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北朝鮮ファーストの文大統領を嘲笑する金委員長

2019/12/6(金) 12:42配信

ニュースソクラ

【ソウル発】南北融和は総選挙にプラスなのか

 「わずか2年前の2017年だけを見ても、韓半島(朝鮮半島)は少し間違えば戦争が起きてもおなしくないほどの危険地帯だった」「今は戦争の危険はなくなり、対話局面に入った。南北関係は、私がとてもやりがいを感じている分野だ」

 任期の折り返しを迎えた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、この11月19日に生中継された「国民との対話」の席で、最高の業績として南北関係改善を挙げた。

 文政権は、2年半間の任期前半、他のいかなる懸案よりも南北関係改善に力を注いできた。最大野党の自由韓国党のシンクタンクである「汝矣島(ヨイド)研究院」の調査によると、文大統領に関するニュースの約43%が北朝鮮関連のニュースだった。

 ニュースのタイトルをキーワード別に分ける方式で行われたこの調査で、最も多く使われたキーワードは、1位が「首脳会談」、2位が「平壌(ピョンヤン)」、3位が「金正恩(キム・ジョンウン)」、4位が「南北」、5位が「経済」だった。

 大統領就任2ヵ月後の2017年7月、ドイツ・ハンブルクで開かれたG20会合で国際舞台に本格デビューを果たした文大統領は、G20の異名が「世界経済会議」なのにもかかわらず、北朝鮮問題に没頭する姿を見せた。

 文大統領は、ドイツに到着するやいなや、メルケル首相との首脳会談で「G20首脳会議は経済問題を議論する会議であり、すでにテーマも決まっていることはわかっている。しかし、北朝鮮のミサイルの深刻性を考慮して加盟国の共同決議を作るため議長国として関心を見せてくれないか」と要請した。その後も各国の首脳と会うたびに、北朝鮮問題を第1議題とすることを呼びかけた。

 それから2年半の間、文大統領の「北朝鮮ファースト」というスタンスは変わらなかった。時と場所を問わず北朝鮮問題を真っ先に取り上げてきた。世界各国の首脳との会談を報じる記事では、「文大統領、南北関係改善に対する国際社会の協力を要請」という決まり文句が常にヘッドラインに選ばれた。韓国国内の各種行事や会議の席でも、常に「韓半島平和」と「南北交流」を強調した。

 特に日本の対韓輸出規制の強化が始まった直後の今年8月15日の光復節(独立記念日)祝辞で取り上げた「平和経済論」は記憶に新しい。「日本の経済報復による危機を南北経済協力で克服すべきだ」というこの提案は、韓国の多くの経済専門家から「現実認識不足の提案」とひんしゅくを買った。

 北朝鮮は「北朝鮮ファースト」を守ってきた文政権に冷たい。文政権に入ってから今年の11月28日までに計25回、ミサイルを発射したが、そのうち13発は2019年に集中した。文大統領を直接狙って「おせっかいな仲裁者」「おびえた犬」「茹でた牛頭」などの露骨な批判を浴びせた。

 さらには、文大統領が金正恩朝鮮労働党委員長を釜山(プサン)の韓・ASEAN首脳会議に招待するために密かに送った親書を暴露し、韓国国民を怒らせた。

 11月25日には度重なる挑発にもあえて自制している文政権をあざ笑うかのように、金正恩委員長が直接海岸砲の射撃を指示する写真を公開した。

 韓国国防部によると、金委員長が参観した海岸砲射撃は11月23日に行われた。ところが、この日は北朝鮮の砲撃で韓国人4人が死亡した「延坪島射撃事件」の9周忌にあたる日だ。2010年11月23日、北朝鮮は当日午前にあった韓国軍の定例訓練を問題視して、宣戦布告なしに西海岸の延坪島の民間人居住地域に向かって170発あまりの砲弾を浴びせた。

 これに韓国軍が射撃を開始し、局地戦となった。韓国側は軍人2人、民間人2人が死亡し、19人が負傷を負った。韓国国防部によると、北朝鮮も10人死亡、20人負傷の被害を被ったという。

 金委員長は、その日の悲劇を想起させるかのように、海岸砲射撃を指揮し、25日の朝鮮中央TVを通じて写真を公開した。すると、26日、韓国国防部はあたふたと、この事実を公開し、抗議文を送ったと発表した。隠ぺいとする声もあったが、「(隠ぺいではなく)発表するタイミングを計っていた」と開き直った。

 鄭京斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官は国会で北朝鮮の挑発に対する質問を受けると、「耐えて、また耐える」という突拍子もない返事をした。

 度重なる北朝鮮の嘲弄にも、自国の国民に向けて詭弁に近い釈明を並べながら北朝鮮の庇護に一貫する文政権の対北朝鮮政策は、少なくとも当分の間は続くものと見られる。国防部長官の言葉のように「耐えてまた耐えて」でも金正恩委員長の訪韓を引き出すことさえできれば、来年4月の総選挙で絶対的に有利になるという計算が、文政権にはあるはずだからだ。

朴英南 (ジャーナリスト 在ソウル)

最終更新:2019/12/6(金) 12:42
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