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よりよい「生」のためには、よい「死」を――「デス・ポジティブ・ムーブメント」の広まり

2019/12/4(水) 17:00配信

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不老不死へのあこがれは、人類文明と共にあるといってよい。古代ギリシャやエジプトにはフェニックス(不死鳥)の伝説が伝わり、中国の始皇帝は不死の薬を求めた。最近ではシリコン・バレーで幾つもの死を克服するためのプロジェクトが進められ、巨額の投資を集めたことが話題になった。

一般人も同様に不老不死への執着を持っている。社会にウェルネス文化は根付き、アンチエイジングを謳う商品やサービスはあふれ、医療水準が向上したおかげで人々の寿命は延びている。

「死なない」ということは、私たちに幸せをもたらすものなのか。実はそうではない。死があってこそ、生は意味を持つのだ。「よりよい生のために、よい死を」というコンセプトである「デス・ポジティブ・ムーブメント」が世界で活発化している。特に米国や英国などでは、関連イベントやワークショップが行われている。

死を否定する社会に生きる私たち

今の社会は死を否定しているといっても過言ではないだろう。日本を含め、多くの先進国でも、昔は皆自宅で死を迎え、その死にゆく姿を周囲の人々は日々見守った。しかし20世紀後半からは違う。亡くなる場所は病院や高齢者施設が取って代わった。昨今、自宅で亡くなった人は米英では20%強、日本では13%に過ぎない。

近代医学には「延命至上主義」の面がある。医療技術や医薬品は、患者を少しでも長く生かすことを最優先に発達してきた。胃ろうや栄養点滴、人工呼吸などがその例だ。

また死について知り、理解する手助けをしていた宗教に人々は重きを置かなくなった。米国のシンクタンク、ピュー研究所が27カ国を対象に調査し、4月発表した報告書によれば、20年前と比較して、宗教が果たす役割は失われたと感じる人は米国で58%、カナダで64%。欧州でも半分の国で同様の傾向が見られた。

少しでも若々しくいたいという、人々の欲求は常在し、衰えを知らない。「〇〇したら、歳をとらない」「若さを取り戻せる」などのハウツーに人々は飛びつき、アンチエイジング商品やサービスは引く手あまただ。

若さを追うばかりの社会に生きる私たちは加齢や死に対する認識が不足している。また若さは「成功」「勝利」である一方、死は「屈辱的」「敗北」と、誤った風に捉えている。一見、技術や商品でコントロールしているかのようだが、死を避けることは不可能だ。

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最終更新:2019/12/4(水) 17:00
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