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「言葉ができない選手は世界で戦えない」3年で8人プロ輩出、悲願の初V興國・内野智章監督の目線

11/17(日) 17:10配信

REAL SPORTS

久保建英と安部裕葵。二人の若き選手がスペインに旅立った。スペインでは乾貴士、柴崎岳など、2018 FIFAワールドカップで活躍した選手もプレーしており、日本人にとって手の届かないリーグではなくなりつつある。20歳前後でヨーロッパに移籍する選手が増える中、海外で活躍するためには、どのような要素が必要なのだろうか。2020年加入内定選手を含め3年で8人の高卒Jリーガーを輩出し、「興國から世界へ」をキーワードに、毎年スペイン遠征を実施するなど、世界を見据えた育成をしており、高校サッカー選手権大阪大会で悲願の初Vをかなえた興國高校サッカー部・内野智章監督に話を聞いた。


(本記事は、7月28日に『REAL SPORTS』で掲載された記事に一部、加筆・修正を行って掲載しています)

日本人の良さを持った、スペイン育ちの日本人は「最強」

――先日、スペインのビッグクラブの育成組織に所属する15歳の日本人選手が、興國高校の練習に参加したそうですね。その感想を内野監督がSNSで公開したところ、大きな反響がありました。

内野:パススピード、技術、ボールを奪う際の激しさ……。彼が普段プレーするスペインのビッグクラブと比べて、興國高校の1年生は「かなり差がある」と言っていました。その話を聞いて、点と点がつながったんですよね。
 コパ・アメリカを見ていても、日本代表にも良いシーンはありました。アジリティの部分では通用していたと思います。だけど、選手のコメントで「普段、日本でやっているサッカーとは、別のスポーツに感じた」というのを見たときに、この違いはなんなんだろうと思ったんです。

――コパ・アメリカを見ても、フィジカルコンタクトのスキルは、南米の選手は圧倒的に上手です。日本はサッカー文化的に接触プレーを嫌いますし、身体をぶつけるとすぐファウルになったり、相手チームから嫌がられたりします。

内野:南米は、スペインもそうですけど、ボールを持ってドリブルをするとガッツリ削りに来ますから。興國の選手がスペインに遠征に行くと「常に状況を認知して、早くボールを離さないと削られる」と言って、プレーが変わるほどです。まずそれが前提にあって、パスの受け手に時間を与えるために、パススピードを速くしなければいけない。
 ボールを受ける前に周囲を見て、身体の向きを作ってパスを受けないと、死角からタックルされて削られますから。そうしないと危ない環境だからこそ、選手たちのプレーもそうならざるを得ないんです。
 興國の選手たちには「パススピードを速く!」と常に言っていますが、口で言うだけでは限界があるので、いかにしてその環境を作るかに頭を悩ませています。

――ワンタッチ、ツータッチでボールを動かさないと、足ごと刈られるという状況だと、嫌でも周囲を見ますし、プレーも速くなります。その環境をどう作るか、ですね。

内野:興國の練習に参加してくれた、スペインのビッグクラブでプレーしている彼は、うちの1年生のBチームに入って、1年生のAチームと試合をしました。私は直接プレーを見ることができなかったのですが、コーチたちによると、Aチームの選手が彼を囲んでも、ボールさばきが上手くて取れないし、プレッシャーが甘ければドリブルで運ぶ。その判断が的確で、ファーストタッチの置きどころが良いので、ボールを取れなかったそうです。ボールテクニックもありながら、シンプルにワンタッチ、ツータッチでプレーしていたと。そして、技術がすごく高い。

――その彼が幼少期にテレビで特集された映像を見ると、自主練でひたすらドリブルやボールコントロールの練習をしていましたよね。年齢の低いうちにスペインの育成環境に入ると、身につけた技術に加えて判断力が育っていくものなのでしょうか?

内野:基礎となるボールテクニックがあるからこそ、スペインのトップレベルでやれるのではないかと思います。状況判断が良くて、シンプルにプレーできる選手はスペインにもいると思うんですよ。でもそれプラス、ボールテクニックを持っているから、生き残れているのかなと。

――日本の育成とスペインの育成のハイブリッドですね。

内野:久保選手がそうですよね。日本人の良さを持った、スペイン育ちの日本人。ある意味、最強だと思います。日本で小学校3年生まで育っているぶん、ボール扱いなどのテクニックも高いですし。それが10歳でスペインに渡ることによって、言語ができるようになり、日本代表の選手が「違うスポーツだった」と言う、海外サッカーの戦術面や激しさなど、日本サッカーとは違う部分を学んでいます。
 でも、根底にあるのは日本人の生真面目さや技術、俊敏性、協調性。そこにスペインのフットボールが上乗せされているので、最強だと思います。これは時代のめぐり合わせもあるので、言っても仕方のないことかもしれませんが、過去にたくさんいたボール扱いが上手くて、「天才」と呼ばれていたような選手が、早いうちにスペインに渡っていったら、久保選手のようになっていた可能性もあると思うんです。

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最終更新:11/17(日) 19:31
REAL SPORTS

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