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さユり×『僕のヒーローアカデミア』、そこに起きた化学反応とは? 「航海の唄」がただのアニメタイアップには終わらなかった深い意味

2019/12/4(水) 19:01配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

日々息苦しさを感じながら過ごす人々の心情に共鳴する楽曲を紡ぎ、若年層を中心に絶大な支持を集めている2.5次元パラレルシンガーソングライター、“酸欠少女”さユり。彼女が約1年ぶり、通算7枚目のニューシングル「航海の唄」を完成させた。

【画像】TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期EDテーマを歌う、さユり

TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期のEDテーマとして書き下ろされた本楽曲は、彼女がデビュー曲「ミカヅキ」以来持ち続けてきた自身の歌いたいテーマを、これまでの活動を通して生まれた変化を反映させたうえで形にしたもの。『ヒロアカ』との化学反応によって引き出された、彼女の「いま」を切り取ったナンバーと言える。そんな本楽曲について本人に話を聞いた。

取材・文 / 北野 創(リスアニ!)
撮影(トップ画像)/ 山本マオ

「強くなくていいし、それでいいんだよ」という気持ちを歌いたいと思った

ーー さユりさんは『僕のヒーローアカデミア』のことをご存知でしたか?

さユり 私はいろんな能力を持っている人たちが出てくるお話が好きなので、タイアップのお話をいただく前から、原作の漫画は読んだことがありました。『ヒロアカ』は主人公のデクくん(緑谷出久)が、最初は「周りと比べて何も持っていない人」というレッテルを貼られて、そこからヒーローに向けて進んでいく姿に共感しました。

ーー デクは「無個性」として生まれて、後にオールマイトから「個性」を授けられてヒーローの道を歩み始めます。そんな彼のどんなところに、さユりさんは気持ちを重ねられたのでしょうか?

さユり 私は自分の声に自信がなくて、でも歌ってみたら「いい声だね」とか「あなたの歌に救われた」と言われるようになって。そこで初めて「私、歌っていいんだ」と思えたし、ここまで歌い続けてこられたところがあるので、そういう意味では、私の歌を聴いてくれる人たちに、自分が歌うことの可能性を授けてもらった感覚があるんです。それがデクくんに共感できるところです。

ーー デク以外にもお気に入りのキャラクターを挙げるとすれば?

さユり 特に理由もなく好きなキャラクターはツユちゃん(蛙吹梅雨)。見た目や雰囲気が好きなんです(笑)。あと、心操(人使)くんという、話しかけた相手を洗脳できる個性を持ったキャラクターがいるんですけど、その子が自分の個性に地味さを感じて、ちょっと陰のある性格になっている部分にも、自分が持っているものに自信がないところが、わかるなあと思って。

ーー そういった自分の「個性」を磨いたり、使い方を工夫することで、みんながヒーローとして成長していくところは、『ヒロアカ』の魅力のひとつですよね。

さユり そうですね。敵と戦うシーンでも、今の自分が相手よりも強くないからといってマイナスの気持ちでいると負けてしまうけど、自分の個性を信じることで突破口が見える、ということが描かれるじゃないですか。みんな信じることでしか進めない。だから「強くなくていいし、それでいいんだよ」という気持ちを歌いたいと思ったし、それは自分が歌っていきたいメッセージとも重なると思いました。

エンディングの映像を観て、ちゃんと『ヒロアカ』に投影できる歌詞になれたのかなって
ーー 今の言葉は今回の新曲「航海の唄」のサビのフレーズ“強さは要らない 何も持って無くていい 信じるそれだけでいい”にそのまま重なりますね。

さユり 今回の曲は、まず登場人物たちの勇敢な精神を音で表現したいという思いからイメージを膨らませていって、そこに合う言葉を選んでいくことで形になったので、自分で確信を持って書いたというよりは、感覚的に出てきた部分が強くて。

ただ、先ほどお話ししたような想いは心の中に積み重ねとして抱いていたので、サビのフレーズも曲に引っ張り上げられて出てきたんだと思います。自分でも曲が完成してから改めて「この部分は『ヒロアカ』のこういう部分に通じるかな?」と客観的に感じることが多かったです。

ーー この曲の歌詞で書かれる「自分自身を信じる気持ち」は、『ヒロアカ』第4期アニメの楽曲として聴いた場合、例えばデクや通形ミリオといったキャラクターの信念にも重なるように思いました。

さユり 誰か特定の登場人物を投影して書いたのではなく、色々な登場人物に重ねて聴けるものにしたいと思って書いたのでうれしいです。私はエンディングアニメの映像を観て、壊理ちゃんを歌詞と重なるように描写してくださっていたので、ちゃんと『ヒロアカ』に投影できる歌詞になれたのかなと思って、すごくうれしかったです。アニメのタイアップ曲は毎話ごとに聴こえ方が変わることがあって、自分でも意図しなかった喜びと出会うことが多いです。

例え弱かったとしても前に進みたい気持ちは、変わらず表現したいことです
ーー また、今回の「航海の唄」というタイトルからは、さユりさんの1stアルバム『ミカヅキの航海』を連想しました。そこは意識してタイトルを付けたのでしょうか?

さユり 「航海の唄」の歌詞ができて改めて見たら、デビュー曲の「ミカヅキ」や『ミカヅキの航海』のタイトルに込めた気持ちを曲として表しているんじゃないかなと思って。デビューからいろんな楽曲を発表して、広がっていくものはたくさんあったけど、この曲にはそれでも変わらずに続いてきた部分がこもっているんだと思います。

ーー その「変わらずに続いてきた部分」というのは?

さユり 100%の光というよりは、後悔しながらも進んでいくところだったり、「航海の唄」の歌詞にそのままありますけど、“足りないものは足りないままで構わないよ、今から探しにいこう”という気持ちだったり。例え弱かったとしても前に進みたい気持ちは、曲ごとに表現の仕方や歌詞は違うかもしれないけど、変わらず表現したいことです。

ーー たしかに「航海の唄」と「ミカヅキ」はテーマ性が共通していますが、「ミカヅキ」は文字通り三日月を「不完全な自分」の象徴として、そんな自分でも前進したいという願いを“それでも あなたに見つけて欲しくて”という歌詞と共に描く一方で、「航海の唄」は先ほどの“信じるそれだけでいい”という歌詞にも表れているように、聴き手にメッセージを投げかけるような内容になっていて。

さユり やっぱり今回の『ヒロアカ』との出会いだったり、これまでの旅があって変わってこれた部分だと思います。特に「航海の唄」に関しては、歌詞の中に一人称の言葉が出てこないのですが、それも自分で意図してというより、この曲に合う形を探す中でそうなって。そうすることで聴く人が受ける印象が大きく変化したと思いますし、宿る力はあったと思います。

「誰かに届けたい」という気持ちはどんどん大きくなっているなと感じています
ーー 『ミカヅキの航海』というアルバム自体が、1曲目は「ミカヅキ」で始まって、最後は「birthday song」という、自分自身を肯定するような歌で締めくくられるじゃないですか。なのでさユりさん自身も、自分の表現の変化に自覚的な部分があるのではと思ったのですが。

さユり それはきっとあったんですけど、それを曲の形に落とし込むために模索する期間が結構ありました。変化はしたけど、それを自分の言葉として収めるのに1年ぐらいかかったんです。それこそ自分の個性との向き合い方とか、変わっていいものと変わりたくないもの、そのどれを持って前に進むか、ということを考えて。結果、弱い自分を肯定していきたいという気持ちは変わらなくていいと思えたけど、もしかしたらその部分もなくしたほうがいいのでは?とか、表現としてどこまで見せるかを模索していました。

ーー 個人的に「航海の唄」は、「ミカヅキ」の頃と比べると他者に向けて呼びかける方向性が強くなっているように感じていて。「ミカヅキ」は自分のために歌っている部分が強い歌じゃないですか。

さユり やっぱり「誰かに届けたい」という気持ちはどんどん大きくなっているなと感じていて。そのなかで自分の表現として、どう他者にも向けて作っていくかが、今のいちばんの課題です。

ーー そのように他者に届けることを意識して曲を書くようになったのには、何かきっかけがあったのですか?

さユり やっぱりライブはシンプルに言葉が届くので、そういう気持ちをたくさんもらいますし、作品をリリースするたびに感想のお手紙をいただいたりするのもうれしくて。しかもその感想には自分の意図しない届き方をしているものが多くて、いつも驚きや喜びをもらえるんです。そこから自分の中にあるものと世界で起こっているものの距離の取り方を広げつつ、曲に落とし込める方法を考えるようになって。そうすることで自分の中にある気持ちだけで書くよりも要素が増えるし、これからもそこを磨いていきたいと思います。

ーー 「航海の唄」には“臆せず 歩き出せ”というフレーズもありますし、『ヒロアカ』になぞらえると、きっとさユりさんも今は誰かのヒーローになっているんじゃないかなと。

さユり そうなっているとすればうれしいですね。どんなときも自分を信じて進んで行くことで、聴いてくれる方の背中を押したり、支えになれたらうれしいです。

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最終更新:2019/12/4(水) 19:01
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