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「山にいる者として、ほっとけない」御嶽山で困った人を助け続ける、最年長の“強力”

2019/12/5(木) 11:53配信

AbemaTIMES

 長野・岐阜県境に位置する御嶽山(標高3067m)。登山ルートが整備され、日帰りもできることから、錦に染まる紅葉シーズンは登山者の人気が高い。

【映像】テレメンタリー『お山に生きる』

 5年前の9月、58人が死亡し、いまだ5人の行方が分かっていない噴火災害が起きたのも、紅葉真っ盛りの正午前だった。以降、入山規制が段階的に緩和され、シェルターが設置された去年の秋、山頂付近まで登れるようになった。夏場は多くの信者が、山頂にある御嶽神社を目指す。

 神が鎮まる山として古くから人々が信仰の対象としてきた御嶽山。参拝に訪れる信者たちを支えるのが、地形を知り尽くし、豊富な経験を持つ“山の案内人”、「強力(ごうりき)」だ。数十キロの荷物を背負い、山頂まで登る。かつては田植え後の農閑期の収入源として山麓に広まっていた仕事だが、最盛期に20人いた強力も、今は7人を数えるだけ。最年長が倉本豊(63)だ。おじの手伝いでこの道に入ったのは20歳の時。本業は大工だが、夏場は強力の仕事が増えていった。

 「山にいる者としてね。ほっとけないじゃない。いくらなんだって。要は自分のうちの庭先で困ってる人がいるんだよ」。

 この日も強力として山に入った倉本は、しきりに後ろを気にしていた。眼下に追い抜いてきた登山者が見えた。山小屋に着くとすぐに、登山道を駆け下りる。年配の登山者で、ほとんど登れていなかった。「さあさあ、行きましょう」と倉本。こうして登山者の手助けをすることも、しばしばあるという。登山者の妻は「他にも3000m級、いっぱい行ってるけど一番きついもん。全部直登だもん」「いやーお父さん助かったじゃん、行きつけなかったよ」と安堵の表情を浮かべる。

 山小屋で一息付き、「いや、ありがとうございました」と感謝する登山者に、倉本は「無事でよかったです、何よりです」と笑顔で応じた。

■御嶽信仰の山、神事の撮影を許される

 御嶽信仰が始まったのはおよそ1300年前。信者は年に一度、御嶽山に登って参拝する。全国に「講社」「教会」と呼ばれるいくつもの集団があり、信者は合わせて10万人を超える。このうち、徳島県から毎年訪れる御嶽教の信者たちは、これまで30年以上にわたって倉本に仕事を依頼してきた。

 信者の半数が、倉本に荷物を預ける。天候が崩れ始めると、荷物を濡らさないように先を急ぐ。山小屋で夕食をとり、1泊して山頂を目指す。翌朝午前4時半、9合目半にある「霊神場」と呼ばれる場所で祈祷をするのだ。行者の1人に神が降り、別の行者がお告げを聞き取る。取材カメラを向けることは決して許されない。

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最終更新:2019/12/5(木) 11:53
AbemaTIMES

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