない」
璃々は、鼻で笑った。
「だったら、どうして保護しないんです? 中富光江のときは物凄い剣幕で怒鳴りつけて、交番にまで連行したのに」
「それは、彼女の場合は動物にたいして愛情のかけらもなく、ストレス発散のために虐待し、しかも、そのことについての反省の念がなかったからよ」
「反省してないのは、彼も同じでしょ? あんなにガリガリに痩せるほど餌をあげてないのに、先輩の渡した栄養食も拒絶していたじゃないですか?」
「それはそうだけど、中富光江との違いは西宮翔には愛犬への愛情があるということよ。メタボ体形にしたくない、糖尿病にしたくない、かっこいいビジュアルでいさせたい……栄養失調にさせている言い訳にはならないけど、ソルティのことを考えていることだけはたしかよ。ただ、愛情の方向性が間違っているだけ。私達の役目は、闇雲に飼い主と愛犬を引き裂くことじゃないの。どんなに至らない人間でも、ワンコからしたら最愛のパートナーなんだから」
璃々は、西宮翔に視線を移した。
ソルティは膝の上でリラックスし、ときおり主人の顔を愛おしそうに見上げている。
「ろくに餌をあげない虐待男を、最愛のパートナーだと思いますかね?」
涼太が、呆れた顔で言った。
「人間から見たら、そうでしょう。でも、餌の時間にササミや鶏の胸肉を貰っているわけだし、ソルティからしたら西宮翔は餌を与えてくれる人よ。ただ、カロリーや糖質が不足しているだけの話で、それは栄養面から見たら問題でしょうけどソルティには関係ないの。散歩もするし愛情深く接しているし、ソルティは彼のことが大好きなはずよ。中富光江のときと違って私がすぐに保護しないのは、西宮翔のためじゃなくてソルティのためなの。低血糖症や栄養失調で命が危ないというのは人間サイドの判断で、いきなり引き離したらソルティが精神的に参ってしまうわ」
「なるほど。たしかに、言われてみたらそうかもしれませんね。悪意なく間違った知識で餌を上げているだけで、心からソルティをかわいがっているわけですから……そういうことですよね?」
涼太の問いかけに、璃々は頷いた。
「だから、普通の虐待と違って難しいのよ。なんとか、彼に気づかせないと……」
「もう、帰っていいかな?」

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最終更新:11/17(日) 16:00
本がすき。

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