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日本への旅行ボイコット運動があだ 大失速の韓国航空業界

12/1(日) 21:00配信

産経新聞

 日韓関係悪化をきっかけに巻き起こった日本への旅行ボイコット運動が、ブーメランになって韓国の航空業界に跳ね返っている。日本路線の需要が減少してコストが上昇し、稼ぎ時の夏場に失速。韓国メディアによれば、7~9月期は航空8社のうち7社が赤字に転落した。頼みの綱の一つだった香港路線も、反政府デモで急減。韓国の航空会社が運航休止で手放した日本路線は中国の航空会社が埋めており、業績の回復は望み薄の状況だ。

 韓国紙、朝鮮日報(日本語電子版)によると、7~9月期の業績で赤字を免れたのは、最大手の大韓航空のみ。それでも、営業利益は前年同期比約70%減の1179億ウォン(約110億円)と大幅減に見舞われた。同社は、業績悪化の理由の一つとして「韓日対立」を挙げる。すでに人件費の抑制のため勤続満2年以上の社員を対象に無給休職を実施しているようで、事態は深刻だ。

 買収が取り沙汰される大手のアシアナ航空にいたっては、営業損益が971億ウォンの黒字から570億ウォンの赤字に転落した。

 業績が振るわないのは、人気を博す格安航空会社(LCC)も同じ。最大手のチェジュ航空は174億ウォンの営業赤字で、ジンエアー、エアプサンもそれぞれ131億ウォン、195億ウォンの営業赤字だった。韓国紙、中央日報(日本語電子版)によれば、チェジュ航空の売上高に日本路線が占める割合は25%前後。「日本路線が全体に占める割合は相対的に高い」(チェジュ航空)という。このため、日本への旅行者の減少が大きく影響した。

 韓国の航空業界で年間最大の繁忙期は7~9月期。7~8月は夏休みの旅行需要が増加し、9月は秋夕(チュソク、中秋節)の連休を利用して海外に出る旅行客が多いからだ。例年4~6月期の業績が不振でも、7~9月期に好転するケースが多いという。

 だが、今年は異なる。低空飛行となった4~6月期の悪い流れを7~9月期で断ち切ることができず、苦戦が続く。

 先行きも視界不良だ。もともと、米中貿易摩擦の影響などで自国も含め世界的に景気が鈍化し、航空機を利用する乗客が減少傾向にある。

 しかも、韓国航空各社は日本路線に投入していた航空機を東南アジア路線に一斉に変更。これがあだとなり、同路線の供給が増加し、激しい競争を招いている。「路線供給過剰という構造的な問題に直面している」(証券アナリスト)と、中央日報が報じた。今のところ、香港路線の急回復も見込めない。

 また、日韓関係に改善の兆しが見られたとしても、“自ら”手放した日本路線を取り戻すことができるかどうかは不透明感が漂う。日中が9月に合意した乗り入れ規制の緩和を追い風に、中国の航空会社が進出を強めているためだ。

 10月下旬からの冬ダイヤでは、中国の航空各社の日本路線は総計で1週間に1130往復超と過去最多。週1000往復を超えたのは初めてで、韓国の航空各社を抜き、国別で首位になった。今年3月にスタートした夏ダイヤに比べ、230往復以上増える異例の拡大だ。

 中国勢は、地方空港への就航を順次増便し、中国の中小都市と日本の地方都市を結ぶ動きもあるという。韓国の航空会社が運航休止した路線を埋めているようで、韓国勢はつけ入る隙がないとみられる。日本政府筋は「中国人の旺盛な訪日需要を取り込む」と強調する。韓国航空業界は八方ふさがりの状況だ。

 日本の観光庁がまとめた10月の訪日韓国人客数は、5年5カ月ぶりに20万人を割り込んだ。朝鮮日報によると、日本路線の減少を痛感する韓国航空協会は国際線の年間損失額を7829億円ウォンと試算し、政府に政策的支援を求めたという。

 もっとも、インターネット上では韓国航空業界に対して同情的な見方は少ない。「身から出たさび」といった冷ややかなコメントが散見される。韓国は、世界経済が低調なところへ、自ら行った日本製品不買運動により、深刻な経済不況に陥った。航空業界も「セルフ制裁効果」の表れだという。韓国航空業界が、負のスパイラルから抜け出すのは容易ではないとみられる。

 危機的状況は、財務基盤が大手に比べて脆弱(ぜいじゃく)とされるLCCにも広がる。韓国では今後、LCCを中心に航空業界の再編が起きることも否定できない。(経済本部 佐藤克史)

最終更新:12/1(日) 21:00
産経新聞

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