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撮ったぞ大正時代エネルギッシュ!…現役活動写真弁士が、映画『カツベン!』の周防監督に独占インタビュー

2019/12/7(土) 12:00配信

まいどなニュース

『Shall We ダンス?』をはじめ数々の名作映画を世に送り出し、このたび5年ぶりの新作として、活動写真弁士をテーマにした映画『カツベン!』(12月13日全国ロードショー)でメガホンをとった映画監督の周防正行さん。(聞き手/活動写真弁士・大森くみこ)

【写真】周防監督のインタビュアーを務めた活動写真弁士・大森くみこ

大森くみこ(以下、大森) 周防監督、神戸にようこそ! 神戸の街はいかがでしょうか。

周防正行(以下、周防) 横浜となんとなく(似ている)。港町だし、外国の文化も入ってきていたし、神戸は神港倶楽部というところで、明治29年、1896年、キネトスコープの上映があった街ですもんね!

大森 そうです! 映画の街ということで、その地に来ていただきとってもうれしいなと思っています。さて、12月13日に『カツベン!』が公開となりますが、活動写真弁士が主人公ということで、どんなお話になっているか、簡単に教えていただけますか。

周防 当時、サイレント映画で、映画に音がなかった時代、日本ではスクリーンの横に人が立って、映画を説明しながら見せていました。活動弁士という職業があったんです。その活動写真を見ていて、活動弁士に憧れた少年(俊太郎=成田凌)が、どうやって活動弁士になっていくか、そういう青春群像劇です。そのなかには、当時、まだ日本で活動写真が撮られ始めたころは、女優さんではなく、歌舞伎の流れかと思いますが、女の人の役は女形と言われていて、男の人が演じていた。俊太郎という(主役の)青年とは違って、女優になりたいと思っている女の子が映画のヒロイン(黒島結菜)。その2人の青春群像劇というのが、この映画のあらすじ。恋あり、笑いあり、活劇あり、盛りだくさんの、昔の活動写真のような構成になっています。

なぜ活弁の映画を撮ろうと?

大森 そもそも、なぜ活弁の映画を撮ろうと思われたのですか

周防 もともとはずっと僕の映画で助監督をしてくれている片島章三さんという人が、彼の話でいうと20年来の企画だったらしくて。数年前に彼から映画のシナリオを書いたので読んでみてくれないかということで、見せてくれたのが、『カツベン!』という映画のシナリオ。それを読んだとき、面白いと。本当に素直にね、観客として、「これ面白いよ、絶対に映画にしたほうがいいよ」と話をしたら、それを聞いてたプロデューサーが、「だったら監督、映画を撮りませんか」と言ってくれたんです。だから、「えっ、撮らせてもらえるのなら、撮りたい」ということで始まったのです。そのシナリオを読んで面白いと思ったことはたくさんあるのですが、振り返ってこういう場所でいうべきことは、活動弁士という、映画のスクリーンの横に人間が立って内容を説明しながら見せるというこのやり方、上映方式が、日本独特のもので、アメリカでもヨーロッパでもそういう映画の見せ方をしていなかったことが大きいということ。そこに、なんで日本だけこういう見せ方が定着したのかというところに、日本文化の秘密というのがあるような気がしましたし、この映画全体が昔、活動写真が持っていたエネルギーに満ち溢れている、そういうシナリオだったんです。それを再現してみたい、表現してみたいというのが、強くありました。

大森 私も試写で拝見させていただきました。当時のエネルギッシュな感じが画面からあふれてくるような気がして、本当に楽しかったです! そのなかで、当時の雰囲気が実に細かいところまで再現されていてびっくりしました。私は大正時代にタイムトリップするのがひとつの夢なのですが、まるで夢が叶ったみたいな感じがして、素晴らしいと思いました。再現するにあたってのこだわりや、大変だったところはありましたか。

周防 まず、活弁のシーンが、本当に当時の人が楽しんでいたであろう、そういうリアリティにあふれているようにしなければいけなかった。「おっ、すごいな」、「このしゃべりとか、これだったら楽しいよね」と。とにかく、活動弁士のしゃべりには一番こだわったところです。これは成田さんに本当に一生懸命稽古していただきました。(活動写真弁士として活躍中の)坂本頼光さんにぴったりついてもらって、クランクイン2か月前からやってもらったんです。役者以外のところでいうと、大正時代の景色、情景をとるのが一番大変でした。要するに、今の街のなかで再現するわけですから。たとえば、シナリオに「街を走り抜ける自動車」と書いてあったら、そういう絵を取らなければいけないのですが、まずは(現代は)道路がアスファルトですし、地べたの、土の地面の街なんて、どこにもない。だから、映画館の街なみは、京都の太秦・東映の撮影所で、オープンセットで、映画館の表側だけを作って撮りました。中は、実際に(情景が)ある場所を探したのですが、福島県に移築されていた、明治時代に建てられた芝居小屋というのがあったんです。外側は整備されているので(撮影として)使えないが、中だけなら使えるので。そこは明治時代にできて、後に映画館にかわった劇場。そのリアリティのところですよね、柱とかそういうものが醸し出す空気感とかでできました。ただ、追っかけのシーンとか、オープン(野外撮影)がいっぱいあるんですよ。日本全国、「ここだったら大正時代を撮れます」という場所を探すのは大変でした。

美術部が本当に苦労した

大森 そうだったんですね。あと、細かい映写のシーンなど、いろんな本で読んでいたものが、(当時の様子が)目の前で再現されていて、「わあ、すごい!」と、すごく感動しました。

周防 映写機を探すところでも、要するに手回しの映写機、手回しのですよ! まだ(当時は)モーターがないので、人間が手で一定のスピードで回す。これは撮影用のカメラもそうだったんです。カメラマンの特殊技能として、一定の速度でフィルムを回せるかどうかというような、回す練習をしていたらしいですから、当時のカメラマンは。そういうところを実際の映像で見せたくて、そこは美術部が本当に苦労して映写機を探し、なんとか撮影に使えたということです。

大森 (映画のなかでは)細かいところが本当にツボで、感激しながら拝見させていただきました! あと弁士役をされた主演の成田凌さんですが、主演抜擢の決め手は?

周防 たくさんの若い俳優さんに会って、それで成田さんにしたのですが、好きになれるかどうかは個人の趣味の問題で、成田さんは好きなタイプの若者という範疇、それは大きかったです。ただ、いい意味で裏切られたのは、(主演に)決めたときには、クールな二枚目方面の若者だろうと、勝手に思いこんでいたんですが、実は三枚目的な要素がいっぱいあって、そのキャラクターが坂本頼光さんの活弁のイメージとぴったり合った。やんちゃで(笑)。

大森 (笑)。頼光さんも『ザ・芸人さん』という感じですよね!

周防 半分お笑いに足を突っ込んでいる人ですからね。そういうやんちゃなことを表現できる元々の性質が成田さんにあったのはすごいラッキーでした。そのわりにお茶目でかわいい感じなんです。

大森 コメディっぽいシーンとかすごくハマってらっしゃいました。

周防 あの憎めない感じが成田さんはよかったですね。

大森 あと、弁士役として、高良健吾さん、永瀬正敏さんも出ていますが、弁士のモデルはありましたか。

周防 ありました。劇中でも徳川夢声さんの話が出るのですが、永瀬さんの母体になるのは徳川夢声さん。飲んだくれているとか、普通の弁士と違って、歌い上げるというよりはボソッというところとか。ただ、ほかの人は特定の個人というのはあまりないです。当時のいろんな弁士さんのプロフィールとかを見て、〇〇タイプというのは、(いろんな弁士さんの)いいところどりをしたというか。大雑把にいうと、高良さんはいわゆるこてこてのオーソドックスな活動弁士をイメージしました。成田さんはさっき言ったように、どっちかというとやんちゃな感じというか、ウケるためになんでもやるみたいなタイプにしました。

弁士のしゃべりを楽しむという文化が生まれる

大森 それぞれすごく個性があるなと思いました。私は現代で弁士をやっているので、現代弁士に何かもし思われることがありましたら教えてください。

周防 僕がシナリオを読んだあとにすぐ、いろんな活動弁士さんの上映会に行ったのですが、明らかに当時と違うと思ったのは、歴史。活動弁士の歴史ではなく、映画の歴史です。当時の活動弁士の皆さんは、映画の未来について、それほど具体的なイメージはなかった。今、目の前にある動く写真、それは自分の語りの素材であるというのがたぶん強かったと思います。ただ、今、弁士をやるということは、映画が100年以上の歴史のなかで、ひとつの芸術作品として確立して、尊重しなければいけないことが絶対にあるはず。要するに、一本の作品が持っているテーマや味わいというのを、弁士の言葉によって壊してはいけないという思いがたぶん強くある。本当に今の弁士は控え目というか、謙虚なしゃべりだなという印象がありました。たぶん、大正時代に行ったら、もっとめちゃくちゃにやっただろうなと。この作品は「この監督のものではなく、自分のものだ」と。自分のしゃべりの素材だからと、好き勝手にいろんなことが言えた。現代の弁士さんは、そういう意味で、映画の価値がある程度確立されたところでしゃべるから、ものすごく大変だろうと思います。むしろ、大正時代に行ったら、今、ご自分が語っている語りとまったく違う、もっと自由奔放なめちゃくちゃな語りができたはずだと思います。

大森 あの映画を見て、私ももうちょっと個性的に行きたいなと思いました。

周防 ある程度やってもいいのかなという気がするんです。活動弁士がどういう存在か認知されれば、それぞれの弁士のしゃべりを楽しむという文化が生まれると思うんです。今、見に行っているほうも、活動弁士付き上映会で映画を見に行っている。当時の観客は映画を見に行っていたわけではなく、半分、弁士の語りを聞きに行っていたんです。映像文化だったにもかかわらず、日本の観客は語りとして映画をとらえていた部分がものすごく大きかった。そういうものだったんだという認識が今の観客にあったら、映画は映画として、弁士付き上映として楽しめると思うんです。そういう意味では、弁士が変わるというより、まず、受け止める側の観客が、きちんと映画的な経緯を、映画史をちょっと分かってくれれば、もっともっと今の活動弁士さんは自由に、「こんな見方もできます」という形のしゃべりもできるんじゃないかなと思います。

大森 そのためにも、多くの方に、この映画『カツベン!』を見ていただきたいと思います。最後に監督からリスナーの方にメッセージをお願いします。

周防 この映画は活動弁士について、活動弁士というのは何か、活弁の楽しさというのはもちろんわかる映画ですが、実は映画全体が昔の活動写真のテイストに満ち溢れたものにしようと思いました。笑いにしても、ドラマの展開にしても、アクションシーンの撮り方にしても、昔の活動写真を意識して作ったので、楽しい映画だといったとき、皆さんの楽しいと、少し次元の違う面白さがあるので、ぜひそこを楽しんでもらいたいなと思います。

映画『カツベン!』(2019年12月13日全国ロードショー)
監督:周防正行
出演:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊
脚本・監督補:片島章三
製作:「カツベン!」製作委員会
企画・製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
配給:東映

(まいどなニュース/ラジオ関西)

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最終更新:2019/12/7(土) 12:13
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