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「脳の再生」という夢の実現まであと一歩。バイオベンチャー・サンバイオの挑戦

2019/12/4(水) 8:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

脳も無数の細胞からなる“臓器”の一つである以上、再生医療の発展によって、脳を再生させることもできるのではないだろうか ── 。

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2001年にアメリカで創業したバイオベンチャーのサンバイオは、傷ついた脳を治療する夢の治療薬の実現まで、あと一歩のところまで迫っている。

後遺症からの回復を実現する夢の治療薬

脳梗塞や脳損傷をはじめ、脳疾患になるとリハビリを行うことで運動機能の回復を図る。しかし、脳疾患の発症からある程度時間が経過してしまうと運動機能の回復は鈍くなり、多かれ少なかれ後遺症が残る。

「再生細胞薬『SB623』を使うと、患者の運動機能が一定程度回復するとみられています。今後の研究によって、効果をさらに大きくすることも目指していきたいと思っています」

そう語るのは、サンバイオ社長の森敬太氏だ。森社長によると、SB623を投与することで、まったく歩けなかった人が少し歩けるようになったり、会話できなかった人が話せるようになったりという例があるという。

欠損を補うのではなく、再生を促す「再生細胞薬」

サンバイオが開発する新薬は、人の骨髄から採取された間葉系幹細胞を元に作成された「再生細胞薬」と呼ばれるものだ。

間葉系幹細胞はさまざまな細胞に変化(分化)できるiPS細胞やES細胞などと同じ「幹細胞」の一種。しかし、万能細胞とも呼ばれるiPS細胞やES細胞と比べて、間葉系幹細胞の分化する能力はさほど高くはない。それでも、骨や血管などをはじめ、体を構成する多くの細胞に分化することが知られており、iPS細胞やES細胞が登場する前から長年研究が続けられてきた。

「再生医療」と聞くと、iPS細胞などを培養して欠けた部位を補うような治療をイメージする人が多いかもしれないが、SB623は失われた神経細胞の代わりになるわけではない。

脳梗塞や脳損傷などで後遺症が残るのは、脳の神経細胞が失われてしまうためだ。大人の脳は、子どもの脳に比べてほとんど成長しない。だから、大人になってから脳についた傷は治らない ──。これは100年近く信じられてきた医師たちの常識だった。

しかし1998年、慶應義塾大学医学部教授の岡野栄之博士(サンバイオ創業科学者)によってその常識が打ち破られる。大人の脳の深部にも増殖可能な神経細胞の素(神経幹細胞)が存在していることが明らかにされたのだ。

森社長は、SB623の可能性を次のように語る。

「SB623を脳の損傷部に注入すると、脳の深部にある神経幹細胞を引き寄せる効果があります。SB623の投与をきっかけに神経幹細胞が損傷部に集まり、細胞分裂を繰り返す。結果的に、脳梗塞や脳損傷で失われた神経細胞が再生し、脳機能の回復が見込めます」

つまりSB623は、神経細胞の代わりになるのではなく、神経細胞の増殖を促すはたらきをすることで、脳を再生させるのだ。

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最終更新:2019/12/4(水) 18:01
BUSINESS INSIDER JAPAN

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