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GDP予想を、どのように株式投資の判断に利用すればよいのか

2019/12/7(土) 7:05配信

ITmedia ビジネスオンライン

 株価指数の行方について考えるとき、経済予想との関係についても知っておきたい。市場を経済全体で語るのであれば、GDPと株価指数はどのように関係しているのか、ざっと理解しておく必要がある。

名目GDPと一株利益の成長率推移

 株価指数の利益成長予想は、ボトムアップ(銘柄別の予想を積み上げ)もできるが、現実には日本の全銘柄のアナリスト予想があるわけではない。上場株式数が3000程度ある中で、十分な数のアナリスト予想が利用できる銘柄は、時価総額が大きい300銘柄程度にすぎない。

 一方でGDP成長率は、マクロ経済すべてを把握できるものの、企業活動部分だけではなく、消費や財政出動(政府支出)も含まれていることに注意が必要だ。GDP成長率は企業収益の成長率ではない。しかも通常はGDP成長率の予想を需要面から行うので、供給面に置き換えていく必要がある。

具体的にどのように企業収益を想定するのか

 GDP成長率をどのように企業収益の成長率に変換すればよいのか。よく使われるGDP成長率は実質ベースであるが、企業収益は名目ベース(物価が上昇すれば収益はその分増えるはず)なので、名目GDP成長率を見てみよう。ただし、日本のようにデフレで物価やGDPデフレーターが企業収益の成長とかい離しているように見える場合、実質成長率をより確かと考え、長期的に物価上昇率を0%と想定しておくなどして対応することも考えられる。ここでは物価を無視して、名目と実質が同じであるとしておこう。

 さてGDP成長率は、エコノミストなどにより需要面から予想される。つまり、経済を個人消費、政府支出、設備投資(総固定資本形成)、純輸出などに分けて予想し、全体の成長率が予想される。それゆえ、企業活動の成果である収益の成長率はわからないことが多い。GDPの需要面の裏には供給面があり、需要面の予想と整合的な、主に雇用者報酬と営業余剰の成長からなる供給面の成長率予想が必要となる。営業余剰とは、簡単にいえば日本企業全体の営業収益の和だと考えられる。逆に言えば、GDP成長率から雇用者報酬の成長部分を取り除くと、企業の営業収益の成長率予想がみえてくる。以下では、固定資本減耗と生産・輸入品に課される税を成長要因から除き、賃金と営業収益の成長率に注目する。

 例えば、名目GDP成長率が1%で、賃金上昇率が0.1%と想定できるとしよう。仮にGDPに占める営業余剰の比率が30%とすれば、1%の成長のうち、70%は賃金上昇率の0.1%の貢献(0.07%)となる。残りの30%で0.93%の成長を支えるとすれば、営業余剰の成長率は、3.1%必要になる。

 このようにGDP成長率の予想は、賃金上昇率の想定を通じて企業収益の想定をもたらす。一般に企業収益の成長率は、GDP成長率よりかなり高くなる。もちろん、雇用者報酬に比べて成長率が高い分、ブレは大きくなる。GDPを単純化すると、“結果として”企業収益と賃金に分配される。“結果として”とは、賃金は労働市場で決まり、収益は売り上げからもたらされる、という点を、恣意的な分配と混同しないように、という意味だ。

 このように、営業収益の成長率を日本企業全体(GDP)の観点で把握した後、TOPIXあるいは上場企業のみに転換(大企業・製造業の比率が高まる)し、さらに営業収益を純利益(EPS)に転換(平均的な利益率などを利用)して、EPSの予想成長率を設定する。最後に、銘柄別のボトムアップで計算した予想成長率と比較して蓋然性を確かめる。

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最終更新:2019/12/7(土) 7:05
ITmedia ビジネスオンライン

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