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King Gnu 猛スピードで進化を遂げる彼らのプレミアムなツアーファイナルを振り返る。

2019/12/3(火) 19:01配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

King Gnu Live Tour 2019 AW
2019年11月26日 Zepp Tokyo

【画像】King Gnu オーディエンスを熱狂に導く

King Gnuの勢力は、日々、猛スピードで拡大している。今年1月にメジャー・デビューアルバム『Sympa』をリリースした後、行なったKing Gnu One-Man Live Tour 2019“Sympa”は、最大規模のオール・スタンディング会場のひとつ、新木場STUDIO COASTからスタートし、同じSTUDIO COASTでファイナルを迎えた。その際、特徴的だったのは、オーディエンスの期待の大きさだった。開演直前には、信じられないほどの大歓声が上がった。そしてKing Gnuは、その巨大な期待に見事に応え、素晴らしいライブを繰り広げたのだった。

今回の「King Gnu Live Tour 2019 AW」は、全国9か所13公演。そのファイナルをZepp Tokyoで迎える。いつでも武道館クラスを出来る勢いをもって周るライブハウス・ツアーは、オーディエンスにとっては願ってもないセッティングで、当然プレミアム・チケットとなった。それだけに開演前から会場は異様な熱気をはらんでいて、フロアはもちろん、2階の立見スペースまでをぎっしり埋めたオーディエンスたちは、これから始まる最高のライブを待ちかねている。暗転になり、ステージから大量のスモークがフロアに押し寄せると、STUDIO COASTをはるかに上回る怒号のような歓声がZepp Tokyoを震わせたのだった。

常田大希(Gt, key, Vo)、勢喜遊(Dr,Sampler)、新井和輝(B)、井口理(Vo,key)の4人のメンバーが、ライトを浴びたスモークの中を、シルエットになって次々に浮かび上がる。常田のノイジーなギターがうなりを上げ、勢喜がハイハットでカウントを出して、そのままへヴィーなリズムを刻み出した。1曲目は「飛行艇」だ。常田のザラザラした声と、井口の澄んだファルセットがユニゾン(オクターブ違いで同じメロディを歌う)で響き、それをスリリングなビートが包み込む。King Gnuのトレードマークとも言うべきサウンド構成が、いきなり全開になる。その正面突破のパワーは凄まじく、さすがにファイナルと思わせる威力があった。オーディエンスたちも負けてはいない。サビの♪命揺らせ♪というフレーズのシンガロングが起こる。ライブは始まったばかりなのに、アンコール並みの盛り上がりとなった。

「飛行艇」が終わると、すぐに常田がグルーヴィーなギターのコード・カッティングに入る。オーディエンスからまたまた大歓声が上がる。「Sorrows」だ。勢喜の切れの良いドラムがバンドの背中を押す。パワー全開の単刀直入なオープニングに、貫禄すら感じる。3曲目の「あなたは蜃気楼」は、ライブでの人気ナンバー。ねじれたシンセサイザーのイントロに対して、オーディエンスは拳を振り上げて「オイオイ!」と応じる。ディストーションのかかった常田のボーカルが、会場を異世界に引き込む。やがてオーディエンスたちは♪あなたは蜃気楼♪というシュールな歌詞を合唱し始めたのだった。

前回のツアーに比べて、明らかに演奏のスケールが大きくなっている。エッジーな部分を強調しているように感じたアレンジそのものは変わっていないが、リズムの芯になる部分を前面に出し、尖っているところを歌の背後に隠す。そのことでメロディがわかりやすく伝わってくるようになり、さらに妖しさが増している。

それに応えてオーディエンスたちが、メロディもリズムも複雑なKing Gnuのナンバーを一緒に歌って楽しんでいるのも驚きだった。今年に入ってライブの回数が大幅に増え、そこで出会ったオーディエンスたちとの交歓を経て、King Gnuのライブ・サウンドが最初の完成形に辿り着いたのではないかと思う。だとすれば、僕は今、貴重な瞬間に立ち会っていることになる。しかし、この後、King Gnuは予想を越える進化の様相を見せたのだった。

「Vinyl」は、勢喜のドラムソロから始まった。メリハリの効いたプレイの中に、スリルたっぷりのスラップ風ドラムが織り込まれると、オーディエンスが賞賛の声を上げる。そして常田のあのギター・リフが始まると、会場の盛り上がりが爆発。切ないメロディを持つリフと、独特の連続したシンコペーションに、オーディエンスたちは思い思いに身体を揺らす。

King Gnuの名を一躍高めたこの「Vinyl」は、スタイリッシュなMVの効果もあって、敏感なリスナーたちの話題をさらった。それから2年と少しが経って、Zepp Tokyoに集まった音楽ファンの心の底まで浸透している。このポップ・ミュージックの奇跡に感謝するように、井口がキーボードを離れ、ステージのセンターに出て来て歌う。常田は尖ったギター・ソロで、新井はステップを踏みながらベースを弾いて感謝を表わす。再度の印象的なギター・リフで「Vinyl」は終わった。

井口が「新曲、やるぞ~!」と叫んで、常田が家入レオのアルバム『DUO』に提供した「Overflow」へ。ディレイのかかったシンセとギターに、新井のシンセベースが絡むサウンドが、今までにない美しさを醸し出す。切なく響く井口のボーカルに呼応して、常田の弾いた入魂のギター・ソロがとても感動的だった。

『イノセンス 冤罪弁護士』の主題歌「白日」では、井口のささやくようなボーカルが、ライブの盛り上がりの中では特別な意味を持つ。会場がそれにシーンと聴き入った後、常田のエモーショナルなギター・ソロのバックで新井のベースが大暴れする。このサウンドのダイナミクスが、King Gnuの魅力の根源にある。このライブを通じて、常田と井口の二人が多くの曲のボーカルを取るが、特に井口の繊細な声と狂気を帯びた演奏の対比が、常田の狙う世界観に無くてはならないものなのだ。そのコントラストが、ライブにおいても一層効果的に働き、オーディエンスを熱狂に導いていた。

次に驚かされたのは、アコースティック・コーナーだった。ミディアムバラードの名曲「The hole」で会場が落ち着いたところで、4人がステージの前に並ぶ。アコースティック・セットなので勢喜はカホーンを、新井はウッドベースを持ってはいるが、常田はアメリカン・アコースタソニック・テレキャスターを抱えている。

このギターの使い方が、繊細で味わい深いのだ。それまでの荒々しさとは打って変わって、軽々と洗練されたコードをストロークする。「Don’t Stop the Clocks」で、常田のギターは井口のボーカルを活かしきっていた。また「McDonald Romance」では♪今を鮮明に焼き付けて♪という歌詞にぴったりの刹那的な演奏で観客を引き込む。コーダの難しいメロディをオーディエンスが歌い、バンドと一緒にリタルダントして終わったのが素敵だった。こんなアコースティック・コーナーは滅多にない。

「今日、ファイナルだって。びっくりした。大変なツアーでした」と井口がユーモラスなMCで会場を和ませる。ここからライブはエンディングに向かって突っ走る。 

勢喜の繰り出す重いファンクビートから「Tokyo Rendez-Vous」がスタート。常田が例によってトラメガを持つと、オーディエンスは大喜びで迎え撃つ。常田独自の癖のある歌が危険な匂いを発する。常田はギターでも危ない音を出して、オーディエンスを再び非日常の世界に連れて行く。バンドの強烈なアジテーションに、Zepp Tokyoがカオスになっていく。この「Vinyl」を含むアルバムのタイトル曲「Tokyo Rendez-Vous」は、King Gnuの代表曲として彼らのライブを牽引してきた。

曲の持っているパワーが発揮されたのは、「Prayer X」だった。常田のギターのみのバックで常田と井口が歌い始めると、非常に難しいメロディをまたしてもオーディエンスが一緒に歌い出す。曲が普通のテンポに入ると、会場全員が踊り始める。完全に一体化した会場は、いよいよヒートアップ。「Flash!!!」では観客も新井も飛び跳ねる。本編ラストの「Teenager Forever」は、つい先日からソニーのイヤフォンのCM曲として流れている曲。アッパーなシャッフルのリズムのダンスチューンで、井口がジョニー・ロットン風のパンッキシュなアクションで客席を煽る。エネルギッシュなエンディングとなった。

アンコールで登場したメンバーの中で、まず井口が「アンコール、ありがとうございます」と口火を切る。続いて常田が話し出す。「本日はお知らせがあります。来年、1月15日にアルバムが出ます! ツアーも2月からやります。東京は代々木第一体育館2daysです。大きいですね」と言うと、井口が「僕より大きいですよ」と反応する。この呼吸が面白くて、オーディエンスが笑顔になる。「ぜひ来てください。じゃ、あと2曲やります。King Gnuでした」と常田。

アンコールは、この10月にデジタル・リリースされた「傘」から。苦味の混じったポップチューンで、King Gnuの持つ曲のバリエーションの豊富さに舌を巻く。

「ツアーの最後を楽しく迎えられて、よかったです。最後にみんなで『サマーレイン・ダイバー』を歌って帰りましょう」と井口が明るく言うと、オーディエンスからファイナルを祝うように歓声と拍手が湧く。きれいなコーラスから始まる「サマーレイン・ダイバー」は、大団円にふさわしいスケールの大きな曲で、明るくてシンプルなメロディに不気味な諦めが混じる。King Gnuの前身バンドSrv.Vinci時代から在るナンバーだ。希望と絶望の混在をユニークなスタイルで描き出すこのバンドの良さを、改めて感じるフィナーレとなった。

2020年のKing Gnuは、1月15日にニューアルバム『CEREMONY』をリリースし、2月29日の福岡マリンメッセを皮切りに、アリーナクラスを含む7都市12公演が予定されている。まだまだ進化の余地を残すKing Gnuに、来年も期待したい。

文 / 平山雄一 撮影 / 小杉歩

King Gnu Live Tour 2019 AW
2019年11月26日 Zepp Tokyo
セットリスト

1. 飛行艇
2.Sorrows
3.あなたは蜃気楼
4.ロウラヴ
5.It’s a small world
6.Vinyl
7.Overflow
8.NIGHT POOL
9.白日
10.Slumberland
11.Vivid Red
12.Hitman
13.The hole
14.Don’t Stop the Clocks
15.McDonald Romance
16.Bedtown
17.Tokyo Rendez-Vous
18.Prayer X
19.Flash!!!
20.Teenager Forever
<アンコール>
21.傘
22サマーレイン・ダイバー

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最終更新:2019/12/3(火) 19:01
M-ON!Press(エムオンプレス)

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