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平野遼「地底の宮殿」 命の原形を描きたい 【あの名作その時代シリーズ】

11/19(火) 18:00配信 有料

西日本新聞

彼には誰も目にすることができない「地底の宮殿」が見えていたに違いない

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は08年2月10日付のものです。

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 タダものではない。

 それが、もう二十年も前、最初に平野遼に会った時の印象だった。

 一九八七(昭和六十二)年秋、平野の西日本文化賞受賞が決まり、当時、北九州支社に勤務していた私はその喜びの声を取材するよう指示を受けた。

 《難解で奇怪な絵を描く画家》《独学で独自の画境を開いた人》-その程度の予備知識だけで、写真記者と小倉北区の彼の自宅を訪ねたのは、ある意味では若さゆえの大胆さからだったろう。

 あの時、彼のアトリエに入り、私の小市民的とでもいうべき感覚は根底からかく乱された。二十坪ほどの板張りの暗い画室の壁際に、無数の絵の具チューブの残骸(ざんがい)が堆積(たいせき)していた。まるで貝塚のように。そして絵の具の飛沫(ひまつ)だらけのイーゼル、壁、床。そこは、創作に没入している画家の厳粛でむき出しの“戦場”を感じさせた。

 そして、アトリエの壁の書架に並ぶ大量の蔵書にも目を見張った。ランボー詩集、西脇順三郎詩集、小林秀雄全集、道元全集…。なぜ、こんな小難しい本ばかりが並んでいるのか。正直、当惑した。 本文:2,721文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:11/19(火) 18:00
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