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「車椅子になったことで腐っていたら」 当事者だから悩んだ根本宗子さんの舞台

12/3(火) 11:02配信

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12月13日から新国立劇場で初日を迎える舞台「今、出来る、精一杯。」。思春期の怪我によって車椅子生活を余儀なくされた女性とヒモの彼氏、そして彼女たちをとりまく登場人物たちの様々な愛や死を描いた作品です。
脚本、演出をつとめるのは、月刊「根本宗子」主宰、劇作家の根本宗子さん(30)。体育祭でのケガがきっかけで患った「外傷性大腿骨頭(だいたいこっとう)壊死症」のこと、劇団10周年の今思うことなどについてお話してくれました。

故・十八代目中村勘三郎さんに委ねた決断

不慮の事故によって患った国指定の難病「外傷性大腿骨頭(だいたいこっとう)壊死症」。大腿骨頭の壊死を止めるためのいくつかの手術のうち、どれを選ぶかを決めきれずにいた母と私。
「再びスキーができようになるかもしれないけれどリスクを伴う手術」と「歩ける可能性がより高い手術」のどちらを選ぶのか、最後の大事な決断を、家族のように心配してくれていた中村勘三郎さんのコイントスに委ねた……。
重大な決断をある種の「あそび」で決めたようなものなわけですが、その時の勘三郎さんは、私たち以上に真剣にコインに願いを込めていたように見えました。とても「あそび」だとは思えなかった。その姿が心強い後押しになりました。

この芝居を車椅子の方が観たらどう思うだろう

19歳で劇団を立ち上げて10年。ずっと芝居を作ることでいっぱいいっぱいだったけれど、演劇を観に来るか来ないかは別として、病気の話を積極的にしていくことで、こんなことをやっている人がいる、というのを知ってもらうのも大事かなと思う時期になってきました。

車椅子の女性が登場する本作「今、出来る、精一杯。」の脚本を書いた23歳当時は、自分の思いを書くことに夢中でしたが、3度目の上演をできることになって、だいぶ作品を俯瞰して見られるようになったと思います。
同じような境遇の方に観てほしいなぁとか、車椅子の方がみ観たらどう思うんだろうと考えながら演出をしています。

ただ、「こういう気持ちになってほしい」みたいな明確なものはありません。自分が想像もしていない部分に客席の誰かが救われているというのも面白さだと思いますし、あまり「感動させたい」みたいな計算をして作らないようにはしています。

作品に登場する車椅子の女性は、性格的にいやな部分も持っています。「私が事故に遭ったあと、腐っていったらああいう風になっただろうな」という姿をイメージして書きました。

私が腐らずいられたのは様々な人の助けや言葉や協力がありました。
そして、勘三郎さんのように、いくらだってその場にあぐらをかいていてもいい立場にいながら、全くあぐらをかかず、常に新しい演劇や歌舞伎を作ろうとしているような方が身近にいたことはかなり幸運だったと思います。
怪我をして、歩けなくなるかもしれないという状況で何もしないでいるのが良いことではない、「今、自分が何をやりたいのか」をしっかり考えなくてはいけないし、腐っている時間はもったいないと思えました。

ある時、病院で勘三郎さんを見かけたご老人たちが手を合わせて拝んでいたんです(笑)。まるで仏様。会えただけで元気がでると思わせる人。一人一人と握手して「ありがとう」ってフラットに接している姿を見た時に、いまだに努力をおこたらない姿勢に強く心を打たれました。

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最終更新:12/3(火) 11:02
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