ここから本文です

テレビCM制作現場の「お金の管理」がデビットカードで劇的に変化、会社も社員もうれしい活用法とは? 

2019/12/4(水) 12:00配信

MONEYzine

■テレビCMの制作現場は「現金」が主流

――広告制作会社であるティー・ワイ・オー(以下、TYO)の作品は、テレビCMやポスターをはじめ「これ見たことある! 」と思う人が多いのではないでしょうか。今日はクリエイティブの現場でのキャッシュレス化についてうかがいたいと思います。

西村:私たちは広告制作会社として、テレビCM、オンライン動画、デジタルコンテンツ、ポスターをはじめとするグラフィックなどを制作しています。このうち、テレビCMの制作本数は年間850本以上にものぼります。

 TYOは2017年にAOI Pro.と経営統合し、AOI TYO Holdingsの一員になりました。私は昨年までプロデューサーとしてテレビCMの制作現場にいたのですが、今年から業務管理本部に移りました。この部署には、忙しい制作現場の社員をサポートしながら、これまでとは違う働き方や管理の仕組みを構築するというミッションがあります。現場と管理部門の橋渡しや調整をする立場なので、現場のことをよくわかっている人間が必要だったのです。

株式会社ティー・ワイ・オー
業務管理本部 副本部長 執行役員 西村秀政氏――制作現場の方は「いいものを作りたい」という気持ちが強いと思うので、どのように働き方を変えていったのか非常に興味があります。

西村:働き方改革といっても、何かひとつのことをやっただけで劇的に変わるわけではないんですよね。ひとつひとつ積み重ねていって少しずつ負担を減らしていかないと達成できない。そういう実感が会社側にありました。

 私たちが「楽天銀行ビジネスデビットカード(JCB)」を導入したのも、その一環です。というのも、テレビCMの現場というのは、他業界の方は想像もつかないぐらい現金が使われている世界だからです。ロケに行ったら、宿泊代、レンタカーの料金、飲み物などの細かい買い物まで常にお金が必要で、現金しか使えない場合も多々あります。だから、プロデューサーとプロダクションマネージャーはいつも大量の現金を持ち歩いていました。

――そうなるとお金の管理が大変ですね。

西村:プロデューサーは法人のクレジットカードを持っていて、海外ロケではカードで宿泊代を払うのですが、国内ロケはほぼすべて現金。それが普通でした。

 一方、クレジットカードを渡すことができない社員には仮払いをすることになります。その金額は年間で5億くらいになります。400名以上いる社員の大半が制作部なので、必要な金額をそのつど400人に渡すわけですが、お金をなくしたり、領収書をなくしてしまったりということも起きる。そういう問題というのは、結局、すべて現金が原因だよねというところから、現金を持ち歩くのをやめよう、キャッシュレスにしようという取り組みが始まりました。

■デビットカードの機動力

――デビットカードの導入によって、どのようなメリットがあったのでしょうか。

西村:クレジットカードとデビットカードは、使う側から言うと実はあまり変わらないのですが、管理側から見るとカードの機動力が違いましたね。クレジットカードの場合、使える金額の上限が200万円だったとすると、その額を上げたいと思っても簡単には上げられません。カード会社に申請して、2~3日待って審査が通るという手続きを踏まなければいけない。

 デビットカードの場合は、社内にいる管理者が金額をいつでも変えられます。現在では約400人いる制作部門の社員全員にデビットカードを渡していますが、職位によって金額の上限設定を変えています。

――上限金額は、どのように決めるのでしょうか。

西村:過去のデータを見れば、ひと月にこれくらいあれば不便はないだろうという金額がわかります。さらに、万が一の事故が起きたり、不正に利用されたときのことも考慮して、ある程度の制限をかけてその範囲内で使ってもらっています。

 オンラインで明細をダウンロードして、毎日基幹システムに精算書の明細として利用日、支払先、金額を取り込んでいるので、領収書と突合するのも簡単になりましたし、領収書がない場合もすぐに再発行してもらえます。たった1枚の領収書でも、1万円の領収書をなくしたら大変です。

 会社のクレジットカードを社員に渡す場合は、どう使われるのか不安がありますが、デビットカードの場合は、管理部門が金額設定から、何かあったときの利用停止、明細の確認もすぐできるので対処しやすくなる。ガバナンスという意味でもメリットは大きいと思います。

――実際にサービスを使ってみようと考えてから、導入までどのくらいかかったのでしょうか。

西村:検討したのは1か月ぐらいでしたね。実は、デビットカードをビジネスで使える法人向けサービスというのは多くないんです。一番大きかったのは枚数制限でした。他行では発行できるデビットカードは数十枚という感じですが、楽天銀行の場合は上限が9,999枚なので、社員全員をカバーするだけの枚数を確保できる。

 2017年の秋ぐらいに話を始めて実際にカードを発行して動きだしたのは、2018年の4月ぐらい。その間に社内システムの改修も行い、楽天銀行の協力を得て、データを当社のシステムに取り込めるフォーマットにしてもらいました。準備が整ったところで、まず一部門だけでテストしました。30~40人の部署でテスト運用してみて、大きな問題もなく使えることを確認してから全社に展開していきました。

――全社で導入した後にわかったことなどはありますか? 

西村:最初に指摘があったのは「デビットカード」というネーミングですね。タクシーで支払うときに「デビットカード使えますか? 」と聞くと「使えません」っておっしゃる運転手さんが多かった。

――そんなことがあったんですね。

西村:でも、普通に「カードでお願いします」と言えば大丈夫(笑)。私たちはタクシーを本当によく使います。デビットカードを導入してからは、現金を使うのは電車賃とか自動販売機ぐらいになりました。

■管理する側・される側のコストを下げることが大切

――現金を使うシーンが減っていくと、データ化される部分が大きくなってくると思うのですが、管理側ではどのようなメリットがあるのでしょうか。

西村:きちんとしたアウトプットデータが一律のフォーマットで上がってくるので集計しやすいです。これまでは仮払いをすると、20万円渡した後、そのうちいくら使ったかは精算が終わるまでわかりませんでした。デビットカードの場合は、使った分のデータがどんどん上がってくるので資金使途が明確になります。

――最近ではデジタルトランスフォーメーションということがよく言われるのですが、業務管理本部では日頃から便利なサービスについて情報収集しているのでしょうか。

西村:今までのやり方を守ることにはこだわっていないので、メリットのあるものは検討して採り入れていこうというスタンスです。現場に導入しているツールでいうと、5年くらい前から出退勤をGPSで管理しています。朝からロケ現場に直接向かう場合、スマートフォンで出勤の手続きをします。打刻するとGPSでその人がいる場所も記録される。夜、編集スタジオから帰る場合も、作業が終わったときにスマートフォンで打刻すれば、その時間に終わったことがわかる。

――ツールを使って、管理する側・される側のコストを下げるというところがポイントですね。

西村:現場のやり方や働き方というのは、変えようと思ってもそう簡単には変わりません。毎日決まった時間に会社に行くという業界でもないので、そういう環境にマッチした便利なツールがあれば試してみようと思っています。

■これからは会社でもキャッシュレス化が進む

――あらためて会社のお金に関することで、大きく変わったなと思うことはありますか。

西村:10年前は現金を下ろしてきて一人ずつに渡したり、経費振込専用口座を開いてもらって銀行振込をするという作業を行っていました。今ではそういう作業がなくなったので、「お金の管理」という意味で劇的に変わりましたね。

 見直すべきところはほぼすべて着手しているので、まだ形になってない部分もありますが、とにかく積み重ねしかないなと思っています。これをやれば1日のうち30分削れる、1時間短縮できる。そういうことの積み重ねですね。私は現場にいたので、みんなが納得できるような形で浸透させていくにはどうしたらいいかを日々考えていますし、出てきたアイデアは必ず検証して、メリットを探るようにしています。

――領収書の整理は毎月必ずその作業に何分かとられますし、何百人という社員が年間どのくらい時間を費やしているかを考えると、「積み重ねが大切」というのはまさにその言葉の通りだと思います。

西村:私も会議室のテーブルに領収書を全部並べて、日付ごとに分けて……というのをやっていましたが、一番イヤな仕事でした(笑)。その作業を簡略化することができれば、制作現場の社員にとってもいいことだし、会社にとっても管理しやすくなる。両方にメリットがあるからいいんですよね。どちらかに負担がかかると摩擦が起きてしまう。これからは法人でもキャッシュレス化が進んでいくんだろうなと思います。

■楽天銀行に聞く、デビットカードのこんな使い方

 TYOでのキャッシュレス化の取り組みは、働き方改革にもつながるものでした。ここからは、楽天銀行 法人営業本部 法人営業推進部の尹寿復氏に、デビットカードのさらなる活用事例についてうかがいます。

Q:デビットカードは、他にどのような業種で活用されているのでしょうか。

「デビットカードを活用している業界はいくつかあります。たとえば飲食チェーンです。店舗では小口の現金の支払いが発生するのですが、そうした現金は店長会議で封筒に入れて渡すことが多かった。その手間をかける代わりに、各店舗にデビットカードを置くことを検討するケースが増えています」

「もうひとつは宿泊業です。ホテルや旅館では部屋ごとに電気代や水道代がかかります。それなりの規模になると、光熱費は月1,000万円にものぼります。『楽天ビジネスデビットカード(JCB)』で決済すれば1%のキャッシュバックがある。1か月の光熱費が1,000万円だとしたら、ひと月10万円、1年で120万円が返ってきます。カードを使うだけで経費削減につながるのです」

「もうひとつは広告です。フェイスブックやグーグルに広告を出稿している会社は多いと思いますが、たとえば広告料金が月500万円以上になったとき、法人のクレジットカードでは決済できなかったりする。そうなると広告運用に支障が出る場合もあります。デビットカードは、法人口座にお金があればその範囲で決済可能です。また、IT企業ではサーバー代の支払いなどにも使われています。ゲーム会社の場合は、サーバーやAWSのようなクラウドサービスの支払いが多く発生するからです」

Q:インタビューではデビットカードの認知度が低いという話もありましたが、あらためてデビットカードの特徴について教えていただけますか。

「クレジットカードとデビットカードを比較するとわかりやすいと思います。クレジットカードは後払いで、月間の利用限度額が決まっています。もちろん事前審査が必要です。一方、デビットカードの場合、支払いは原則即時。利用限度額は口座残高の範囲内です。また、クレジットカードのような審査はありません」

Q:デビットカードについては、不正利用や紛失時のことなど、セキュリティについて心配する声もあると思います。

「当行のデビットカードは管理画面で1日あたりの限度額を1,000円単位で設定可能です。紛失した場合も、会社に連絡すれば管理担当者が直接カードの利用を止められます。心配であれば、普段は利用金額を基本ゼロ円に設定しておいて、出張に行くというときだけ限度額を5万円にする。そして出張から戻ってきたらゼロ円に戻す。そんな使い方もできます。限度額を低めに設定していても、出張先で顧客と食事をすることになったと会社に連絡すれば、担当者がすぐに金額を上げることができるし、カードで決済した瞬間に管理部門にメールで通知が届きます」

Q:法人にとって、その他にもメリットはありますか。

「楽天銀行では、デビットカードはすべてキャッシュレス・消費者還元事業の対象です(実施期間:2019年10月1日~2020年6月30日)。原則として、購買金額の5%、フランチャイズチェーン傘下の中小・小規模加盟店等では2%の還元率になっています」

「私たちは店舗を持たないネット銀行なので、現金の管理を一切行っていません。そのため、店舗運営や現金管理にかかるコストを顧客に還元することができます。振込や海外送金の手数料が安いことはもちろん、サービスの使いやすさやスピードについてもネットならではの品質で提供できる。その点を、多くの事業主、経営者の方々に知っていただけたらと思います」

最終更新:2019/12/4(水) 12:00
MONEYzine

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事