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金融機関決算における最近の信用コストの動向 (日本銀行「金融システムレポート」2019年10月号より)

12/2(月) 15:45配信

東京商工リサーチ

1.はじめに

 最近の金融機関決算では、貸倒引当金の計上や貸出の償却等から発生する損失であり、企業の倒産とも関係の深い与信関係費用(以下、信用コスト)が、低水準ながらも増加したことが特徴である。本稿では、日本銀行が10月に公表した「金融システムレポート」の内容に即して、こうした決算の特徴点や、信用コスト増加の背景について紹介する。

2.最近の金融機関決算の特徴点

 まず、金融機関の2018年度決算を概観する。金融機関の当期純利益は、高めの水準を維持しているものの、大きめの減益となった。内訳をみると、金融機関の本業での業績を示すコア業務純益は、利益となる貸出利回りから費用となる預金利回りを差し引いた預貸利鞘の縮小等を背景とする国内資金利益(貸出や債券の利息収入など資金運用から生じる利益)の減少トレンドの継続から、地域金融機関を中心に、低下傾向が続いた。
 加えて、株式や債券などの売買益が米金利上昇・株価下落といった市況変動の影響もあって伸び悩んだほか、後述するように、信用コストが低水準ながらも増加した。このように、売買益や信用コストなど、これまで基礎的収益力の低下を補ってきた収益押し上げ要因が働きにくくなった点が今期決算の特徴である。

3.信用コスト増加の背景

 次に、最近の信用コストの増加に注目する。貸出の規模に対してどの程度の信用コストが発生したかを示す信用コスト率(信用コスト/貸出残高)は、引き続き低水準ながら、地域金融機関を中心に、上昇に転じている(図表1)。
 内外景気の拡大局面が続くなかで、長らく低下基調が続いてきた信用コスト率が低水準とはいえ上昇に転じたことは、地域金融機関の収益力が低下している現状を考慮すると、注視すべき事象である。以下では、その背景について、現時点で利用可能なデータと、日本銀行が地域金融機関を対象に行ったアンケートおよびヒアリング等に基づき整理する。
 まず、地域金融機関の信用コスト率についてみると、足もと、業態や地域によらず、比較的幅広い先において上昇している。信用コスト率は、特定の大口与信先の突発的な経営破綻など、偶発的・一時的な要因によっても上昇し得る。しかし、アンケート調査の結果やヒアリングに基づく定性情報によると、金融機関の間では、そうした要因を取り除いた実勢としても信用コストは増加局面に転じた、との認識が拡がっている。
 そのうえで、足もとの信用コストの増加の基本的な背景としては、大きく以下の2点を指摘できる。第一は、金融機関との取引履歴が比較的長い、一部の業況不芳先における経営再建の遅れである。「3か月以上の延滞ないし「破綻懸念先」(今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる先)以下へのランクダウン(債務者区分の下方遷移)」として定義されるデフォルト率は、足もと若干上昇している。長期にわたる低金利環境と好景気のもとでも、構造調整や業況改善が進まない企業は一定程度存在する。また、銀行からの借入依存度が高い企業は、相対的に利益率が低く、また景気拡大が長期化するもとでも、その改善ペースが緩やかな傾向がある。

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最終更新:12/2(月) 17:47
東京商工リサーチ

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