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顔認証は「おもてなし」に進化をもたらすのか? - 老舗旅館が挑むIoT活用

2019/12/6(金) 12:11配信

マイナビニュース

老舗の日本旅館で顔認証活用の実験がスタート

日本最古の湯ともいわれる道後温泉(愛媛県)。慶応四年創業という老舗旅館「大和屋本店」が12月5日、顔認証を用いたチェックイン/チェックアウトや客室の開錠を可能とする「おもてなしマスター・スマートドア」の実験を開始した。

【動画】 「おもてなしマスター・スマートドア」を活用した顔認証チェックインのデモの様子

この実証実験は、大和屋本店を舞台に、宿泊業に関するシステム開発を担当する「デジタルピア」、「Akerun入退室管理システム」を中心とするスマート入退室ソリューションを手掛ける「フォトシンス」、おもてなしマスター・スマートドアのデザインと制作を担当する「日本フネン」の4社が協力して進めようというもの。

活用される「おもてなしマスター・スマートドア」は、デジタルピアが提供する旅館ホテル業向け業務ソフト「おもてなしマスター」と、Akerun入退室管理システム、そしてNECが提供する顔認証システムを組み合わせる形のソリューションとなっており、大和屋本店の宿泊者は、チェックインカウンターで顔情報の登録を行い、そのデータに基づいて、客室の入り口に設置されたカメラを使って、キーレスで入室を可能とするほか、チェックアウトも顔認証により、スムーズに進めることを可能とした。

大和屋本店 代表取締役社長の奥村敏仁氏は、今回の取組について、「日本旅館に来る人は、旅館が提供するおもてなしを求めてくる。それを最重要項目としたうえで、通路上ですぐにカメラと認識できないように工夫してもらった」として、あくまで今回の実験が、大和屋として提供するおもてなしの一環となりうるかどうかを見極めるためのものであることを強調する。実際に、「アンケートの回答結果などで、伝統を大切にしてきた大和屋として考えるおもてなしにふさわしくない、となることもある」と実験終了後に、そのまま速やかに通常サービスとして提供するということは考えていないとする。

その一方で、「旅館側としては、カギ管理の負担は意外と高く、紛失や盗難となれば、その対応も必要となる。大和屋本店は、12時チェックアウト、14時チェックインと、その間が2時間しかない。その2時間で、ほかの作業をしながら、そうしたカギがきっちりと揃っているかを把握しておく必要がある。これがデジタル化され、物理的なカギが不要になれば、そうした管理負担やコストを削減でき、浮いた時間を宿泊者の別のおもてなしに向けることができるようになる」と、旅館側としてのメリットも説明。ひいては、それが宿泊者の満足度の向上につながることに対する期待も語った。

顔認証が旅館業のおもてなしを進化させる?

今回の取り組みはあくまで実験的なもので、大和屋本店も専用の宿泊プランを用意している。値段は1万3500円/人(税別。時期や宿泊人数で変化)~と、ほかの宿泊プランと比べても割安となっているが、その代わりに実験に関するアンケートへの回答などを行う必要がある。


実験の期間は2019年12月5日~2020年2月27日を予定。その後は、「実験がうまくいったとしても、相当クリアしないといけない問題が多くあると考えているし、製品(認証システム、客室のドアなど)についても、今回、日本フネンがすばらしいものを作ってくれたが、最終形ということもないと思うので、そうした部分での改善なども行っていく必要がある。必要があれば2回目の実験も考える」と、あくまで大和屋としてのおもてなしを踏まえて、その必要性を考えていくとする。


ただし、顔認証という仕組みが広く受け入れられるようであれば、「あくまで可能性としてだが、道後温泉全体や、組合などが賛同してくれれば、顔認証による温泉街全体での決済なども考えられる。我々として、それを商売にするつもりはないが、実際にやるとなれば、相応の枠組み作りが必要。2020年には東京五輪などが開催されたり、保険証への顔写真の付与の検討も進められていると聞いている。そういう社会の流れの中で、顔認証に対するストレスがなくなるということであれば、もしかすれば早い段階で導入される可能性もある」と、地域の活性化にもつなげたいとする。

「旅館としても、誰かが進めなければ、こうした取り組みは進まない話。そういった意味では、今回の話をいただいたのは、良い機会だと思って、実験の実施を引き受けた」と奥村氏は、積極的に、よりよいおもてなしの実現を目指す姿勢を見せる。実際に、町の人からも、大和屋は積極的にさまざまな挑戦を行い、道後温泉を盛り上げようとしている、といった声も聞かれるなど、地域として、大和屋が進める取り組みに賛同する向きがあることも感じられた。また、2019年12月時点で、中国、韓国、台湾から近くの松山空港に直行便が訪れるなど、訪日観光客がおもてなしを求めて道後温泉を訪れる機会も増えている。

今回の実験は、そうした観光客に、デジタル技術を活用して、よりよいおもてなしをいかに提供するかの第一歩と言えるだろう。

なお、当該の宿泊プラン「顔認証システム『おもてなしマスター・スマートドア』お試し宿泊プラン」の期間は2019年12月5日~2020年2月27日までを予定。1日1部屋のみの提供で、1部屋5名まで登録可能。ちなみに、今回は実験ということで、チェックアウト後はデータを消去されるという。

小林行雄

最終更新:2019/12/6(金) 12:11
マイナビニュース

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