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【教育旅行回復へ】本県理解の貴重な機会(12月3日)

2019/12/3(火) 9:26配信

福島民報

 本県観光の大きな特徴の一つである教育旅行の受け入れ学校数が、二〇一八(平成三十)年度は震災と原発事故前の九割まで回復した。積極的な誘致キャラバンやバス代助成制度などの成果が見られる。一方で宿泊者数は七割にとどまる。国全体の少子化や、学習目的ごとに小グループ化する旅行形態の変化に対応する難しさも示された。文化、自然に加え、災害からの復興など幅広い価値を提供できる学びの場として本県の魅力を磨き、学校側の積極的な選択につなげるべきだ。

 本県は多様な学習機会、受け入れ態勢などが評価され、教育旅行の人気県だった。県の調査によると震災前は約八千校、七十万人超の実績があったが、震災と原発事故が起きた二〇一一年には二千八十二校、十三万二千四百四十五人まで激減。原発事故に対する不安の軽減によって徐々に回復し、昨年度は七千四十七校、五十一万七千八百二十人となったが、行政や関係者による懸命な誘致活動が寄与したことは言うまでもない。

 調査結果が示す課題が二つある。十年前との比較で中学校、高校、大学の学校数が100%前後まで回復しているものの小学校はまだ53%だ。方部別に見ると被災地である浜通りへの入り込み学校数は76%にとどまる。

 訪問地の選択に保護者の意向が強い小学校に対しては、無理が生じない範囲で本県の現状を地道に説明し続けなければならない。

 被災地である浜通りには負の遺産が厳然として残るが、暮らしを取り戻す取り組みや新産業への挑戦といった前向きな部分は拡大している。県が提唱する「ホープツーリズム」によって光と影の現場を巡る経験は、課題に向き合い、人間的な成長につながる貴重な機会を提供できるはずだ。Jヴィレッジ(楢葉・広野町)や、来年七月開所予定の東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)などの施設も活用し、教育旅行の大きな流れにできるよう期待する。

 会津磐梯山エリアでは教育旅行の再興を目指す組織が七月に誕生した。南会津郡では受け入れ態勢を強化する協定が結ばれた。地元が宿泊増を実感し、事業として続けられるように支援するべきだ。

 民間研究機関による今年六月の東京都民の調査で、原発事故の放射線被ばくが県民の健康に影響すると考える人が46%もいた。まだ多くの都民が本県を訪れ、現場を知る経験をしていないためではないか。若い時代からの訪問が本県の理解を深める。心を込めて歓迎しよう。(佐久間順)

最終更新:2019/12/3(火) 9:26
福島民報

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