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「百貨店の時代」はまた来るか J・フロントリテイリングが挑む未来と発明

11/27(水) 17:00配信 有料

qBiz 西日本新聞経済電子版

古民家を改装した「未来定番研究所」で働く今谷秀和所長(中央)と社員=東京都台東区

 若者の顧客離れなどで百貨店業界が低迷する中、大丸と松坂屋を運営するJ・フロントリテイリング(東京)が、新たな百貨店づくりを加速させている。東京都内の古民家に「研究所」を設け、社内で公募した事業のアイデアを積極的に具現化し、博多大丸(福岡市)など地方百貨店の活性化も図る。歴史と伝統をブランド力の源泉としてきた百貨店の生き残りをかけた試みを探った。 (中野雄策)

 下町風情が残る東京都台東区谷中の住宅街。築100年の古民家で、催事や売り場を担当してきた20~60代の社員5人が働いている。軒先には「未来定番研究所」と書かれたのれんが掛かる。J・フロント傘下、大丸松坂屋百貨店(東京)の社内コンサルティング部署だ。

 研究所は、現在の消費者のニーズ調査ではなく、5年後の未来にある「定番」の提案を目指す。大手広告会社を早期退職後に入社した今谷秀和所長(60)が発案。「未来を語るヒントは過去にある」との思いから、本社から離れた2階建ての古民家を改装した。客観的な立場から事業企画などを立案する社内コンサル組織は業界で珍しいという。

 2017年3月の設立後、異業種で最先端を走る約300人をインタビューしたり、古民家でクリエーターのイベントを開催したりしている。研究所の社員のアイデアや発想を基に、下関大丸(山口県下関市)を地元色の強い店に改装するなど地方百貨店の再生にも一役買っている。来年度にかけては「持続可能性」「地域共生」「ファンづくり」などをテーマに、新たなサービスや催事の企画を打ち出す予定という。

 今谷所長は、呉服店が百貨店に変遷した歴史に思いをはせ「100年以上前に西洋文化を取り入れ、新しいライフスタイルを提案した。今また市場と未来をつくり出したい」と強調し「百貨店の時代がもう一回来る」と力を込める。

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 現場の社員の主体性を引き出して成長につなげる「ボトムアップ型」の経営手法にも力を入れる。

 J・フロントでは「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」というグループビジョンを16年に策定。パルコも含めた傘下の約10社が、失敗を恐れずに挑戦する企業文化を定着させる取り組みを進めている。

 社員に新規事業や営業施策、業務改善を提案してもらう制度を17年度に開始。人事評価にも加点主義で反映する。アイデアは初年度から約2千件集まり、18年度は約7千件まで増えた。

 アイデアの優秀さを競う社内コンテスト「発明アワード」も18年度から始め、今年7月に2回目を開催した。既に新規事業にもつながっており、博多大丸では自治体と連携し特産品を発掘する営業推進策「九州探検隊」に続き、来年度から高齢者の運転免許返納支援サービスも始める。

 J・フロント経営企画部の下垣徳尊さん(35)は「以前は社内に閉塞(へいそく)感を感じたが、今は明るくなった。違う会社になったようだ」と手応えを口にする。

 ただ、百貨店を取り巻く経営環境は厳しさを増している。都心の店舗は富裕層や訪日客が多く堅調だが、地方では郊外型大型店に押されて苦戦が続く。インターネット通販との競争も激化し、郊外や地方都市では店舗閉鎖が相次ぐ。

 J・フロントも、富裕層や訪日外国人の消費が盛り上がる中でも、グループの収益力が伸び悩んでいる。社内改革の取り組みを収益にどう結びつけるか。百貨店の新たな伝統を生み出すための挑戦は続く。 本文:1,398文字 写真:1枚

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最終更新:11/27(水) 17:00
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