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【GLIM SPANKY インタビュー】生きていく中で何かに怯えていても、結局は自分で歩いていくしかない

11/19(火) 10:02配信

OKMusic

トリプルAサイドシングルと表現してもいい充実の新作「ストーリーの先に」。深化しながら進化し続け、“レトロモダン”のカッコ良さを極めていくーーGLIM SPANKYは今日もまた、音楽が生む幸福と魔法を鳴らし続けている。

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歪みのギターは極力入れない!ギターに関しては徹底的に引き算

──「ストーリーの先に」はかなり音数を抑えながらも、重厚さと説得力に満ちた曲ですね。

松尾:特に今回は音数が少なめで、ガシャガシャしてないですね。空気感を聴かせることに挑戦できた曲かなと思います。個人的にはより歌にこだわりました。Aメロはいつもより後ろノリで溜め気味に歌って、音から出る空気を弱めにしたり、息の調整も細かいところまで意識して。でも、サビでは切なさもありつつ、ちゃんと信念もあるっていう微妙な感じ…あまり歪ませすぎない歌い方で、最後の一行のところだけ地声と裏声のミックスヴォイスに歪みを掛けて歌うという。技術的にこだわった歌い込みができましたね。

──確かに。ハスキーで倍音が活きている、いわゆる松尾レミ節とは違いますよね。それは歌詞やメロディーとの兼ね合いで?

松尾:メロディーですね。いかに物語に入り込ませるかというところで。歪む成分が多いと、耳がそっちのほうに行ってしまうし、逆に透明感がありすぎると、それはそれで何か物足りない。だから、自分が普段しゃべっている程度のかすれ具合をAメロに持ってきて、サビはそれがもう少し力強くなって物語を進化させて、ミックスヴォイスで“切ないけれど意思がある”という表現をしています。

亀本:歌手ですねー。非常にシンガーらしい! いつも松尾さんは“私は歌手じゃない”って言うけど、そこまで歌で自分の表現の幅を出しているんだから立派な歌手じゃないですか!

松尾:そうなの? 私、歌手っぽくないんじゃない?

──お話をうかがっていると今作の歌に関しては、音としての声と声にならない感情のミックスみたいなところもあるのかなと。

松尾:あー、そうです。例えばAメロは音を出すというよりは気持ちを出すというか、漏れてしまった声を出すイメージでしたね。でも、それがわざとらしくなく、歌いすぎず…ちゃんと“詩”であることを意識しているので。私、“自分は詩人でもある”っていう気持ちが大きくて。だから、歌手ではない…“歌う詩人”という感覚が自分ではあります。

──それはすごく分かります。あと、先ほどの空気感にもつながりますが、音数が少ない分、厚みではない立体感を感じました。

亀本:ギターはあまり入れないっていうのが大前提としてありました、サウンド面で。それは3曲目の「Tiny Bird」もそうなんですけど。歪みのギターは極力入れない。人がロックを聴いた時にカッコ良いと感じるのって歪みのギターだったりするし、シャー!って倍音がいっぱい出るからダーティーというか騒がしい感じが出せますけど、そういう聴かせ方ってモダンじゃないと思うんですよ。だから、この曲はサビだけに歪みのギターが出てくるんですけど、それも弦は1本しか弾いてない…和音を弾いてないんです。ギターに関しては、ほんと徹底的に引き算でやることを意識しました。その分、ピアノやシンセやドラムとそれに掛けるリバーブで埋めるという感じで。それとアコギは…食事で言うとブラックペッパーみたいな、ちゃんと刺激になるアクセントとして入れて。海外のポップス的な作りではあるんですけど、そこにもうちょっとオルタナティブな感覚の音が混ざっていて、かつ美しいサウンドというのを目指してましたね。

──ピアノが基調になってますよね、かなり。

亀本:ですね。ピアノが前に出ていて、ギターは脇役ぐらい。ギターもシャー!って鳴っていると、結局は後ろじゃないですか。それよりも出るところではメロディーをバン!と弾いて、“はい、ギターです! こんにちはー”みたいに聴かせるほうが大事なんじゃないかって思うんです。ギターソロもアコギとエレキと両方弾いて、その混ざり具合を聴かせるというやり方で…それも今まであまりやらなかったことですね。

──歌詞も言葉の組み立て方や表現にも新たな面が表れているような。

松尾:今回のシングルの曲は全部そうなんですけど、“始まる前に止める”というか。ストーリー的には別に何も乗り越えていないし、進んでもいない…自分が次へ進む前のギリギリのところで、この曲たちを終わらせるようにしているんです。「ストーリーの先に」は目の前にあるものがすごくリアルに見えていて…亡霊や惑しさえも。すごく近くにいる人たちがひと言何か言ってくれたことで、その惑しに気付けて目の前が開けたり、時が経って自分が成長したことで自分に気付かされることってあると思うんです。だから、最後の《あなたに気付けた今では》の《あなた》も他人かもしれないし、自分かもしれない。人じゃないかもしれないし。そして、そのストーリーを抜けた先にもストーリーは続いていくっていうことを、ちゃんと歌にしたくて。それをちょっとネガティブな要素もありつつ、アンニュイな空気感で伝える…歌い方も含め、新たな挑戦ができたかなと。

──現代社会において非常にリアルに迫る歌詞だと思いました。聴くたびにさまざまなことを想起しましたし。あと、《亡霊》は「All Of Us」(2018年11月発表のアルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』収録曲)の《魔物》を思い出したり。

松尾:それが物体であるかも分からないし、目に見えないものかもしれないし、社会のことかもしれない。私たちは生きていく中で何かに怯えているし、何かを疑っているし…でも、結局は自分で歩いていくしかないっていう。それをちゃんと映像が分かるロマンチックな風景に重ねて歌ったら、聴く人もその中に入り込めるんじゃないかと思って。

──あえて書き切らないところはアウトロの余韻や処理にもつながってます?

松尾:あぁ…やっぱりちょっと映画っぽいというか。ジャケットもそうですけど、絵画や映画をイメージしています。

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最終更新:11/19(火) 10:02
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