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「せつじろう」眠る朝、女児は交番へ 誘拐から脱出まで

11/30(土) 21:00配信

朝日新聞デジタル

 大阪市住吉区の小学6年生の女児(12)が行方不明になり、栃木県小山市の交番で保護されて30日で1週間。伊藤仁士容疑者(35)はツイッターで女児に近づき、430キロ離れた栃木へ連れ帰ったとされる。何げないはずのツイッターでのやりとりが誘拐・監禁事件へと暗転した状況が、捜査関係者らへの取材で徐々に浮かび上がってきた。

【写真】伊藤仁士容疑者(高校の卒業アルバムから、同級生提供)


 女児の記憶では11月10日だった。ツイッターのフォロワーが1人増えていた。

 「こんにちは」。誰だろう、と思った。相手はダイレクトメッセージで名前や住所を次々と尋ねてくる。呼び方を聞くと、「せつじろう」と答えた。

 「半年くらい前にうちに女の子が来た。話し相手になってほしい。来ない?」

 話し相手になるくらいであればいいか、と思った。行き先を聞くと、「せつじろう」は「東京の方」と答えた。合流する場所を教えるよう頼まれ、近くの公園を伝えた。

 17日午前10時25分ごろ、スマホや財布を手に家を出た。公園のベンチに座っていた男が立ち上がり、名前を呼ばれた。「せつじろう」だとわかった。

 「行こうか」。男に促され、歩いて駅へ。電車を何度も乗り継いで半日。駅員がいない無人のJR水戸線小田林駅に降り立ったのは深夜だった。

 「暗いなあ」。肌寒い中、静かな住宅街を男に連れられて歩いた。ぽつぽつと並ぶ戸建てに、田畑や空き地が広がる。小一時間歩き続け、2階建ての一軒家に着いた。

 「スマホを使うな」。男に取り上げられた。SIMカードも抜かれ、隠された。「これ、捨てるね」。靴もどこにあるかわからなくなった。

 誰とも連絡が取れず、外にも出られない。カーテンは閉め切られ、外の様子も見えない。

 家には少女もいた。「千葉から来た『きな』ちゃん。中3」と紹介された。2人で1階の和室で寝た。

 日中は何もすることがない。4台ほどあったパソコンで動画を見て過ごした。食事は1日に1回、男が出すパンやチャーハンを食べた。風呂は2日に1回。

 「誰かが来るのを待とう」。何日か経っても、誰も来なかった。何度か逃げようと思ったが、男はいつも家にいた。

 「これ、見てごらん」。男に「銃弾」を見せられた。「ひどいことされちゃう」と怖くなった。

 23日の朝。目が覚めると、男と少女はまだ寝ていた。「今しかない」。靴下のまま外に出た。雨が降る中、とにかく交番を探した。地面を踏む足の裏に血がにじむ。3時間半後、やっと交番を見つけた。

 「こんにちは」。交番のドアの前に立っていると、警察官が出てきた。

 「私、大阪で行方不明になっていると思います」

 事態は、急展開した。

朝日新聞社

最終更新:11/30(土) 21:56
朝日新聞デジタル

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