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稲垣えみ子 会社を辞めて発見した、欲のサイズ。「メシ、汁、漬物」があれば幸せ

11/21(木) 12:12配信

婦人公論.jp

アフロヘアがトレードマークの稲垣えみ子さん。50歳の時に長年勤めた朝日新聞社を早期退職し、電気もガスも極力使わない生活を送る様子がテレビ番組で紹介されるとたちまち注目を浴びました。現在の暮らしにいたるまでには、価値観の大転換があったと言います──(構成=篠藤ゆり 撮影=本社写真部)

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◆お金がないほうが楽しい生き方を探して

会社を辞めてから3年半がたちました。現在の私は電化製品をほとんど持たず、ガス契約もしていません。お風呂は銭湯を利用しますし、冷蔵庫もエアコンもない。この暑い夏にエアコンもないなんていうと、格差社会を告発する新聞記事に登場しそうですが、私は今、なんの不安も不満もないんです。むしろ、これまでで一番自由だとさえ感じています。

でも人にそう話すと、それは新聞社の正社員で退職金をいっぱいもらえたからだろうとか、現役時代にたくさんお金を貯めこんでいたんでしょうとか。もちろん、いずれ会社を辞めようと考えていたので貯金はしていました。でも、そもそもお金のことだけを考えたら会社を辞めないのが一番いい。

それにお金って結局、いくら貯めれば安心ということは絶対ない。それが証拠に、それなりの貯金や持ち家がある人でも、「老後資金が足りないのでは」と、皆さん不安に陥っていらっしゃいますよね。

私が不安から解放されて、自由を手に入れたのは、そんな、お金に対する価値観を転換することに成功したからなんだと思います。

きっかけは、40歳になるちょっと前のこと。当時は「人生100年」という言葉もなく、80歳くらいが寿命だというイメージがありまして、あ、私はもうすぐ人生の折り返し地点を迎えるんだとハッとしたんです。

それまでずっと、お給料も生活レベルも、昨日より今日、今日より明日と、登っていくことを目標にするのが当然だと思って生きていました。そのために、多少イヤなことがあっても頑張って仕事をしなくてはと。でも、いつまでも登っていくことはありえない。今が頂上なら、あとは下りで、そして最後は「死」というゼロ地点に到達するんだな、と。

ショックでした。でも確かに、定年退職したら収入もガクッと減るし、年齢とともに体力もどんどん衰えていきます。なのに登り坂の価値観のままでいると、どんどんギャップが大きくなり、これからの40年間が「みじめ」で「我慢する」時間になりかねない。それは絶対にイヤだと思いました。

で、どうすべきかと考えたら、これはもう、根底から価値観を変えるしかない。お金がなくても楽しいこと、あるいは、お金がないほうが楽しいという生き方を探そうと思ったのです。まずは、お金がさほどかからない趣味を持つことから始めました。探してみると、山登りとか、農産物の直売所回りとか、けっこう見つかるんですよね。

その後、東日本大震災で原発事故が起きたのを機に節電を始めたことも、価値観がグイッと変わる大きなきっかけになりました。

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最終更新:11/21(木) 14:18
婦人公論.jp

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