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AI導入が遅れている日本企業 背景には「年功序列」にしがみつく人々

11/21(木) 6:00配信

ITmedia ビジネスオンライン

 日本オラクル(東京都港区)は11月13日、日本の職場におけるAI(人工知能)の活用に関する調査の結果報告会を実施した。同会は、2019年10月に発表された「職場におけるAI調査」に関して日本企業にフォーカスした分析結果を公表するために開催された。職場におけるAI調査は世界10カ国、地域を対象に19年7~8月にかけて行われたもの。対象となった米国、フランス、中国、インドなどの企業で従業員、マネジャー、人事部門リーダーの立場にいる人8370人が対象。

【画像で見る】日本企業に顕著な傾向

【参考記事】「上司よりAIを信頼する人」の割合は? 世界10カ国対象の「職場におけるAI」調査

 調査の結果では、18年に行われた同様の調査と比較して、何らかの形で「職場でAIを利用している」と回答した従業員の割合がおよそ1.5倍に増えた。国別では、インドがトップで78%。次いで中国(77%)、アラブ首長国連邦(62%)と並ぶ。

 世界各国に共通する傾向としては、「回答者の64%が自身のマネジャーよりもロボットの方を信頼している」ことと合わせ、「マネジャーには新たな役割が求められている」点が挙げられた。

 日本企業に顕著だった点には、AIの導入率が最も低かったことが挙がった。発表会に登壇した、HRテクノロジーに詳しい岩本隆慶応義塾大学特任教授は「日本では、事業部門でのAI活用は進みつつあるが、バックオフィスに導入する意識が低い」と指摘している。

バックオフィスへのAI導入はなぜ進まない?

 なぜ、事業部門のようにバックオフィスではAIの導入が進まないのか。岩本特任教授は、特に大企業で顕著な例として、導入システムの不統一性を挙げる。「AIの導入にはデータの統一性も重要な要素の1つ。しかし、バックオフィスで導入しているシステムのベンダーを数えると、10社以上という企業も少なくない。また『購買』や『会計』など、個別部門での導入が多いため、『全体最適』の考えがなく、それぞれのデータが点在している。これではなかなか導入を進められない」と岩本特任教授。

 導入が進まない理由は他にもある。主に大企業では、総務や経理など、バックオフィス業務を子会社へ委託しているケースが多い。AIの移管で業務を代替することになれば、子会社で業務に当たっている人員の整理も必要になってくる。

 また、日本企業に顕著な傾向として「上司への信頼性の低さ」も挙げられた。10カ国全体で、「自身の上司よりロボットを信頼する従業員」の割合は64%だったのに対し、日本では76%。岩本特任教授は、産業構造の変化に人事制度がついていけなかったことを理由に挙げる。「大量生産、大量消費の時代には、経験や勘に頼る部分も大きく、年功序列がある程度機能していた。しかし、効率化が重視されるようになる中で、マネジメントにも勘に頼らない合理性が必要となってきている。これまでの年功序列式のマネジャーでは、現場との距離が生まれている」と岩本特任教授。「データで見ると、年功序列の効率が悪いと分かることがほとんど。その一方で、データを基に効率化すると困る人がAI導入や制度改革に抵抗している」とも指摘する。

 今回の発表では、AIの導入が進まないのが単にテクノロジーの問題ではなく、日本企業の構造的な問題も絡んでいることが浮き彫りになった。一部の大手企業では、労組と協調して年功序列の段階的な変更を実行しているケースが出始めてきたが、世界基準のAI導入にはまだまだ時間がかかりそうだ。

ITmedia ビジネスオンライン

最終更新:11/21(木) 6:00
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