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感謝祭に聞こえてきた心温まるストーリー【舩越園子コラム】

12/2(月) 12:00配信

ゴルフ情報ALBA.Net

アンソニー・キムという選手を覚えているだろうか? 2006年にプロ転向し、08年に年間2勝、10年に通算3勝目を挙げた韓国系米国人選手だ。

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当時その将来を大いに期待されていたのだが、12年にアキレス腱を故障して以降、戦線離脱し、公の場に姿を見せることはほとんどない。今はどこでどうしているのか、彼の近況はまったく聞こえてこなかった。

だが、そのキムの名を久しぶりに耳にした。タイガー・ウッズの一時期のスイングアドバイザーだったクリス・コモが、かつてキムのスイングコーチだったアダム・スクライバーから聞いた話を米メディアに明かし、米国のサンクスギビング・ホリデーに、「心温まるストーリー」として報じられた。

それはキムが華々しい勝利を飾った08年の出来事。キムとコーチのスクライバーは、地元カリフォルニアで大手フランチャイズのピザ・レストランへ行った。

対応してくれていたウエイトレスが妊婦だったため、キムは「ベイビーが生まれるんだね。おめでとう。ハズバンドも楽しみだろうね?」と声をかけた。

すると、ウエイトレス女性は「夫はいなくなってしまって、今、私は出産がとても怖い……」と言って、泣き始めたという。キムは「まさか、こんな話が飛び出してくるとは思わなった」と困惑した様子を見せていたそうだ。

数カ月後。キムとコーチは再び同じレストランへ行った。すると、いつぞやのウエイトレスが駆け寄ってきてキムにハグし、生まれたばかりのベイビーの写真をうれしそうに披露した。「キムとウエイトレスは、まるで長年の友人のように親しげに見えた」とは、コーチのスクライバー氏の言葉だ。

よくよく聞いてみると、キムはウエイトレスが突然泣き出したあの日の帰り際、大金をチップとして彼女に残していったそうだ。その「大金」の額は「1万ドル? 2万ドル? そういう単位だったらしい」とスクライバー氏。

見ず知らずのウエイトレスの窮状を知って、100万円、200万円を黙って贈ったキムの行動を報道で知った米国の人々は「素晴らしい」、「心温まる」と絶賛している。そうした声がキムに届いているのかどうかは、今は分からないのだが、今度は人々の賞賛の声にキムが励まされ復帰してくれたら、うれしい。

さて、心温まる話を、もう1つ耳にした。今年10月にラスベガスで開催された「シュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレン・オープン」を制し、米ツアー通算4勝目を挙げたケビン・ナのことは、その際に、この場で紹介させていただいた。

ラスベガスに本拠を置くナは、この地を「故郷」と呼び、同地の小児病院が冠スポンサーを務める同大会で傷病と向き合う子供たちを以前から励ましてきた。

今年の練習日には、骨形成不全症という難病と闘っている17歳のアレックくんと会い、スポーツ・キャスターを目指しているアレックくんにナの過去の優勝シーンを画像で見せて実況してもらうなどして、楽しいひとときをともに過ごした。

アレックくんは02年からシカゴの病院で治療を受け続けているが、すでに60本以上の骨が損なわれ、手術を受けること数十回。車椅子生活を余儀なくされているが、明るい笑顔をたたえ、夢に向かって前進しようとしている。

「そんなアレックくんからインスピレーションをもらったからこそ、僕は優勝できたし、好調を維持できている」

ナは、そんな感謝を込めて、サンクスギビングにシュライナーズ・ホスピタルへ5万ドル(約550万円)を寄付したという。

今年も感謝祭の休日に素敵なストーリーが聞こえてきて、「ああ、ゴルフがあって良かった。素敵な選手がいてくれて良かった」と、しみじみ感謝した。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

(撮影:GettyImages)<ゴルフ情報ALBA.Net>

最終更新:12/2(月) 12:00
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