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疲れにくい画面付き普通席 搭乗記・ANA 777国内線新仕様機(前編)

11/18(月) 23:31配信

Aviation Wire

 全席に新シートを採用した全日本空輸(ANA/NH)の国内線新仕様機の最初の機体(ボーイング777-200ER型機、登録記号JA715A)が11月16日に就航した。新仕様機は777-200が8機、787-8が11機で、777から順次改修を進めて2022年度上期までに導入。大型機の777-200は羽田-福岡線と伊丹線、札幌線、那覇線といった幹線に投入し、787-8は地方路線でも使用する。

【札幌行きANA国内線新仕様機の機内】

 11月30日までの運航スケジュールでは、羽田発福岡行きNH243便と福岡発羽田行きNH250便、羽田発伊丹行きNH27便、伊丹発羽田行きNH32便、羽田発札幌(新千歳)行きNH75便、札幌発羽田行きNH82便の1日6便に投入する。私は、就航初日の羽田発札幌行きNH75便の普通席と、札幌発羽田行きNH82便のプレミアムクラスに搭乗した。今回は初便就航式典がなかったため、比較的距離の長い羽田-札幌線を選んだ。

 777-200新仕様機の座席数は2クラス392席(現行は405席)でプレミアムクラス28席(同21席)と普通席364席(同384席)と、プレミアムが増えて普通席が減る構成だ。プレミアムに搭乗したNH82便は客単価が高い同クラスが満席だったため、この傾向が続けば増収に貢献するだろう。

 一方の普通席は、2017年9月12日に就航した国内線用エアバスA321neoから採用が始まったタッチパネル式個人用モニターを設置。電源コンセントと充電用USB端子も備えており、出張や旅行といった利用形態を問わず、乗客の利便性が向上している。今回の搭乗記前編では、普通席取り上げる。ANAとシートを共同開発したトヨタ紡織(3116)がPRする、骨盤を支えて疲れにくくするという効果は、実際に感じられるのだろうか。

 また、普通席の写真特集「骨盤支えて疲れにくい全席画面・電源付きシート」も、合わせてご覧いただきたい。

◆座り直さずに過ごせるシート

 普通席は従来と同じ3-4-3席の1列10席配列で、シートピッチやシート幅も踏襲したという。ANAの他機種では31-32インチが一般的で、777も非常口席など例外を除くとおおむねこのくらいのピッチになっているようだ。

 私が搭乗した就航初日のNH75便の36G席は中央4席の右側で、隣席はだれも居なかったため、隣の人との距離感は把握できない状況ではあった。このため、シートを取材するには動きやすいというメリットがあったが、周囲に人が多い時にどういう印象を受けるかは確認ができなかった。

 目玉となる個人用モニターは搭乗時はすべて消灯した状態で、乗客が自分で電源を入れる運用のようだ。モニター下の充電用USB端子は出発後、電源コンセントは離陸後の使用可能アナウンスから使えるようになる。

 シートの柄は、4月に就航した中距離国際線用のボーイング787-10型機や、8月就航の長距離国際線用777-300ER新仕様機のエコノミークラスと同様、色は同じでも3席または4席ごとの組み合わせが1ブロックごとに異なるデザインを採用しており、単調さが和らいだ印象だ。

 私は足もとにカメラバッグやビジネスバッグをしまうことが多いが、電源コンセントが足もとに付いたことで、バッグによっては収納が難しいかもしれない。この日は13インチのMacBook Proが入るビジネスバッグを足もとに置いたが、あまりスペースに余裕はない感じだった。

 着席してみると、確かに腰のあたりがホールドされるのと、座面が従来より低くなっていることで座りやすい。私は身長179センチ、やせ型なものの腹が出ているという体形だが、窮屈な印象はなかった。国内線であれば、最長でも2時間台のフライトなので妥当な居住空間だと思う。

 羽田から札幌はおおむね1時間30分強のフライトだが、座り心地が気になって座り直すようなこともなく過ごせた。座り直さないで済むシートは、疲れにくさにもつながっていると感じたフライトだった。

◆電源コンセントは前席下側

 今回の新シートは電源コンセントが付いたことで、街中では充電が難しい地方都市や、多くの場合充電不可能な取材現場でノートパソコンを使い続けても、行きないしは帰りに充電できる機会が増えることはうれしい。

 9月に搭乗した日本航空(JAL/JL、9201)のエアバスA350-900型機と、10月就航の787-8国内線仕様機では、電源コンセントを活用するには一工夫必要だったが、この普通席は個体差はある可能性があるものの、特に対策を講じなくても電源ケーブルを挿せばノートパソコンを充電できた。USB端子も問題なくiPhoneを充電できることを確認した。

 テーブルはガタつきもなく、ノートパソコンで仕事をする際にも特段支障はないだろう。JALのA350では普通席の電源コンセントがノートパソコンのモニターと干渉してしまい、私はL字型プラグをかませて対処しているが、そうした手間をかけることなく、ノートパソコンを充電しながら使える。

 電源コンセントの位置は従来主流だった自席の座面下の救命胴衣入れ周辺から、JALのA350にみられる前席背もたれや、アラスカ航空(ASA/AS)の737-900ERなどの前席下側シートポケット付近と変化がみられる。前席の方が電源ケーブルをはわす場所に気を遣わずに済む分、どこに設置してもシートポケットや足もとスペースといった、もともとある機能をある程度犠牲にする可能性がある点は悩ましいところだ。

 カップホルダーはクローバー型に変更され、紙コップが取り出しやすいようになっていた。しかし、私は左利きなので、そもそも右側に穴が開いていること自体が使いづらい。欧州の航空会社では左右に穴が開いているシートもあるが、左利きの人口比率を考えると、今後も左利きが使いやすいカップホルダーは期待しない方がいいし、左利きが使いやすいシートの登場自体を期待していない。

 また、シートポケット手前の小物入れが中が見えるようになっている。着陸後の機内アナウンスが流れ始めたら、忘れ物がないかを確認するといったフローを徹底すれば、スマートフォンなど収納したものの確認もれもなくなるだろう。もっとも、そういう確認行為自体を別のことに気を取られて忘れるから、機内に忘れものをする人が後を絶たないのだが……。

◆11.6インチ画面

 前述の通り、ANAでは2017年就航のA321neoから個人用モニターを搭載している。Wi-Fiによる機内インターネット接続サービスが無料提供される今、果たしてどの程度の乗客が利用するのかと思っていたが、地図やドラマ、子供向けコンテンツなどを利用している人が一定数おり、使う人は使うものなのだなと実感した。電源コンセントを使わない人からすると、私と真逆の感想を抱くのだろう。

 11.6インチというモニターサイズも、プレミアムエコノミーや中近距離用ビジネスクラスに匹敵する大きさだ。四捨五入すると12インチになるが、ANAの国際線用A320neoのビジネスクラスや、A321neoのプレミアムクラスの個人用モニターはこのサイズなので、これまでエコノミークラスで主流だった10インチモニターが小さく感じるほどだ。

 モニターに表示される地図は、自動再生ではコックピットを模した画面などが表示されるが、国際線のものと比べると乗客の手による選択の余地はあまりない印象だ。また、機体カメラの映像がない。A350の機内では、映画やテレビ番組と並び、カメラ映像を見ている人が思いのほか多く、今後の機体では搭載した方がいいのではと感じた。

 機内インターネット接続サービスを利用する場合、DNSサーバーをGoogleのもの(8.8.8.8など)を指定していたりすると、すぐにつながらない場合がある。このため、特にノートパソコンを使う場合は「ana-inflight-wifi.com」をブラウザー上で直打ちしたほうが確実だろう。

 これまで私は電源コンセントが使えることを念頭に、大手2社よりも運賃が安いスターフライヤー(SFJ/7G、9206)やスカイマーク(SKY/BC)を使って取材に出ることが多かった。しかし、仮にこの機材の運航便と運賃に大差がない場合、マイルがたまるANAを選択する可能性は高くなるだろう。逆にスターフライヤーやスカイマークは、ネット接続ができない。大手の新シート導入は、中堅航空会社が今後どのような活路を見いだすかにも影響を及ぼすと言っても過言ではない。

 ANAのこのシートが普及するにはある程度の時間を要するようだが、新しい普通席は“当たり”の機材と言えるだろう。爆睡して目的地まで過ごすならともかく、仕事をしたい人や明確な意志を持ってくつろぎたい人にはお勧めできるシートだ。

 記事本文下の写真は、新仕様機の機内を中心にANAの777-200ERでは新しいC-3POジェット(JA743A)、ANAの777-200初号機(JA8197)、ANAのA321neo初号機、JALのA350-900初号機といった比較になりそうな写真も掲載した。

 後編では、落ち着いた色調になった復路のプレミアムクラスを取り上げる。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:11/18(月) 23:41
Aviation Wire

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