ここから本文です

五つ子の“減胎手術”ですべての子を失った女性の悔恨

11/18(月) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

「最初、検診で三つ子だといわれ、戸惑いながらも、三つ子の育児はどんなふうになるんだろうって喜びが勝っていました。しかし、その後の検診で五つ子だと告げられたと同時に医者からは中絶の話を進められ、目の前は真っ暗になったのを今でも鮮明に覚えています」

 目を伏せながらこう話を切り出したのは、多胎妊娠を経験した30代後半のAさんだ。

 仲間由紀恵(40)や杏(33)など芸能人の双子ママも多く、双子を街中で見かける機会も多くなり、多胎は今や珍しいことではなくなった。それゆえ、生後11カ月の三つ子の次男を死なせたとして、傷害致死罪に問われた母親が懲役3年6カ月の実刑判決を受けたことなど、多胎妊娠・出産・育児がクローズアップされることも多くなったのではないだろうか。

 多胎は今や女性の身近な存在になりつつあるが、多胎のリスクを知っている人はどれほどいるだろうか。多胎は妊娠期からすでにリスクが高く、ハイリスク妊婦と言われ、厳重な管理下に置かれる。また無事に出産しても、虐待を受ける確率も単胎児より高いという数値が出ており、多胎は想像以上に母親を追い詰める。現にAさんも多胎妊娠によって肉体的、精神的に追い詰められた一人だ。

 多胎が増加した背景には、不妊治療があるといわれている。体外受精によって受精卵を子宮内に2個戻すことにより、2卵性の双子が増加することは広く知られているが、排卵誘発剤とタイミング療法・人工授精によって、多胎児が増加していることはあまり知られていない。

■不妊治療によって増加しつつある多胎児

 排卵誘発剤とは自然では1個しか排卵されない卵子を、薬剤によって多くの卵子を人工的に排卵させるものだ。体外受精は人工的に卵子を取り出し、体外で精子と受精させる。一方、人工授精やタイミング療法は排卵された卵子と精子が体内で受精することになるので、排卵される卵子が多ければ多いほど、より多くの受精卵ができることになる。そうなると、中には四つ子や五つ子、それ以上の子どもが体内に宿る可能性も十分にあり得るのだ。

 多胎妊娠は胎児の数が多くなればなるほど、母体へのリスクは高まり、子どもの安全も保障されない。医者も明確には提言しないが、中絶を暗に進めてくるのが一般的で、“産む”という選択肢が与えられないのが実情だ。

「私も排卵誘発剤とタイミング療法によって五つ子を妊娠しました。医者はそうするのが当たり前のように中絶を進めてきました。そのときに提案されたのが、お腹の中の子供の数を減らす“減胎手術”という選択肢でした」

 中絶となると母親への精神的・肉体的なストレスは計り知れない。さらに減胎手術の場合、どの子を残し、どの子を中絶するかという親にとっては惨い選択も求められることになり、その負担はより増すことになる。

「私も辛い選択でしたが、リスク回避から五つ子から三つ子にするために減胎手術を受けました。といいますか、当時は多胎のリスクも知りませんし、まさか自分にこのような問題が降りかかるなんて思ってもみません。医者はリスクばかり話すので、妊娠継続を考える余地なんてありませんでした。本当は全員産んであげたかった。葛藤しながらも、手術台へ上ったときの恐怖と子供への申し訳なさから、涙が止まりませんでした」

■手術台に上がった時、涙が止まらなかった

 Aさんの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。そして、Aさんは言葉を振り絞ってこう続けた。

「手術を受けた結果、すべての子供を失ってしまったのです。たった一人の子供でさえこの腕に抱くことはできなかった。当時、私にもっと不妊治療に関する知識があれば、結果は変わっていたのではないかと自責の念が消えることはありません」

 減胎手術は高度な技術が必要とされるがゆえ、技術力が伴わない医者が存在するのも事実だ。その結果、すべての子どもを無くすという最悪なケースも存在しているのだ。

 Aさんはこう言葉を続ける。

「不妊治療を否定するわけではありませんし、不妊治療を受けたほとんどの方が切望したお子さんを授かることができ、幸せになられています。一方で、不妊治療によって悲しい現実が引き起こされていることも事実です。

 不妊治療に関して詳しく知った今だからこそ言えることは、これから不妊治療に臨まれる方にこのようなケースも存在することを知っていただき、一歩下がった目で不妊治療を考え、治療に臨んでいただきたいと思います」

 結婚・出産の高齢化に伴い、子どもができなければすぐに不妊治療という流れが今の世の中のスタンダードになりつつあるが、不妊治療の“ 弊害”によって苦しむ女性たちがいることも忘れてはならない。

(取材・文/中西美穂)

最終更新:11/18(月) 10:58
日刊ゲンダイDIGITAL

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事