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「息子の死亡届を書く父の背中、忘れない」 笹子トンネル事故7年・追悼慰霊式

12/3(火) 9:32配信

毎日新聞

 9人が死亡した山梨県大月市の中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故から7年となった2日、現場近くで追悼慰霊式が開かれ、遺族は癒えぬ悲しみと、トンネルを管理する中日本高速道路への怒りを改めて口にした。【金子昇太】

【写真で振り返る】中央道・笹子トンネル崩落事故

 式では黙とうの後、事故で亡くなった小林洋平さん(当時27歳)の兄俊介さん(39)=前橋市=が遺族代表であいさつした。「なすすべなく息子の死亡届を書かされている父親の背中、生まれた時よりも小さな姿となってしまった弟に好物であった料理を作り、ひつぎの中に添えて見送る母の姿を、私は一生忘れることはできません」

 事故当時、幼かった俊介さんの子どもたちは小学生になり、昨年には第3子に恵まれた。「子供たちをかわいがってくれた洋平に成長した子供たちの姿を見せたかった」。一方、1枚1トン以上ある天井板が接着剤で固定されたアンカーボルトにつり下げられていた点を挙げ、「何の落下防止措置もとられていない状況が危険であることは容易に想像できたはず。なぜ点検を簡略化し、天井板撤去を先送りにしたのか」と中日本高速道路の対応に改めて憤りを示した。そして「事故の原因がどこにあったのかを明らかにし、社会全体の老朽化する施設の安全管理を見直すきっかけになってほしい。私たちと同じ悲しみを味わう遺族が出ないことを願う」と訴えた。

 ◇時とともに「会いたい」募る気持ち

 追悼慰霊式を前に、次女友梨さん(当時28歳)を亡くした石川信一さん(70)と佳子さん(61)=いずれも神奈川県横須賀市=が毎日新聞の取材に応じ、事故からの7年を振り返った。

 信一さんは「早かったような長かったような。時間の経過と一緒に気持ちが癒えるだろうと漠然と思っていたが、時がたてばたつほど、逆に『会いたい』という気持ちが募るし、『会えない』という悲しさがこみ上げてくる。もう取り返しがつかないので、命のはかなさを思い知るのが、今の私たちの日々です」と語った。佳子さんは「亡くなっても友梨のことをずっと思っている。何をしたら友梨が喜ぶだろうという思いが常にある」と話した。

 佳子さんは中日本高速道路が、点検を12年間延ばしたのはなぜか、延ばした末、詳細点検をしなかったのはなぜか――などを知りたいが、同社から納得いく回答は得られていないという。信一さんは「不都合な真実を明らかにしない」と怒りをにじませた。

 ◇笹子トンネル天井板崩落事故

 2012年12月2日午前8時ごろ、大月市の中央自動車道上り線・笹子トンネル内で発生。コンクリート製の天井板約340枚が約140メートルにわたって落下し、車3台が下敷きになった。9人が死亡し、3人が負傷した。県警は17年、中日本高速道路の事故当時の社長ら8人を業務上過失致死傷容疑で書類送検し、甲府地検は18年、同容疑で刑事告発された2人を含む10人全員を不起訴処分とした。遺族は同年、処分を不服として甲府検察審査会に審査を申し立て、検察審査会は今年7月、当時の点検担当者2人を不起訴不当、残り8人を不起訴相当と議決した。甲府地検が点検担当者2人について再捜査している。

最終更新:12/3(火) 9:32
毎日新聞

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