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「私だって苦手。だからこそ価値を再定義したい」30歳女性CEOが、ハエで“世界を救う”と決めた理由

2019/12/3(火) 7:40配信

ハフポスト日本版

日頃から毛嫌いしているハエが、今後は世界を救う救世主になるかもしれない──。
【小笠原遥/ハフポスト日本版】

深刻な食糧危機や環境問題を、イエバエを用いた独自のテクノロジーで解決に導こうと邁進するベンチャー企業がある。2016年に創業した株式会社Musca(ムスカ)だ。

大手総合商社や銀行と提携し、さらには経済産業省が支援するスタートアップの1つに選定されるなど、2019年は飛躍の年となった。

その代表取締役CEOが、流郷綾乃(りゅうごう・あやの)さん。2017年から経営に参画し、2019年4月に現職に就いた。

昆虫テック企業のCEOという立場でありながら、実はハエを含む虫が“苦手”なのだという。そんな彼女が、なぜハエで“世界を救う”と決めたのか。話を聞いた。

ムスカのビジョンは、2025年から30年ごろに訪れると予想される爆発的な人口増加によって生じる肉や魚といった動物性タンパク質の枯渇を、イエバエを使った独自の循環システムの構築することで解決しようというもの。

元々はソ連(現・ロシア)が火星への有人宇宙飛行計画の一環で行ってきた、約45年以上に及ぶ選別交配を重ねたイエバエの幼虫を用いて、家畜が出す排せつ物や有機廃棄物(ゴミ)などを1週間で堆肥化し、さらにその幼虫を乾燥させることで飼料を生成する。

生ゴミや糞尿の肥料にするには、通常、早くても1カ月以上はかかるとされるが、選別交配によってサラブレッド化されたイエバエの幼虫を使うことで1週間という速さで処理できる。

環境に最大限配慮し、かつ一切の無駄のない循環システムを作り出している。

「ハエのネガティブなイメージは払拭できないと思っている。でも、それでいい」

「虫が苦手なのに、よくハエを活用した事業に向き合えるなぁ。何故なんだろう?」

私が抱いた率直な疑問を流郷さんに投げかけてみると、意外な答えが返ってきた。



私だって昆虫は苦手。その辺を飛んでいるハエに対しては、「鬱陶しいなぁ...ハエたたき、ないかな?」と正直思いますよ。抵抗感もありますし。(笑)

ただ、私は虫が苦手でよかったなと思っています。だって、もし虫を好きだったら、この事業に対して、なんの違和感も感じないわけじゃないですか。

大多数の人は、「ハエの幼虫を食べた鶏って実際どうなの?」って考えるだろうし、世間の人が持つハエへのネガティブなイメージは、私も同じように持っている。

そのイメージはまだまだ払拭できないと思っています。でも、それでいいかなと感じています。

──ちょっと諦めが入っているようにも聞こえますが...その意図はどういうことなんですか?



この事業を通じて目指すのは、ハエ自体のイメージを払拭するのではなく、ハエの価値を“再定義”することなんです。

ハエに人々がネガティブなイメージを持っていて、それが変わらないとしても、もしハエが作った飼料を食べた鶏が良質でさらに美味しいと感じたら、ハエに新たな価値を感じることができると思います。

そして教育でも、未来を生きる子供たちに、ハエを通じて「地球や自然界がどのように循環しているのか」を伝えることができる。

子どもが抱く、「なぜ、ハエはゴミに集る(たかる)の?」という素朴な疑問も、「ハエがゴミから肥料を作っていて自然界における役割がちゃんとあるからだよ」と教えられれば、子供たちに環境のこともゴミのこともしっかりと伝えることができる。

きっとそういう風に考えるのは、2児の子どもを育てる母だからかな、と思いますけど。

お母さんじゃなかったら、きっとこの会社の代表にはなろうと思わなかったかもしれないです──。

やっぱり、安心・安全であることが不可欠な“食”というものに対して、常日頃から、母として子どもの健康を考えるからこそ、これからの時代は環境にも優しくて、質の良いものを食べてもらいたいと思うからですよね。

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最終更新:2019/12/3(火) 7:40
ハフポスト日本版

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