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宮城県美術館、移転・新築の方針固まる。前川國男建築はどうなる?

11/20(水) 11:32配信

美術手帖

 1981年に竣工した前川國男建築の宮城県美術館が、移転する方針が固まった。


 宮城県は今年5月から「県有施設再編等の在り方検討懇話会」によって老朽化した県有施設の再編に取り組んでおり、移転・新築の方針は18日に行われた第4回の懇話会で示されたもの。同館を、建て替え検討中の宮城県民会館の新建設予定地とされている旧仙台医療センター跡地に移転させ、集約する方針となった。

 県は、今年度末に向けて方向性を固めたいとしており、実際の移転・開館などの時期は現時点では未定となっている。


 宮城県美術館は、近代建築の巨匠として知られる前川國男による設計で、地下1階、地上2階建ての美術館。館内には4つの展示室のほか、創作室、造形遊戯室、講堂、図書室などがある。コレクションは、宮城県や東北地方にゆかりのあるものを中心に幅広く収集。明治時代以降現代までの日本画、洋画、版画、彫刻、工芸などのほか、ワシリー・カンディンスキー、パウル・クレーなどの外国作品や戦後日本の絵本原画も所蔵しており、収蔵作品点数は約6800点におよぶ(2016年度末時点)。また90年には、本館西隣に佐藤忠良記念館がオープンした。


 気になるのは、宮城県美術館の建築の行方だ。近年、ル・コルビュジエ建築の世界遺産登録を契機に、その最初の日本人弟子であった前川國男建築を有する全国9つの自治体(埼玉県、東京都、神奈川県、岡山県、熊本県、新潟市、福岡市、弘前市、沖縄県石垣市)は、「近代建築ツーリズムネットワーク」を結成。前川建築をはじめとする近代建築を活用する機運が高まっている。

 また宮城県も2018年3月には「宮城県美術館リニューアル基本方針」を固めており、そこでは「キッズ・スタジオ」や「見える収蔵庫」
(ヴィジブル・ストレージ)など、具体的なリニューアル内容までが示されていた。今回の移転案は、これとはまったく異なる方針だ。


 宮城県美術館の将来的な存続について、県は現段階では何も決まっていないとしているが、近代建築の記録と保存を目的とする国際学術組織「DOCOMOMO」の日本支部前代表で、『建築の前夜―前川國男論』(2019年日本建築学会論文賞受賞)などの著書がある京都工芸繊維大学教授・松隈洋は次のように危惧する。


 「全国の美術館が別の局面に入っている。長く使われてきた施設を大事にするのではなく、巨大な施設をつくりたいというのは、時代に逆行している。老朽化と言うが、メンテナンスを行って長寿命化を図るべきであり、前川は時間に耐える建築を目指していた。同じ前川建築の東京都美術館(1975年)や福岡市美術館(1979年)は、改修を経て生き生きとした美術館として利用されており、宮城県でなぜ同じことができないのか。一言で『県有施設』というが、個別の建築について、その歴史的意味や価値が検討されたのか。大切な議論が素通りされたとしか思えない」。

 美術館建築をめぐっては、京都市京セラ美術館や弘前れんが倉庫美術館
など、既存の建築をリノベーションする館も目立ちつつある。宮城県美術館においては、たんなる取り壊しではない方向性が求められる。

 

最終更新:11/20(水) 11:32
美術手帖

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