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[インタビュー]「金正恩の“経済オールイン”政策、たやすくはあきらめないだろう」

2019/12/1(日) 8:15配信

ハンギョレ新聞

イ・ジョンソク元統一部長官  『制裁の中の北朝鮮経済:スライドでロック解除』出版 北朝鮮、「生産関係中心」から「生産力中心」へ発展観が転換している 「歴史上最も幅広い構造的変化が進行中」 「外部世界が北朝鮮に求めた望ましい変化の方向性と一致」 「金正恩の開放の意志を挫折させない方法を考えるべき」

 イ・ジョンソク元統一部長官(世宗研究所首席研究委員)は「いま北朝鮮では、70年の歴史上最も幅広い構造的変化が進行されている」とし、「その中心には北朝鮮政権、つまり金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がいる」と語った。イ・ジョンソク元長官は「対北朝鮮政策を立てる上で基盤になってきた従来の認識を揺るがしかねないレベルの変化」だと指摘した。

 イ元長官は「金正日委員長の生産力発展を中心とする政策努力は、長年外部世界が北朝鮮に求めてきた望ましい変化の方向性と一致する」と強調した。その上で、「非核化交渉の膠着が長引き、米国の制裁を固守する態度が続けば、北朝鮮の経済開放の意志を挫折させる可能性が高い」と懸念を示した。

 そしてこう尋ねた。「金委員長の経済開放の意志を挫折させるのが果たして望ましいだろうか? 朝鮮半島の命運がかかった機会の窓が閉まる前に、制裁との矛盾をどうやって解決するのか、真剣に考えなければならない」

 北朝鮮研究者としてイ元長官は、金委員長が主導する変化の実状を確認しようと集中研究に着手し、“経済を中心に変化する北朝鮮を見せる本”である『制裁の中の北朝鮮経済:スライドでロック解除』(イ・ジョンソク、チェ・ウンジュ編著)を書いた。「北朝鮮は変化を拒否する閉鎖的・好戦的軍事国家」という固定観念にとらわれた米政府・議会・専門家集団の認識を和らげるため、英語版をまず出し、最近訪米する人の手に預けて送った。イ元長官と、28日に出版記念懇談会で、また19日に城南市(ソンナムシ)の世宗研究所研究室で会ってインタビューした。

 イ元長官は、「金委員長の“経済オールイン”政策は、局面的・戦術的行動ではなく、国家自体の変身を図る戦略的・歴史的行動」だとし、「金委員長は、たやすくはこの路線をあきらめないだろう」と話した。こうした判断の核心の根拠は、従来の階級・生産関係・軍事優先(先軍)中心戦略から「生産力中心の発展観」へと中心が移動したことだ。これは「質的転換の試み」という意味だ。イ元長官は「数年前ならば反革命・修正主義と批判されるであろう主張が『労働新聞』に日々出ている」と明かした。

 イ元長官は、金委員長は高度成長で北朝鮮を中国に劣らない富国にすることができると信じており、その熱望に捕らわれていると見ている。彼は、金委員長のこうした信じ込み・熱望がどれほど現実性があるかは別の問題だと付け加えた。

 金委員長は高度成長には生産力の発展が必須だと判断し、4つを動員しているとイ元長官は分析した。(1)国家戦略路線転換(2)改革(3)開放(4)科学技術革命だ。

 (1)は労働党中央委員会第7期3次全員会議(2018年4月20日)で「経済・核並進路線の終了」と「経済建設集中」戦略路線の採択で公式化し、4月11日の最高人民会議第14期1次会議の憲法改正で制度化した。イ元長官は「国家の資源を軍事より経済建設に優先的に配分し、経済発展に適するよう経済構造を改善している」とし、「軍事中心国家から経済建設中心国家に転換している」と評価した。

 (2)は生産現場の自主性・競争を高める「社会主義企業責任管理制」と、個別農民が生産と分配の単位になることができるようにした「圃田担当制」が代表的だ。イ元長官は前者を「北朝鮮経済改革のアイコン」、後者を「集団主義に基づいた生産方式に重大な変化が発生した証拠」と呼んだ。

 (3)は従来の「対外貿易」よりはるかに広い意味の「対外経済関係」として4月の改憲で明示しており、空間的には平壌(ピョンヤン)に特殊経済地帯(恩情先端科学技術区、江南経済開発区)を設置するなど「全国化」している。ただし、「強力な制裁のため、実際に進められている開放事業は観光と制限的な労働力送出くらいだ」とイ元長官は付け加えた。そして「金委員長が格別の関心を示している三池淵(サムジヨン)、元山葛麻(ウォンサン・カルマ)、陽徳郡(ヤンドクグン)温泉はいずれも観光事業を念頭に置いたものだが、元山葛麻と陽徳は国境地帯ではないため、内陸の開放が伴わなければならない」と見通した。そして「観光は北朝鮮が不可逆的な開放に向かう上で重要な装置」だと指摘した。

 (4)は「人材と科学技術をおろそかに見れば国が亡びる」という金委員長の言明のように、優先順位が非常に高い。

 イ元長官は(1)+(2)+(4)は成果を出すが、(3)(開放)に限っては制裁のせいで活路を開くことができない状況だと診断した。それで「北朝鮮は高度経済成長は不可能だが、少なくとも三食を食べて緩やかに発展できる内部の動力は確保した」と評価している。

 結論として、イ元長官は「米国を中心とする国連の強力な対北朝鮮制裁は、北朝鮮経済に強力な打撃を与えているが、北朝鮮はこれに対応して長期間耐える体制の耐久力を確保した」とし、「一方的な対北朝鮮制裁だけでは北朝鮮を屈服させることが不可能な状況」だと分析した。その現実的な意味合いは「制裁中心の一方的な圧迫」ではなく、「交換式の段階的交渉」だけが作動可能な現実的な解決策だということだ。

イ・ジェフン、ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:2019/12/1(日) 8:15
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