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「肩書きが“デザイナー”ではない人にこそ読んでほしい」〈澁谷デザイン事務所〉の10年をふり返る『秋田デ、~秋田で、デザインするということ~』/秋田

2019/12/1(日) 14:55配信

Webマガジン コロカル

コロカルニュース

■「秋田で、デザインする」ということを、澁谷和之さんは教えてくれた
こちらまで顔がくしゃくしゃになってしまうほどの笑顔で迎えてくれたのは、書籍『秋田デ、~秋田で、デザインをするということ~』を出版した、澁谷和之さん。

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お父様を亡くした2009年から、「東京で、デザインすること」を辞め、生まれ故郷の秋田県美郷町で〈澁谷デザイン事務所〉を営んでいます。

独立してから10年、パッケージやロゴマークをデザインする「いわゆるデザイン」だけではないデザインに、秋田という地で向き合い、走り続けてきました。

「デザイナーってなんだろうって考えるんです。絵がうまいとか、パソコンが得意とかそういうことではなくて。デザインは特定の人ではなく、みんなが持つべき思考だと思っているので」

「この本は、肩書きが“デザイナー”ではない人にこそ読んでほしい1冊」と話す澁谷さんに、その思いをうかがいました。

■かっこつけない、本当のデザイン
ページをめくって目に飛び込んでくるのは、いわゆるデザインされた商品ばかりではなく、人、人、人。それも皆、「いい顔」をしています。

書籍には、依頼されたロゴマークを「つくらない」ところから始まる、コーヒー屋さんと、毎月“ラブレター”をやりとりするかのように気にかけ合う関係のなかで築き上げてきたブランドデザインや、屋号やロゴマークのデザインをお手伝いしていた農家さんの、仲人までしてしまった「結婚というデザイン」など、「いわゆるデザイン」の枠を超えて、秋田で暮らす人が抱える本当の問題を掘り起こし、一緒に考え、寄り添ってきた物語がちりばめられています。

読み終えて感じたことは、澁谷さんの前ではみんなかっこつけずに、素直になっているということ。

そこで思い浮かぶのは、ものづくりのみならず、家族や農業など、澁谷さんの日常が綴られるブログ『泣いた“なまはげ”の天気読み』。

「デザイン会社は実績をかっこよく並べたホームページを持っているのが一般的だと思うんですけど、あまり人が見えないなと思っていて。僕はこういう人間なので(笑)、その部分だけは素直でいたい。ブログを読んで僕のことを感じてもらって、デザインを相談してくれるのが健全で、このかたちが密に人とつながれると思うんです」

たくさんの「いい顔」は、さらけ出して一緒に悩んで、モヤモヤとした問題を解決した晴れやかな笑顔なのかもしれません。

■原点はメロンづくり
2009年、秋田に帰ってきた澁谷さんは、パソコンで作業する「いわゆるデザイン」から離れ、農業をはじめます。そのひとつが、お父様が退職後に挑戦していたメロンづくり。「『親父の形見的につくろう』って、母さんと、長靴履いて、軽トラ乗って、鍬で耕すことをやってみたんです」『メロンと母と息子』は、苦労して育てたメロンができたとき、記念に撮った写真。「皮までも愛おしく、ただ捨てることができなかった」と、皮に墨を塗り、魚拓ならぬメロン拓をつくります。

「この体験が、今のデザインの根っこ。秋田はやっぱり農業の県なので、一次産業は大事にしていて。土に触れることが、本当のデザインを考える軸になっています。」

■メッセージしたいことを形に
2013年には、〈勝手に宣伝組合〉を旗揚げします。北秋田市根子集落在住のカメラマン船橋陽馬さんと、補助金でも、クライアントからの依頼でもない、秋田県内の「いいな~大好きだな!」と思ったものを“勝手に”取材して、“勝手に”宣伝していく活動です。

「本というかたちになったのは、メッセージしたいことがいっぱい出てきたからなのかな」県外と県内メンバーでつくられた秋田県発行のフリーマガジン『のんびり』の制作の先で、地元クリエイターふたりで、どこまでできるかというチャレンジでもあったそう。

「僕にとっては、本でもあるんです」と、2017年からつくっているのは、〈百目木(どめき)人形〉。地域の言い伝えや歴史をかたちにしたもので、〈冬告げ銀杏〉がはじまりでした。

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最終更新:2019/12/1(日) 14:55
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