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ヤフーとLINE統合に見る、GAFAと中国BATへの危機感

11/21(木) 9:00配信

アスキー

ヤフーの親会社であるZホールディングスと、メッセージングアプリ大手であるLINEの経営統合が発表。米国GAFA、中国BATに対する危機感が、統合のトリガーになっているように見える。

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今回のことば
 
「これからの1年間は、お互いに『花嫁武者修行』をする期間。私は、この1年間は『思いっきりLINEと戦え』と、ヤフーの社員に言っている」(Zホールディングス 代表取締役社長兼CEOの川邊健太郎氏)
 
時価総額3兆円のネット企業誕生
 検索事業やメディア事業などを手がけるヤフーの親会社であるZホールディングスと、メッセージングアプリ大手であるLINEの経営統合が発表された。
 
 両社は、2019年12月までに最終資本提携契約を結び、2020年10月までに統合を完了させる予定だ。統合会社は、Zホールディングスとなり、東証一部上場を維持する。資本の約65%をソフトバンクとNAVERが50%ずつ出資するジョイントベンチャーが占め、残りの約35%を一般株主で構成することになる。
 
 新生Zホールディングスの代表取締役社長Co-CEOには、現Zホールディングスの代表取締役社長CEOである川邊健太郎氏が就任。LINEの代表取締役社長兼CEOである出澤剛氏は、「社長」の肩書きはつかないが、代表取締役Co-CEOに就任し、「同じ立場で統合後の活動を進める」(Zホールディングスの川邊社長)とする。
 
 取締役構成は、Zホールディングスから3人、LINEから3人が就任する予定で、独立社外取締役が4人就任。社外取締役が最大母数という構成だ。
 
 川邊社長は「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」と宣言。「日本に住む人々に、最高のユーザー体験を提供し、社会課題を解決。さらに、日本を起点に、アジアにも最高のユーザー体験を提供する。米のGAFA、中国のBATに続く、第3局として、世界に羽ばたきたい」と語った。
 
 LINEの出澤社長も「日本、アジアを足場にして、全世界に飛躍し、世界規模で最高のユーザー体験を提供して、課題を解決していく会社になりたい」と意気込みをみせた。
 
 今回の経営統合によって、時価総額で約3兆円という大型インターネット企業が誕生することになる。
 
 そのシナジー効果はどれほどのものだろうか。
 
LINEのグローバル基盤はメリット
 ひとつめは顧客基盤だ。
 
 ヤフーには、6743万人のユーザーと、300万社以上のビジネスクライアントを持つ。また、LINEは8200万人のユーザーと、約350万社のビジネスクライアントがあるという。
 
 このなかには重複部分もあるが、補完部分も大きいと川邊社長は語る。
 
 「LINEには若いユーザーが多く、アプリを接点とした利用形態である。それに対して、ヤフーにはPC時代からのユーザーが多く存在し、ブラウザーでの利用も多い。顧客基盤においても補完できる」とする。
 
 2つめはヤフーとって、LINEのグローバル基盤を利用できるメリットだ。出澤社長は「LINEは全世界230以上の国と地域で利用され、1億8500万人の利用者がいる。台湾、タイ、インドネシアではトップシェアであり、韓国ではナンバーワンのポータルサイトであり、その点では日本のYahoo!JAPANと近いポジションにある」とする。
 
 これまでヤフーはライセンスの問題もあり、そのブランドを活用した世界展開ができなかった。だが、LINEとの連携により、グローバル展開の足がかりを作ることができる。
 
サービスの連携と創出に期待
 3つめは、サービス領域におけるシナジーだ。
 
 ヤフーは検索サービス、Yahoo!ニュースをはじめとするメディア事業、Yahoo!ショッピングや買収したZOZOなどのeコマース事業、PayPayを核にしたFintech事業を持つ。一方LINEはメッセンジャーアプリと、その上で展開するニュースやゲーム、音楽、eコマースなどのサービス、そして、LINE PayをはじめとするFintechや、LINEクローバーをはじめとするAI関連サービスがあり、連携が期待されるところだ。
 
 今回の会見では「両社がやっている事業の棲み分けや統合は、これから議論していくことになる」(出澤社長)とし、具体的なサービスの統合プランなどについては明言しなかった。だが、川邊社長は「ヤフーは、メッセンジャーのサービスを提供できていない。LINEはeコマースにはあまり力が入っていない。それぞれを補うことができる」とし、
 
 「ヤフーでeコマースを利用したユーザーがソフトバンクのスマホユーザーであれば、ポイント10倍といったサービスを行なっている。統合後には、これと同様に、LINEユーザーにもポイント10倍といったサービスを提供できるだろう」などとする。
 
 出澤社長は「いまあるものの組み合わせだけでも統合効果は大きいが、新たなサービスを創出することが、爆発的ともいえる速度で、事業を拡大することにつながる」と述べ、両社の統合で、これまでの基盤を生かした新たなサービス創出に期待を寄せる。
 
PayPayとLINE Payは統合後に検討
 なかでも気になるのが、PayPayとLINE Payの行方だ。
 
 これに関しても、「正式統合後に検討することになる」としたが、「日本のキャッシュレス比率は約3割。そのほとんどをキャッシュカードが占める。ペイメント事業においては、両社の強みを掛け合わせて、ユーザー、店舗の利便性を飛躍的に向上させることができると考えており、この事業をスケールアップし、スピードアップできる。
 
 また、ペイメントの先につながっている事業の力強い立ち上げにもつなげることができる」(川邊社長)と、両社の実績を生かせる事業であることを強調してみせた。
 
 そのほか、統合後には2万人の社員数となり、そのうち数1000人のエンジニア、デザイナー、データサイエンティストを持つこと、年間1000億円規模の投資が可能になり、重点領域への集中投資が可能になるメリットなども強調してみせた。
 
 一方で統合の効果が限定的とする見方もある。
 
 日本やアジアでは存在感がある統合といえるが、グローバルでみれば、統合後の規模も、決して大きいとはいえない。
 
GAFA・BATとは歴然の差
 会見のなかでも統合後の規模として、時価総額3兆円、営業利益1600億円、研究開発費200億円、従業員数は1万9000人になることを示した。しかし横には、あえてA社、B社、C社などとしながらも、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)やBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる企業の規模を並べて、その差が歴然であることを示してみせた。
 
 米国C社として挙げていたアマゾンは、時価総額が98兆円、営業利益は1兆4000億円、研究開発費は3兆2000億円、従業員数は64万7000人だ。
 
 出澤社長は「我々の危機感のひとつが、グローバルテックジャイアントの存在。インターネット産業は優秀な人材や資金、データが強いところに集約され、勝者が総取りする構造を持つ。
 
 米国GAFA、中国BATとは、時価総額、営業利益、研究開発費、従業員数のすべてで桁違いの差がついている。競合に対する危機感、スピードに対する危機感、AIの投資に対する危機感を持っている。いまこそ手を打って、次のステージに進むべきであると考えた。これは、あらゆる産業がデジタル化するなかで、日本の国力や文化の多様性にまで影響を及ぼす課題である」と指摘する。
 
東アジアから世界のインターネットを構成する
 出澤社長が持つ危機感が今回の統合のトリガーになっているのは確かである。日本のなかでだけの戦いを見ていれば、今回の統合は疑問が多いが、世界での戦いを視野に入れると、この統合の意味が理解しやすいだろう。
 
 川邊社長も「オールジャパンとしてさまざまな協業を呼び掛け、日本の課題にフォーカスした他社ではできないサービスを提供したい。私は、東アジアから、世界のインターネットを構成する、もう一極を作ることが、経営者として、いまなすべきことであると考えている。
 
 ソフトバンク、NAVER、ZHD、LINEは、いずれも東アジアに位置する会社である。最強のOne Teamとして、グループシナジーを利かせ、米国のGAFA、中国のBATに続く、第3局として、世界に羽ばたきたい」と述べる。
 
 統合は約1年後である。
 
 時価総額で1兆円以上を誇るプラットフォーマーの統合は日本では例がなく、独占禁止法の観点から、統合には想定以上に時間がかかるとの見方もある。市場の範囲をどう捉えるのか、データの取り扱いをどうするのかといった観点からも、関連当局の動きが気になる。
 
 川邊社長は「審査を受ける我々がとやかく言う立場にはない」としながら、「著しくシェアが上がる分野はないのではないか」と補完関係の方を強調してみせる。
 
 だが、1年という期間はやはり長い。
 
この1年はお互いに戦う期間
 出澤社長は「1年という期間には、いろいろなことが起こる」とする。
 
 そして「統合までに1年間の期間があり、その間は、統合に向けた具体的なステップが取れない。いまできることは、よりよいサービスを作り、ユーザー評価を受けて成長すること。我々も成長した形で統合したいと考えている」と語る。
 
 また、川邊社長は「ヤフーの社員には、これからの1年間は思いきりLINEと戦えと言った。どちらがいいサービスを作れるのか、勝負を続けろと言った。それが日本のインターネットユーザーのためにはいいことである」と述べた。
 
 川邊社長は、これを「お互いに『花嫁武者修行』をする期間」と位置づける。
 
 1年後の統合に向けて、お互いの会社がいま以上に成長していないと、GAFAやBATとの差は開くばかりだ。
 
文● 大河原克行、編集● ASCII

最終更新:11/21(木) 9:00
アスキー

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