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高校野球に巣食う時代遅れの「食トレ」。「とにかく食べろ」間違いだらけの現実と変化

2019/12/4(水) 11:40配信

REAL SPORTS

身体づくり、パフォーマンスに大きな影響を及ぼす食事は、選手にとって大事であることは言うまでもないだろう。だが高校野球において「食トレ」とは名ばかりの、ただ「量を食べさせる」だけという極端なノルマを課している例も少なくない。スポ根文化の「昭和」から「平成」を経て、「令和」になった今、あらためて食トレについて考えたい――。

いまだ多く残る、前時代的なノルマを課す食トレ

明治神宮大会も終わり、高校野球は12月から3月まで、「対外試合禁止期間」いわゆるオフシーズンに突入する。

オフと言っても、別に体を休めるわけではない。むしろここからの3カ月間こそが、高校球児にとっては最も厳しく、つらい時期といえる。

練習試合も含めた他校との試合が行われない冬の期間、ほとんどの高校は「トレーニング」と「身体づくり」に重きを置く。秋に新チームが結成され、秋季大会を経て各々の課題や修正点が見つかるこの時期。春の対外試合解禁に向け、個々のレベルアップが最重要課題となるのだ。

「ひと冬越えて化ける」

これまでもそんな選手、そんなチームを数多く見てきた。

そんなトレーニング、身体づくりの時期において重要視されているのがいわゆる「食トレ」だ。食事そのものをトレーニングと考え、練習メニューとセットで考えている高校は実に多い。成長期でもある高校生たちにとって、食事は日々の練習以上に大切なものになってくる。

しかし、中には「食トレ」とは名ばかりの、選手にただ「量を食べさせる」だけという前時代的なノルマを課している高校も、いまだに多い。

筆者は以前、別の媒体でも「食トレ」をテーマに原稿を書いたことがあるが、ありがたいことに多くの反響をいただいた。

同業者はもちろん、初めて取材でお会いした高校野球の指導者から「食トレの原稿読みました」と声を掛けてもらったこともある。

その際、特に反響の大きかったエピソードをあらためて紹介する。

数年前に現役を引退した元プロ野球選手から聞いた話だ。

彼は甲子園常連の名門校の出身者だったが、部活では毎日、食事量のノルマに加えて、体重が前日よりも1グラムでも落ちていたらいけないという規則があったという。それを破れば、いわゆる「罰則」的な練習を課されるため、選手たちは毎日の体重測定に戦々恐々としていたという。

ある日、一人の部員が測定前に自身の体重を計ったら、なんと前日よりも2キロも体重が落ちていた。彼は慌てて2リットルのペットボトルに水道水を流し込み、それを無理やり胃の中に流し込もうとする。しかし、途中で限界を迎えてしまい、飲んでいた水を吐き出してしまったという。

数年前の出来事だったこともあり、その選手はこのエピソードを笑いながら話してくれたが、筆者は素直に笑うことができなかった。

これは決して、スポ根文化が全盛を迎えてきた昭和の話ではない。トレーニング理論も成熟した平成後期の高校野球界で実際に起きた話だ。

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最終更新:2019/12/4(水) 18:10
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