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「韓国の若者100人」会ってみると…「階層移動の可能性高い」と答えたのは6人のみ

2019/12/2(月) 11:59配信

ハンギョレ新聞

[韓国の若者がもし100人だったら] 人口統計を考慮し選別した100人に深層インタビュー SKY大学生は2人…ソウル圏の4年制大学生は16人だけ 70人が「正当な努力の対価を受けられない」 81人が「学閥が重要だと思う」

 「世界がもし100人の村だったら」は、環境科学者であり人口問題専門家のドネラ・メドウス博士のエッセイを翻訳家の池田香代子が再構成した文章だ。63億人の世界の人口を100人が暮らす村に縮小すると、100人のうち52人が女性、48人が男性であり、90人は異性愛者、10人は同性愛者であり、銀行に預金を持っている人は「いちばん豊かな8人のうちの1人」といったかたちだ。違いと不平等、資源の偏重状態を理解し、隣人を愛そうというメッセージが込められている。ハンギョレはこれを若者談論に借りて「韓国の若者がもし100人だったら」という仮定のもと、地域や性別、学歴と学閥などに分類した若者100人を深層インタビューし、地域格差と学閥の序列、不平等の問題を探った。

 韓国の若者とは「ソウル圏内、4年制大学生」をいう。主流は「SKY」(ソウル大、高麗大、延世大)の大学生。彼らの言葉が「最近の若者たち」の見解になる。韓国の入試とは、この大学がどのような選考で新入生を選ぶかを指す。彼らの図書館の貸出本の順位は20代の読書のトレンドになる。あげくの果てに、彼らが大学を退学すると新聞1面のトップ記事で紹介される。韓国で形成された「若者」という象徴は、誰かを過剰代表したり過小代表したりする単語に過ぎない。

 「関心の偏り」を示す代表的な例が「チョ・グク事態」だった。序列化した大学の頂点にある一部の大学生の発言は、連日新聞やテレビ放送を一色にした。ソウル大学と高麗大学の学生たちがチョ・グク前法務部長官の娘の「スペック慣れあい」疑惑に対して怒ると、これはそのまま「20代の怒り」として報道され、その怒りを説明するキーワードは「能力によって正当に順位をつけて差別してほしい」という意味の「公正」になった。この「公正」というキーワードは、公論化過程まで経て苦心してつくった大学入試制度の再編案を1年で覆す威力を発揮した。マスコミは11月28日、教育部が発表した「大学入試制度の公正性強化案」がソウル所在の16校の大学を対象としたものにも関わらず、誰彼なしに「20年ぶりにまた戻ってきた修学能力試験」と一般化した。「韓国の若者がもし100人だったら」は、このような過剰代表から脱しようという問題意識と省察から始まった。

 核心は、「ソウル所在の4年制大学の学生、中位所得以上の家庭、男性」から脱すること。このため、2019年の韓国を生きる若者たちの姿を広角レンズで覗きこむことにした。全国で満19~23歳の若者100人に会い、深層インタビューと共にアンケート調査を進めた。100人は、人口住宅総調査(2015年)、韓国教育開発院の資料など各種統計を参考にし、彼らが進学した大学の類型と高等学校卒業後すぐに就職した比率などを考慮して分類した。地域と性別比も合わせた。大学の類型を主に考慮したのは、少なくとも現時点で若者たちの未来を分ける最も大きな要素の一つだと判断したからだ。ハンギョレはこの割合に沿って、非ソウル圏の私立大学29人、専門大学28人、ソウル所在の大学16人、非ソウル圏の国立大学10人、就職・自営業者10人、無職などその他7人に会った。このように韓国の若者を100人に縮小すると、SKYに通う「最近の若者」の割合はたった2人だった。私たちはこれまで割当がなかった98人の分を充足させることにして、SKY2人をハンギョレが会った100人から除外した。ただし、取材過程で会った24歳以上の若者18人はアンケートからは除外し、深層インタビューには追加した。

 100人に会うために、記者4人は全く知らない人に電話をかけて「100人のうちの1人になってほしい」と懇願した。交渉は断られることが多かったが、運良くつながれば荷物をまとめ、取材源のある地域に駆けつけた。4人が行き来した距離を合わせると1万キロメートルぐらいになる。そのようにして100人に会ってみると、予想と違う結果がいくつも出てきた。

 ソウルの4年制大学の学生16人のうち、半数は大手企業への入社を希望したが、非ソウル圏の4年制私立大学の学生29人のうち大企業を夢見る人は2人しかいなかった。100人のうち30人は努力による正当な対価が提供されていると思っていたが、70人はそうではないと答えた。6人は階層移動の可能性が高いと考えており、46人はまあまあと感じて、48人は可能性が低いと考えた。男性50人のうち、38人は結婚する考えがあり、16人は子どもを持つ計画がなかった。その反面、女性50人のうち結婚する考えがある人は30人で男性より少なく、子どもを持つ計画がない人は29人で男性の2倍に近かった。何よりも、100人のうち79人はチョ前長官の子どもの入試疑惑が不公正だと思っていたにも関わらず、100人のうち60人は、だからといって怒ってはいないと答えた。意外な結果だった。

 広角レンズで眺めた若者たちから、改めて地域格差が確認された。首都圏以外の地域に住む若者の多くは、故郷を離れて大都市で暮らしたいと言った。主に雇用と文化インフラの不足がその理由に挙げられた。特に、ソウルに親戚の家があったり、ソウルを行き来した経験のある若者たちは、各種のインフラが豊富な首都圏での生活をより切望した。韓国青少年政策研究院のキム・ジギョン研究委員は、これについて「若者の問題ではなく、地域問題と言わなければならない」とし、「地域のバランス発展ができなかった国家発展上の問題を地域の若者が抱えることになった」と指摘した。すべての資源がソウルに偏る状況は、首都圏と地域を垂直に分化させた。

 何よりも私たちは、「韓国の若者がもし100人だったら」を企画しておきながら、依然として先入観を持っていることを取材過程で数回にわたって確認した。非進学高卒者や首都圏以外の地域の大学、専門大学の学生は、絶望ばかりで未来を夢見ていないだろうと予想したためだ。しかし、「ヘル朝鮮」(受験戦争や若者失業率の高さなど韓国社会の生きづらさを表した造語)の「n放棄世代」(厳しい社会状況により就職や結婚など様々なことを諦める世代)の多数は、地域格差や学閥差別などに挫折して傷ついた姿を見せながらも、自分の未来が現在より良くなるだろうと楽観(100人のうち69人)していた。88万ウォン世代(2007年頃、非正規雇用の20代の平均月収88万ウォンから名付けられたワーキングプア世代)とn放棄世代論が述べた「不幸な現実に希望を失った若者」という特定の姿ばかりに注目しようとした慣性のせいだ。若者に挫折を抱かせる構造を変えることができれば、若さの弾力は早く回復するという希望を垣間見ていた。メディアがソウルの主要大学の若者たちを過剰代表する慣性のように、挫折ばかりを展示するのも違う形の一般化である。

 企画のために専門家に助言を求めた。専門家たちは、多様な若者に会うという趣旨は肯定的に評価した。しかし、6月に出版された『若者売り社会』を書いた新村文化政治研究グループのキム・ソンギ研究員は「いっそ『若者はいない』とするのはどうか」と提案した。彼は若者を単一の集団とみなす既存の若者談論に問題を提起してきた。「『韓国の若者がもし100人だったら』が世代内の分化を追求したというのは進んだ構図だが、根本的になぜ若者(というくくり)を捨てられないかに対する問題意識がある」とした。意味のある指摘だった。キム・ジギョン研究委員も「今の若者世代はあまりにも多分化しているため、世代内の傾向性を見出すのが難しい」と述べた。キム研究委員の言葉通り、100人が出した人それぞれの回答から、実際に有意味な傾向を引き出すのは難しかった。それは、私たちがこれまで「若者」というキーワードだけで世代を見て、その中の多様なアイデンティティを探ろうとしなかったせいもあるだろう。100人に聞いた深層アンケート調査の項目が一人あたり100個以上にも関わらず、記事で統計を鮮明に掲げないのもそのような理由からだ。

 もしかしたら、これまでの若者談論が説明し描いてきた若者は、すでにどこにもいないのかも知れない。

ソ・ヘミ、カン・ジェグ、キム・ユンジュ、キム・ヘユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:2019/12/2(月) 11:59
ハンギョレ新聞

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