ここから本文です

【ライブレポート】藤川千愛、等身大の表現者

11/19(火) 21:10配信

BARKS

藤川千愛が11月16日、東京・新木場Studio Coastにて<Fujikawa Chiai 1st ANNIVERSARY LIVE 『白白』>を開催した。

◆ライブ写真(10枚)

2018年11月25日に開催された東京カルチャーカルチャーでのアコースティックワンマンを皮切りに、ソロシンガーとして活動すること1年。5月にリリースしたフルアルバム『ライカ』はiTunensチャート2位、オリコンデイリーチャート1位、そしてBillboard週刊チャートでも7位を記録するなどパワフルなチャートアクションを見せる藤川千愛。1年の活動の中ではお笑い芸人の千鳥・ノブによる作詞提供、アニメ『盾の勇者の成り上がり』では2クールにわたるエンディングテーマを担当、さらにBUCK-TICKトリビュートアルバムへの参加など、エンタメから国内音楽シーンの重鎮まで、さまざまな交わりの中で自身の“歌”を高めてきた彼女。ソロでのデビューから1年を経た彼女のパフォーマンスを見届けようと、この日の会場には2000人を超す観客が集まった。

アンビエントなピアノのイントロに導かれてステージに登場した藤川千愛がこの日のオープニングに歌ったのは「引き寄せられて夢を見る」。同曲は、ライブに先駆けてデジタル配信が開始された。ポリッドスクリーンにリリックが映し出される幻想的なセットの中、スピリチュアルなファルセットと共にこの夜の幕が上げられた。続く「べつにいいけど」もライブのみで披露されてきたバラードで、この日初めて聴く聴衆も多い楽曲。新曲を立て続けに並べたオープニングは、自身の“歌”でオーディエンスを牽引していくことを強く印象づけていく。

そのまま「1年で一番熱いライブにしたい」と意気込みを語ると、エレキギターを手に藤川は1stアルバム『ライカ』収録のロックチューン「葛藤」へ。サビでは藤川とオーディエンスに力強いコール&レスポンスが沸き起こり、オープニングの2曲から一転、フロアはアップビートに染まっていく。その後も藤川がリスペクトするクリープハイプのカバーである「オレンジ」、「ゴミの日」とラウドな楽曲をエモーショナルに連発。藤川のアクトとしての“静”と“動”を序盤5曲の中で惜しみなく見せつけると、曲後には満場の拍手がこだました。

その後、「いろいろなチャンスや出会いをくれた作品。アニメを思い出しながら聴いてください」というMCと共に『盾の勇者の成り上がり』の楽曲2曲を続けてパフォーマンス。「あたしが隣にいるうちに」では本人のキーの限界に挑むハイトーンのメロディをアカペラで歌い上げ、オーディエンスは音色と歌詞の一つ一つを噛みしめるように聴き入った。

序盤のセットリストを終え、「1年の活動で最も大きかった出来事は1stアルバム『ライカ』のリリース」とMCで語る藤川。「1stアルバムは人生で1回のこと。自分の素の部分を出したアルバムにできた」と思いを新たに言葉にし、同アルバムのタイトル曲である「ライカ」へ。ソ連のロケット打ち上げで宇宙へと消えた犬の名を関した物語を刹那的な16ビートに乗せて歌い上げると、観客もバックビートの手拍子で応えた。

そして「夜もすがら君を想う」を披露し、1stアルバムのオープニングを再現。オーディエンスは藤川の豊かな倍音に溢れたボーカルに導かれながら、ダンサンブルなムードに体温を高めていく。ファンキーな余韻を残したフロアに、続いて藤川が響かせたのは音源未発表となるジャズチューン、「おまじない」。ポップソングの古典的なスタイルであるバーレスク調の楽曲も自身のカラーで歌い上げ、正統派シンガーとしての射程を遺憾なく1周年のセットリストに刻んだ。

ライブがいよいよ終盤に迫る中、自分が洋楽を聴いてこなかったことがコンプレックスであることを語った藤川。家族や兄弟から洋楽を教えてもらえるような家庭だったらと憧れを語り、淡い思いを込めた新曲「私にもそんな兄貴が」をここで初披露。タイトルコールでは笑いも起きるが、フォークロックのバンドサウンドに乗せ、巻き舌を交えながらストレートにメロディを歌い上げる藤川。歌を歌うために生まれてきたと日頃から語る彼女ならではの、音楽愛に満ちた等身大の思いが表現されると観客は高らかな拍手で応えた。

さらにセットリストは藤川の歌に賭けるスタンスを強く反映した「夢なんかじゃ飯は喰えないと誰かのせいにして」へ。歌に魅せられ、故郷の岡山で一度は就職するも、夢を叶えるために上京を選んだ藤川。シンプルな照明の下、サウンドに身を委ねて歌を重ねる藤川のシルエットには彼女の表現者としての形が投影されていた。本編のラストを前に再びアコースティックギターを手にすると「大人になれよという言葉が嫌い」と藤川はMC。「もう諦めろ、いい加減同じ色に染まれと言われている気がする。けれど、そんな必要はない。みんなそれぞれ違う色があっていい。そう思って見上げた時に見た空の色」と語り、音源未発表曲となる「あさぎ」を披露。力強いメッセージの込められた歌詞を低音を利かせた重厚なメロディラインを力強く熱唱し、表現者としての過去と今をライブサウンドの中に描き出してステージを後にした。

大きなアンコールに応え、ステージに戻った藤川が歌ったのは「あの日あの時」。彼女と同じく岡山県出身である千鳥・ノブの作詞による同曲は西日本豪雨を経て、故郷を想う藤川とノブの願いが込められた一曲。シンプルな伴奏の元、まっすぐなボーカルで等身大の想いを歌の中に響かせた後、「今年も災害の多い年だった。微力ながらつらい時に寄り添える曲を歌っていきたい」と決意を語った。

その後のMCでは4か月連続で新曲を配信していくことを告知、さらにクリスマスを控えた12月22日には岡山県井原市で西日本豪雨へのチャリティライブを行うことを発表。1年の活動を経た彼女が、これからどのように音楽に向き合っていくか、その未来図が活動予定として宣言されたのだった。その後、今回のライブタイトルとなった「白白」という言葉を歌詞に織り交ぜた新曲「あなたを嫌いになれました」に続き、ファンに人気の「hane」、「勝手にひとりでドキドキすんなよ」を披露。ダブルアンコール「昨日のあたしに負けたくないの」まで渾身の18曲を歌い上げて1周年のステージは幕を閉じた。

彼女自身が幼少期から憧れ続けたJ-POPを基軸にしながら、R&B、ジャズ、そして昨今のフェスシーンに呼応するロックナンバーまで、あらゆるフォーマットで自身の歌が通用することを証明した彼女。自身の夢を“歌”によって実現した彼女が、その“歌”を通して次は何を叶えてきたいのか、そして変えていきたいのか。藤川千愛の夢が彼女一人の夢を超えて、みんなの夢へと変わっていく瞬間が新木場スタジオコーストに刻まれたのだった。

写真◎イシハラタイチ

■「引き寄せられて夢を見る」配信情報
https://nippon-columbia.lnk.to/pHOsLfEM

セットリスト
M1.引き寄せられて夢を見る
M2.べつにいいけど
M3.葛藤
M4.オレンジ
M5.ゴミの日
M6.きみの名前
M7.あたしが隣にいるうちに
M8.ライカ
M9.夜もすがら君を思う
M10.おまじない
M11.あたしにもそんな兄貴が(新曲)
M12.夢なんかじゃ飯は喰えないと誰かのせいにして
M13.あさぎ
Encore
M14.あの日あの時
M15.あなたを嫌いになれました(新曲)
M15終わり~メンバー紹介
M16.hane
M17.勝手にひとりでドキドキすんなよ
ダブルEncore
M18.昨日のあたしに負けたくないの

ライブ情報
12月15日 下北沢GARDEN
12月22日 クリスマスチャリティライブ@岡山県井原市

最終更新:11/19(火) 21:10
BARKS

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事